ラブドール

倉藤

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軟禁調教生活のはじまり

30 戻れないところまで

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 それから数十回と、譲は前立腺で達する快感を味わった。
 もったりとぬかるんだ熱が、弾けそうで弾けないところまで来ている。
 とっくに陰嚢の二つのボールは空になっているので、出せる体液がなくなっている。譲は絶頂まで届かない生き地獄のような快感を彷徨った。

「譲の中は柔らかいね、よくほぐれている。前立腺もふっくらとしこって、こりこりして気持ち良いだろう?」
「んぎっ、触るな・・・触るな・・・ぁ」
「だが譲のここは私の指を離してくれないよ。最初に比べてうねり方が変わった。ほら、こうすると、私の指先を誘い込んでいるみたいに締まるんだ」
「うるさい・・・聞きたくないっ」

 あまりにも聞くに耐えない戯言だ。しかし、下腹部が痙攣して止まらないのを譲自身も自覚している。
 前立腺を指の腹で擦られ、吐息と嬌声を漏らしてしまう。

「・・・・・・ふ、っ、う、ああっ」
「気持ち良さそうで嬉しいよ」

 すると、慈しむように譲の体内を撫でていた指の動きが変わった。

「あえ?」

 ヴィクトルは会陰にもう片手を添え、内からの刺激と挟み撃ちにする。

「うあぁっ」

 譲の腰が大きく跳ねた。ゴリュッとしこりが潰され、圧迫されたまま揉まれる。

「ン、ンぐぅぅ———っっ」

 強すぎる快感を受け、譲は動かせる太腿を精一杯ばたつかせて抵抗した。

「こら、暴れない」

 途端、手脚に電流が走った。

「ぎゃっっ!」

 会陰から手を離したヴィクトルはペナルティ用のスイッチを押している。親指がスイッチの上にある限り、電流が流れ続ける。

「あ、ぅっ、痛・・・いぃ・・・・・・」

 下瞼に涙が盛り上がって浮かび、頬をぼろぼろと伝った。
 だがヴィクトルは電流スイッチを押したまま、前立腺を刺激する。しこりは形を変えるほどに、ぐにゅぐにゅと弄ばれ、痛いと気持ち良いが頭で混ざる。

「もしかして痛いのが好きかい? 指が食いちぎられそうになる」
「当たり前だっっ」

 嬉しそうな声を聞き、譲は叫んだ。
 軽蔑する。痛みで身体に力が入るのは当然だ。
 その意味で叫んだつもりだったが、声に出すまで言葉足らずだったことに気がつかなかった。

「そうか。嫌がるそぶりをするから全然わからなかったよ。それじゃあ、今の時間までずっと物足りなかったんじゃないか?」

 君は肝心なところを教えてくれないねと、ヴィクトルが悲しげに眉尻を下げる。
 譲は持ち上げられる範囲で頭を浮かせ、そんなヴィクトルの表情を見つめた。

「公爵、今のは」

 されてはいけない勘違いが起こっている。訂正しないと電流を流される。
 譲は呼吸を整えるために息を吸った。

「今のは・・・・・・」

 喉が渇いていて、声が掠れる。散々喘ぎ、叫んだせいで喉が痛い。

「わかったよ、教えてくれてありがとう。やり方を変えてみるよ」
「待・・・って」

 譲の喉は壊れた笛のようだった。空気を含みすぎた声は震えてしまい伝わらない。
 ヴィクトルは全く耳を貸さず、むしろ慈悲深い手つきで電流のスイッチを入れた。

「ィっ、———ッ」

 痛みが神経を焼く。

(痛い・・・・・・っ)

 譲は声を上げられずに顎を逸らした。
 ヴィクトルはスイッチを押したまま器用に譲の股の間に顔を埋め、陰嚢を持ち上げると、会陰に舌を這わせる。

「ひっ」

 急所を味わうように蛞蝓なめくじが這う。
 奥歯が震えてカチカチと鳴り、憎悪に似た深い快感が痛みと共に譲の脳に浸透した。

「ん、ぅ、ぁ、」

 身の内側では指が三本に増やされ、前立腺を叩き、なぶり、責め立てる。

「譲はどれが好みかな?」
「・・・・・・ぅ、ぅッ」

 譲はただ首を横に振るしかできない。

「選べないのかな? 譲は欲しがりだね。いいよ、全部してあげよう」
「うっ、ち・・・が」

 電流がふっと止み、安堵した刹那に出力が上がった。
 痛みに意識が揺らぐ。電流を舌や股間に直接当てられないだけマシだとすら思えた。
 のたうち回ることも許されず、痛みに耐える狭間を埋めるように快感が襲う。
 ぴちゃぴちゃと会陰を舐め回され、尖らせた舌先で外からしこりを抉られる。
 前立腺は快楽を得るためだけの部位と成り果てた。
 擦られて、震わされ、ついに譲の限界が弾けた。

「ぅ、くぅっ・・・ああああ———・・・・・・!!」

 凄まじい快感で息を詰めた瞬間、ピンと伸びた片方の脚先。指が空を掻いたが、掴めるものがなく、手のひらに食い込む。
 凝縮された快感の波が遠ざかり、ようやく身体を弛緩させた時には股間が濡れそぼっていた。
 勃起できていない性器は射精ではなく失禁している。尿が伝い落ちて、シーツが冷たくなるのを感じた。
 ヴィクトルが手脚の拘束を解き、放心する譲は抱き上げられた。

「譲、大丈夫かい? 休憩にしよう。頑張ったね」

 そう言って譲の頬を撫でる。抱き締める腕はまるで壊れ物に触れるようだった。
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