ラブドール

倉藤

文字の大きさ
上 下
55 / 102
ロイシア国の公爵《プリンス》のこと

55 公爵のために

しおりを挟む
 それから少しして譲はDP54ことドムのつぶらな瞳に負けた。
 イザークの口車に乗せられたんじゃない。ドムに負けたのだ。
 譲は寸前まで言い訳がましく呟きながら、ドムの口の中にメッセージを忍ばせた。

「飲み込まないようにな。頼んだぞ」

 ドムの頭を撫でてやる。
 わかっているのかいないのか、ドムは使命を託され、「任せろ」と胸を張ったみたいに鼻先を上げた。
 実行に移してしまってからは、一日をソワソワして過ごした。
 メッセージを綴った紙が涎でヨレヨレになっていないか。
 ヴィクトルとロマンに見つかってやしないか。
 夜を迎えて就寝時間になり、譲は居ても立っても居られなくなる。中庭に忘れ物をしたと言って確認しに行くと、既に紙はドムの口から回収された後だった。
 胸を撫で下ろしたが、これでメッセージは譲の手を離れた。間者を通してイザークに届けられる。後戻りはできなくなったということだ。
 話を聞くだけのつもりでいるが、ヴィクトルについて教えて貰った後のことは正直わからなかった。
 ヴィクトルの印象は良いと悪いの両方。複雑であり、最初は最悪で、最近は良い方に傾いている。それがどう転んでしまうのかは神様にしかわからない。
 けれど何も知らないでいるより、力になれることがあるかもしれない。譲を動かしているのはヴィクトルに対するマイナスな感情ではないのだ。
 譲はイザークとのやり取りを墓場まで持っていく覚悟をしている。
 ひっそりと教えて貰うくらいならきっと許されると思った。
 だが確認を終えた譲は部屋に戻り、おやすみとキスをして去ろうとするヴィクトルを引き留めると、ベッドに引っ張り込んだ。後ろめたさを隠したかったのだ。
 ヴィクトルが不意を突かれ、倒れ込む。
 譲が笑うと、頭を撫でられた。

「急にどうしたの。眠たくないのかな?」
「んー、奉仕っていうの、そういう気分だからさ。たまには俺からさせて」
「可愛いことを言うね。うっかり抱き殺してしまいそうだ」
「はは、怖いよ・・・それでもいいけどさ」

 そんなふうに思える自分はどうかしている。

「公爵のあれを舐めたい。俺の手は繋がれてるから公爵が俺の口に咥えさせてよ」

 譲はヴィクトルを見上げた。鎖の長さには余裕があるので、ヴィクトルのものを股間から取り出すことはできる。譲は甘えていた。

「勿論だ。譲の願いなら」

 ヴィクトルが前立てをくつろげる。隆々と血管が張り巡らされた、漲った性器がぼろんと飛び出してきた。

「凄い、もうこんなに。今ので興奮した? うれしい?」
「ああ、たまらない」
「———ん」

 鼻に亀頭を擦りつけられる。むわっとした雄の匂いが鼻腔を通り、譲の脳髄を焼き、ぐらぐらと崩壊させる。

「んぁ、はい、ここにどうぞ」

 譲は口を開け、レェと舌を出した。
 その上に熱い肉棒が乗る。嵩が大きく重量があり、唇で包み込むと、竿の大部分がはみ出していた。
 喉を拓いて奥まで咥えても、全部はとても含めなそうだ。

(こんなデカいのが俺のナカにいつも・・・・・・ッ)

 窄まりが疼いた。そこの奥の、さらに奥も。譲は気を散らすように、ぺちゃぺちゃと音をさせながら裏筋に舌を這わせた。

「気持ち良いよ、もうちょっと深く挿れられるかな?」
「・・・ン、ん、ぅ」

 ヴィクトルが譲の頭を抱えて腰を逸らした。苦しくて涙が滲む。

「私の可愛い譲」

 うっとりと呟いて、ヴィクトルは譲の首に指を這わせた。

「もっと苦しくして欲しいかい?」

 掠れた声。穏やかで低いヴィクトルの声で問われてしまうと、譲は頭が上手く働かなくなる。

「ングっっ」

 頷くと喉が締まり、譲は目をぎゅっとつぶった。
 ぱんっぱっと乾いた音がリズミカルに響く。ヴィクトルが自分で腰を振り、譲の喉を使って先端をしごいている。
 譲の喉が、がぽがぽと痛ましい悲鳴を上げた。ヴィクトルはわざと強く腰を振り立て、このままではちっ息しそうだ思った時、大きな手で頭を抱え直される。

