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出逢い編
爽やかなピロートークはできる男のたしなみだぞ!
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少しばかり眠っていた。目を開けると、腕枕をした俺の二の腕におっさんの顔がある。
確かに年齢はおっさんだが、驚くべきことにただのおっさんではない。
・・・・・・ただのおっさんじゃないよね?(俺の目が潰れているのか?)
だが近くで見たエンジェルフェイスは一段と清らかで愛らしい。よく綺麗な肌を陶器のようだと表現するが、そう言っても過言ではない美しさだ。
髭は生えてこないらしかった。
時間が経っても頬っぺたはつるつる。神様が天使の顔には必要ないと、毛穴の類いを付与しなかったのかもしれない。
俺は春太郎の髪に触れた。
乾かさずに寝てしまったせいで髪の毛はひどいあり様だった。こっちはまるで鳥の巣を頭に乗っけてるみたいだ。
どちらかと言えば癖っ毛で、思ってたよりもずっと柔らかい。これは勿体ない。手入れをしてやれば、顔に見合う外国人風のふわくるヘアになりそうに思うのに。
これで三十九歳とか信じられるか? 俺とは十二歳離れて、同じ干支。同じ干支だぞ!!!?(大切なので二回言いました)
「んん・・・・・・」
ハッとする。いけない。ひとりごとでハッスルしてしまった。
ぱちりと春太郎が目を開け、ごしごしと目元を擦る。新たな発見だ。天使にはメヤニの類いも出ないらしいぞ。
それならば身体が汚れない能力もつけてくれたらよかったのに、神様もそこまでは太っ腹じゃなかったんだな。
「おはようございます、身体は平気ですか?」
俺は春太郎の頭を撫でた。
「・・・・・・ん、はい」
一回りも上のくせに、寝起き姿は幼い。
「あなたはよくこうやって男と寝てるんですか?」
前髪をかきあげてやりながら訊ねると、春太郎は頬を染めた。
「久しぶり・・・・・・だった」
「久しぶりぃ?」
———久しぶりだと?
俺は眉を吊り上げる。どぎつい感じ方をして気を失っていたこいつが、『久しぶり』というセックスの頻度で満足するのだろうか。
すると春太郎が何やら口ごもる。
「ん? なんです?」
「・・・・・・こ、これからも・・・・・・たまに抱いてほしい」
あー、ほらやっぱりな。春太郎を見つめるとサッと目を逸らされた。
「ぼ、ぼく、ぼくの家を使って・・・・・・もらっていい・・・・・・から」
春太郎は首筋までを真っ赤にして背中を向ける。じわっと朱に染まったうなじが色っぽくて、誘っているようにしか見えない。
これはきっと、無意識にやってるんだろう。
「ふぅん、つまりセフレね。別にいいですけど」
俺は春太郎を抱き起こしてうなじに唇を寄せる。
くすぐったそうに身をよじる春太郎を押さえつけ、馬鹿にしながらも何度もキスを落とし、「お風呂入って、もっかいやろ」と熱っぽく囁いたのだった。
* * *
回想はここまでだ。
冒頭に戻る。
風呂上がりの春太郎の髪を乾かしてやり、テーブル上の求人情報紙に目を止めた。
「なに、おっさんまたバイト増やすの?」
首を傾げ、俺は乱雑に重ねられた一枚をつまみ上げる。
「ち、ちがうよ。この前の短期のバイトが終わってしまって」
「短期の? ああ、あれか、風俗店の新店舗設営準備のやつか」
こう見えて春太郎は金がないのではない。
幼いころに親が借金まみれで、怖い取り立てに追われて過ごしたトラウマが原因。そんで貯金額が一定額を下回ると禁断症状が出るらしい。やべぇな。
だから生活費光熱費を極限までケチり、一人だと電気もつけず、限界まで風呂も入らない。
食事も酷いものだ。
割引されたスーパーのお弁当を三日に分けて食べている。何を食べても腹を壊さない鉄壁の胃腸は羨ましい限りだが、世渡り上手の野良猫の方が良いものを食べてるんじゃないか?
