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新説、斎藤一

◯その四

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 現れた相手を見て驚いた。四人も居る。襷掛けに鉢巻きの決闘支度なのは一人だが、山口と篠田は警戒する。

「山辺小四郎、人数が多いようだが?」
 篠田が問いかける。山辺は、澄まして答えた。
「おぬしと違って、友が多いからな」
 山辺は、偉そうに言う。元々、女に無理矢理乱暴するようなヤツだから、性悪に違いない。旗本の誇りを当てにしたが、そんな物は関係なく、卑怯な手を使ってくるかも知れない。山口と篠田は、最悪な場面を想定する。つまり、戦いが四対二になる事だった。素手での格闘以上に、真剣での勝負で数の不利は深刻だった。
「山辺小四郎、妹を辱めた報いを受けさせるぞ。いざ、尋常に勝負しろ!」
 篠田が進み出て、宣言する。すると、山辺も応じた。
「お前の妹は、旗本様に抱かれて喜んでいたぞ。言いがかりも甚だしい。返り討ちにしてくれるぞ!」
 お互いの立場を尊重していれば、決闘などと言う事態にはならない訳で、それぞれの言い分が噛み合わないのは織り込み済みだった。双方とも刀を抜き、構えた。

 篠田は、青眼に構え、山辺は上段に構えた。真剣では、間合いに入れば一瞬で勝負はつく。ただ、必殺の間合いに入る手段が重要だった。隙を作るには、万全の状態を崩す必要がある。だから、横に移動したり、少し遠い間合いから刀を打ち合わせたりする。

 篠田が走り、山辺も走る。川の浅瀬を移動する山辺が、足を取られた。篠田が斬り込み、刀同士がぶつかる。その時、山辺が叫んだ。
「篠田、卑怯だぞ!」
 山辺の声に呼応して、介添の三人が刀を抜く。おそらく、山辺の発した言葉は、助太刀の合図だったのだろう。
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