「ありがとう譲、もうすぐ出るよ」

 唇に金色のゆるやな茂みが打ちつけられ、喉を蹂躙しつくした凶器が脈打った。
 喉が熱い。吐きそうで苦しいのに、譲自身も勃起する。これで下も貫かれ壊れるまで揺さぶられたいと———、譲はヴィクトルの白濁を飲み干しながら、どうしようもない下半身の火照りを持て余してしまった。

「まだ物欲しそうだね」
 
 ヴィクトルは譲の蕩けた表情を見逃さない。
 譲は腰を持ち上げられ、長く深い夜に溺れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】不吉と蔑まれた黒狼獣人は、お人好しな戦友に求愛する【番外編更新予定】

花房いちご
BL
【黒狼の獣人ダン】は、不吉な黒毛と蔑まれ親に売られた。お人好しの【人間のルーク】は、家族を人質にとられて領主に売られた。 二人は戦場で出会い、力を合わせて終戦まで生き延びた。 その後二人は、それぞれの道をゆく。 ダンは王都で冒険者になり、ルークは故郷の村で家業を助けながら似顔絵描きとなった。 あくまで友人関係だった二人だが、一枚の写真をきっかけにダンは想いを自覚していく。 本編は三万字前後で完結。最後まで書いています。 ゆるい設定のファンタジーBLです。エッチな話はタイトルの横に*を付けています。ムーンライトノベルズにも載せています。 後半からエッチです。本編完結まで毎日更新(時間は変動するかもです)し、その後不定期で番外編を更新する予定です。 最初はシリアスっぽいですが、最終的にはラブラブエッチなBLになります。かなり卑猥になった気がします。 よろしくお願いします。

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)

三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。 各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。 第?章は前知識不要。 基本的にエロエロ。 本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。 一旦中断!詳細は近況を!

レアロス国の神子 〜転生したら美形な神子の弟でした〜

サクラギ
BL
兄が神官見習いになった時、ティアは捨てられた。捨てられて死にそうになった時、自分が転生者だと気づいた。兄は神に選ばれ神子となり、ティアは兄の元に呼び戻された。死の淵から神官見習いに召し上げられたティアだけど、なぜ転生したのかわからない。いつまでたっても幸せにはほど遠く、悲しい存在でしかなかった。 ※R18、カ所指定なし。 性表現、兄弟絡み、いろいろひどいです。暴力表現、死、あり。 ゆるく読んで頂けると幸いです。 今回もイジメ尽くしてます。 0時更新 全43話

目指すは新天地!のはず?

水場奨
BL
ケガをして、寝込んで起きたら記憶が2人分になっていた。 そのせいで今までの状況が普通でないと気づいてしまった俺は、新天地を目指して旅立つことにした。……のに、ついてくんなよ!ってか行かせてくんない?! 逃げたい主人公(受)と手に入れたい彼(攻)のお話。

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

元相方は最強歌い手から逃れたい

すずらん
BL
高校から綾人(あやと)は歌い手「ホシ」として、同級生の雪(ゆき)と二人で歌い手ユニット「ダイヤモンド・ダスト」(略:ダイダス)として活動していた。 しかし大学三年から雪は作曲家としてブレイク、大人気歌い手 koroとの活動が増加する一方、綾人との活動が減っていく。 有名になっていく雪に対し、綾人は負い目を感じると同時に、雪が自分から離れていくことを感じていく。 SNSでは綾人に雪とのユニット解消を臨む声が日に日に増えていく、それに対し反対しない雪を見て、綾人は限界を迎える。 大学四年の卒業の月、メーカーの営業として地方配属が決まった綾人は決断する。 東京から愛知への引っ越しの前日、綾人は唐突に歌い手活動の休止を宣言。 その日から歌い手「ホシ」は姿を現さなくなった。 3年後、東京配属が決まり、再び東京に戻った綾人。 スター街道の雪ともう二度と会うことはないと思っていた中、思わぬ形で再会してしまう。 俺はもうお前の横に立ちたくない! 立てないから、ほっといてくれ! 売れっ子歌い手/作曲家から逃げたい、一般人。 ※R-18は保険です。 ※歌い手界隈の事情や歌ってみたの投稿など、想像して書いているため、現実とは違う可能性がございます。 ※書くのはあまり得意ではないので、温かい目で見守ってください。お願いいたします。

【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで

あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。 連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。 ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。 IF(7話)は本編からの派生。

処理中です...