「ったく、こんなんでよくバイト受かるよね」
よれすぎたパジャマからツンと透けた乳首を摘む。
「アッ、あん。む、むかしからの知り合いが・・・・・・よく、紹介してくれる・・・・・・」
そいつとも寝たのかもしれないなと、俺はなんとなく察し目をすがめた。
変態ゲテモノ好きとか(今や俺もだけど)、素顔が綺麗なのを知ってれば、手を出すやつはゴロゴロいるだろう。
だけど社会人の常識として清潔感は大事だと思う。防げる臭いを撒き散らすのは公害だぞ。
俺はそれを口にする。
「それでも毎日、せめて二日に一回は身体を洗えよ。汚いのはおっさんだけの問題じゃない、周りが迷惑をこうむるんだ!」
厳しく叱ってやったのに、春太郎ははにかんで、頬を赤く染める。
「毎日、きみが洗ってくれたら・・・・・・」
最後は消え失せ、小さくて聞き取れなかった。
だがしかし、ハウエバー・・・・・・『毎日』と『きみ』って言われたのは聞こえてしまった。
「いやいや」
俺は無理、無理と断る。てかそれ同棲じゃん。俺は、同棲というものは将来を約束した相手とすると決めている。異性づきあいは多くても、じつは硬派な男なのだ。
「そ、そうだよね」
即答すると、春太郎はシュンとした顔をした。
———トゥンク
ん? またもや、なんだ今の音は。
悲しそうな春太郎を見て、俺の胸が切なく痛んだ。
ありえないでしょ、・・・・・・ありえるの?
俺と春太郎の二人に、この先のステージがあるのだろうか。あったとしたら、俺はどうすればいいんだろう。
ド変態ドMおっさん春太郎と、スペシャルエリート俺の物語は始まったばかりだ———。
「続く・・・・・・のか?」
【とりあえずEND、しませんでした】
つづく。
確かに年齢はおっさんだが、驚くべきことにただのおっさんではない。
・・・・・・ただのおっさんじゃないよね?(俺の目が潰れているのか?)
だが近くで見たエンジェルフェイスは一段と清らかで愛らしい。よく綺麗な肌を陶器のようだと表現するが、そう言っても過言ではない美しさだ。
髭は生えてこないらしかった。
時間が経っても頬っぺたはつるつる。神様が天使の顔には必要ないと、毛穴の類いを付与しなかったのかもしれない。
俺は春太郎の髪に触れた。
乾かさずに寝てしまったせいで髪の毛はひどいあり様だった。こっちはまるで鳥の巣を頭に乗っけてるみたいだ。
どちらかと言えば癖っ毛で、思ってたよりもずっと柔らかい。これは勿体ない。手入れをしてやれば、顔に見合う外国人風のふわくるヘアになりそうに思うのに。
これで三十九歳とか信じられるか? 俺とは十二歳離れて、同じ干支。同じ干支だぞ!!!?(大切なので二回言いました)
「んん・・・・・・」
ハッとする。いけない。ひとりごとでハッスルしてしまった。
ぱちりと春太郎が目を開け、ごしごしと目元を擦る。新たな発見だ。天使にはメヤニの類いも出ないらしいぞ。
それならば身体が汚れない能力もつけてくれたらよかったのに、神様もそこまでは太っ腹じゃなかったんだな。
「おはようございます、身体は平気ですか?」
俺は春太郎の頭を撫でた。
「・・・・・・ん、はい」
一回りも上のくせに、寝起き姿は幼い。
「あなたはよくこうやって男と寝てるんですか?」
前髪をかきあげてやりながら訊ねると、春太郎は頬を染めた。
「久しぶり・・・・・・だった」
「久しぶりぃ?」
———久しぶりだと?
