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第3章 ダオ編・弐

45 ふたたびの地獄② *

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 最後の一枚を脱ぎ落としたとき、冷え切った身体に感覚はありませんでした。経験したことのない寒さに膝の震えが止まらない。
 せめて手と腕で身体を覆おうとするものの、その手と腕が冷たいので、なんの意味もないのです。

「リュウホンさま脱ぎました・・・・・・」
「そうだな。もう少し楽しませてほしかったが、いいだろう」

 声がどの方向から聴こえたのか。立ちすくむぼくは、リュウホンさまの気配を懸命に追いました。ほんとうに恐ろしい。未知の恐怖が襲ってきます。

「可哀想そうに、唇が真っ青だ」
「ひうっ」

 警戒していたのに、悲鳴が上がった。斜め後ろからの声。ガッと顔を鷲掴みにされて口付けられ、首の骨がキシキシと軋んで壊れそうです。

「両腕を上に、そう。脚を動かすなよ」

 ぼくは命じられた格好をとる。首筋に噛みつかれ、背中を下向きに撫でられます。背中伝いにリュウホンさまが屈んだのがわかりました。
(なにを?)
 足首にガチャリとなにかが嵌まりました。身体が冷え切っているせいで、むしろ人肌に感じ、しかし柔らかみのない無機質な素材。硬くて、重たいのです。

「うるさいジジイどもにはもう見せてやった。今度こそ、一生、外に出さない」

 リュウホンさまの声に背筋が粟立ちました。

「これがなにか、知っているか?」

 指先にぴたりと当てられたのは、これも無機質な硬いもの。一つひとつが輪っか状で、ぼこぼこと連なっています。

「お前の足首に鎖を繋ぐ」

 恍惚とした声音です。

「これでお前だけは俺を裏切れない。お前だけは、死ぬまで俺のものだ」
「ごめんなさ、リュウホンさま・・・・・・」
「謝る必要はない。言葉など無意味だよ。粗相をしたら、仕置きをすればいい」
「や・・・・・・しないっ・・・・・・て」
「ああ、安心しなさい。もしもの話だよ。もしも悪いことをしたら痛い罰が待ってる。どうするのが賢明なのか、ダオはわかっているね?」
「・・・・・・ん、んう」

 嗚咽をこらえながら、激しく首を縦に振りました。

「よろしい。いい子だ。その場に膝をつけ」

 地に膝をつくことは、この国では服従を表す。屈辱的な姿勢だといわれます。関節がかじかみ棒切れのようになった脚を無理やり曲げ、ぼくは両膝をつきました。

「手は後ろで組め。それから、これを」

 リュウホンさまの指示に従って腕を下げると、唇に熱いものが押し当てられました。今度は無機質ではありません。つるりとして生々しい男の肌の感触です。唇に触れた瞬間にどくりと脈打ったそれの先端は、わずかにぬめりを帯びていた。

「口を開けろ」

 ぼくは言われたとおりに口を開けます。

「もっとだ。思いきり開けろ。それじゃ入らん」
「・・・・・・ん、んあ」

 素直に言われたとおりにする。顎が痛むほど限界まで口を開け、リュウホンさまの男根を迎え入れました。熱くたぎり、とめどなくこぼれ落ちてくる雫が上顎や喉に擦り付けられ、口の中がぬるぬるとしていくのがわかります。

「なにをしてる。すっとぼけてないで舐めろ。歯を立てたらお前の歯を折るからな」

 そうはいっても、咥えたことがあるのは葉巻くらいなもの。なにをどうしてよいのかわからず、口いっぱいに埋められた男根をチロチロと舐めました。
 口に溜まっていってしまう自分の唾液と、喉奥まで届きそうなリュウホンさまの先っぽ。涙と鼻水でぐずぐずの鼻腔のせいで、呼吸がうまくできません。

「う・・・・・・ふぅン・・・・・・」
「ちっ、ぜんぜん駄目だな」
「んんん゛ん・・・・・・ッ!」

 突然、喉奥がぐぐぅと押し開かれました。頭を両手で掴まれ、逃げることができない。
(息が———・・・・・・)
 苦しさのあまり、涙がボロボロとこぼれます。ふぅふぅと懸命に鼻で呼吸をし、鼻水をすする余裕すらありません。
 唇にはリュウホンさまの下生えがぴったりと触れていました。喉奥を犯した男根はずるりと抜け、それからふたたび叩きつけられます。口を閉じることは許されない。でも息ができなければ死んでしまう。想像を絶する苦しみで意識がかすみがかってきます。
 やがて喉奥にはまったまま、リュウホンさまのたねがほとばしり、ぼくの身体は自動的にそれを嚥下した。

「う———ゲホッ、ゲホッッ」

 激しく咳き込み、身体が揺れました。支えになっていたリュウホンさまの手が頭から離れたのでしょう。気を失っているのか、現実なのか、判断がつかない。
 このときにぼくが感じられたのは、無情なほどに冷たい床の温度だけでした。
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