俺は眉を吊り上げる。どぎつい感じ方をして気を失っていたこいつが、『久しぶり』というセックスの頻度で満足するのだろうか。
すると春太郎が何やら口ごもる。
「ん? なんです?」
「・・・・・・こ、これからも・・・・・・たまに抱いてほしい」
あー、ほらやっぱりな。春太郎を見つめるとサッと目を逸らされた。
「ぼ、ぼく、ぼくの家を使って・・・・・・もらっていい・・・・・・から」
春太郎は首筋までを真っ赤にして背中を向ける。じわっと朱に染まったうなじが色っぽくて、誘っているようにしか見えない。
これはきっと、無意識にやってるんだろう。
「ふぅん、つまりセフレね。別にいいですけど」
俺は春太郎を抱き起こしてうなじに唇を寄せる。
くすぐったそうに身をよじる春太郎を押さえつけ、馬鹿にしながらも何度もキスを落とし、「お風呂入って、もっかいやろ」と熱っぽく囁いたのだった。
* * *
回想はここまでだ。
冒頭に戻る。
風呂上がりの春太郎の髪を乾かしてやり、テーブル上の求人情報紙に目を止めた。
「なに、おっさんまたバイト増やすの?」
首を傾げ、俺は乱雑に重ねられた一枚をつまみ上げる。
「ち、ちがうよ。この前の短期のバイトが終わってしまって」
「短期の? ああ、あれか、風俗店の新店舗設営準備のやつか」
こう見えて春太郎は金がないのではない。
幼いころに親が借金まみれで、怖い取り立てに追われて過ごしたトラウマが原因。そんで貯金額が一定額を下回ると禁断症状が出るらしい。やべぇな。
だから生活費光熱費を極限までケチり、一人だと電気もつけず、限界まで風呂も入らない。
食事も酷いものだ。
割引されたスーパーのお弁当を三日に分けて食べている。何を食べても腹を壊さない鉄壁の胃腸は羨ましい限りだが、世渡り上手の野良猫の方が良いものを食べてるんじゃないか?
「ったく、こんなんでよくバイト受かるよね」
よれすぎたパジャマからツンと透けた乳首を摘む。
「アッ、あん。む、むかしからの知り合いが・・・・・・よく、紹介してくれる・・・・・・」
そいつとも寝たのかもしれないなと、俺はなんとなく察し目をすがめた。
変態ゲテモノ好きとか(今や俺もだけど)、素顔が綺麗なのを知ってれば、手を出すやつはゴロゴロいるだろう。
だけど社会人の常識として清潔感は大事だと思う。防げる臭いを撒き散らすのは公害だぞ。
俺はそれを口にする。
「それでも毎日、せめて二日に一回は身体を洗えよ。汚いのはおっさんだけの問題じゃない、周りが迷惑をこうむるんだ!」
厳しく叱ってやったのに、春太郎ははにかんで、頬を赤く染める。
「毎日、きみが洗ってくれたら・・・・・・」
最後は消え失せ、小さくて聞き取れなかった。
だがしかし、ハウエバー・・・・・・『毎日』と『きみ』って言われたのは聞こえてしまった。
「いやいや」
俺は無理、無理と断る。てかそれ同棲じゃん。俺は、同棲というものは将来を約束した相手とすると決めている。異性づきあいは多くても、じつは硬派な男なのだ。
「そ、そうだよね」
即答すると、春太郎はシュンとした顔をした。
———トゥンク
ん? またもや、なんだ今の音は。
悲しそうな春太郎を見て、俺の胸が切なく痛んだ。
ありえないでしょ、・・・・・・ありえるの?
俺と春太郎の二人に、この先のステージがあるのだろうか。あったとしたら、俺はどうすればいいんだろう。
ド変態ドMおっさん春太郎と、スペシャルエリート俺の物語は始まったばかりだ———。
「続く・・・・・・のか?」
【とりあえずEND、しませんでした】
つづく。
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