上 下
15 / 35
第一章 幼少期

朝のお散歩と小さな子犬2

しおりを挟む
朝食を和気藹々に済ませたあと、広いお庭を散歩する。
私とお母様が手を繋いで、お父様とライナリアが手を繋ぐ。
青々と広がる晴天に雲一つない空を眺めて歩く、いつもの光景にはアルセイヌから見た世界はどう見えてたんだろう。

暖かい手を感じてお母様お父様ライナリア、仲良く歩く光景。他愛もない会話で笑い合う姿。

ゲームで見ることもないアルセイヌの世界。
そして私が歩むこれからの未来。

どんな先に試練とアルセイヌの感じるものが待ってるんだろうね。

「ねえ、アル!」
「ん? 何?」
「もう聞いてなかったんですの! せっかくなんですし、あすこ行かない?」

あすこって何処?
うーむと考えてたらお母様が手を離してくるから、ちょっと寂しくて繋ぎ直すとクスクス笑われた。

「ライナリアと遊ぶなら手、離さないとでしょ。」
「あ.....うん。」
「アルってお母様と離れたくない?」

手を離したがらないのを、離れたくないと思われたのは心外だが、寂しさを感じちゃったのは本当だった。
ついコクンと頷くとお母様が

「アルが、あのアルがわたくしにーー貴方ーわたくし嬉しいですわ!」

とか聞こえてくる。ん? 嬉しそうなのは良いけど、そこまで甘えてなかったのかアルセイヌって?

「うーむ、しょうがない今回はお母様に免じてお庭で遊びましょ! 行こ!アル!」

ぎゅっと握られる手袋越しの温もりにライナリアを見ると笑顔で笑って、一緒に遊ぼうとしてくれるのが嬉しくて笑み...頷く。

「....アルって罪作りだね、ふふ...よーし遊ぼ!!」

何が罪作りなのかは良くわからないけど、ライナリアの笑顔のほうがファン心くすぐるんだけどね!

ー間話ー


遠くにお互い微笑んで遊んでいるライナリアとアルセイヌを見守っているとメリアが側に寄り添うように身体を預けてくる。

「どしたメリア?」
「アルセイヌが笑ってくれるなんて...それもわたくしに...。喜んでしまうの、良いのかしら....あの子に甘えて貰えて。」

目を伏せ寂しそうな顔をするメリアに、アルセイヌの力のことを言っているのだろうと思い出す。
母として抱き上げた時に僅かでも触れた手、それによって身体が蝕まれる羽目になって恐怖を感じて、少しの距離を空けていた。

でもこのままじゃ娘を嫌いになんてなりたくないと今回朝食を共にし、アルセイヌの気持ちを知った。

それが余計に葛藤しているのだろう。

「いいんだ、君はアルセイヌの母であり...愛する娘を支える存在だ。無理しない程度に接しろ、いつか知る真実で傷つくこともあるだろうが、きっと今後未来にもな。」
「ふふ、ちょっと厳しい貴方も大好きです。そうですわね、あの子の未来のためにも、わたくし頑張りますわ。」

ー間話終了ー

パタパタとかけていくライナリアを追っかけて鬼ごっこをしていると、空の風が僅かに誘うように吹いた。

「アルセイヌどうしたの?」

急に止まった私に不思議そうに聞かれたけど、それよりも私は何かに呼ばれた感覚があって、自然と足が近くの草むらに向いた。

ガサガサと探してると、クーンクーンって犬の鳴き声で私の耳に入る。
もう少し先に進み奥へと入ると白い毛並みと尖りのある耳、まだ子犬の形容に可愛いーと思って触ってしまう。

手袋越しだから大丈夫、そう思っての行動だったんだけど。

その子犬はグルルルと唸って私を警戒していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

見ず知らずの(たぶん)乙女ゲーに(おそらく)悪役令嬢として転生したので(とりあえず)破滅回避をめざします!

すな子
恋愛
 ステラフィッサ王国公爵家令嬢ルクレツィア・ガラッシアが、前世の記憶を思い出したのは5歳のとき。  現代ニホンの枯れ果てたアラサーOLから、異世界の高位貴族の令嬢として天使の容貌を持って生まれ変わった自分は、昨今流行りの(?)「乙女ゲーム」の「悪役令嬢」に「転生」したのだと確信したものの、前世であれほどプレイした乙女ゲームのどんな設定にも、今の自分もその環境も、思い当たるものがなにひとつない!  それでもいつか訪れるはずの「破滅」を「回避」するために、前世の記憶を総動員、乙女ゲームや転生悪役令嬢がざまぁする物語からあらゆる事態を想定し、今世は幸せに生きようと奮闘するお話。  ───エンディミオン様、あなたいったい、どこのどなたなんですの? ******** できるだけストレスフリーに読めるようご都合展開を陽気に突き進んでおりますので予めご了承くださいませ。 また、【閑話】には死ネタが含まれますので、苦手な方はご注意ください。 ☆「小説家になろう」様にも常羽名義で投稿しております。

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)

どくりんご
恋愛
 公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。  ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?  悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?  王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!  でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!  強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。 HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*) 恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)

みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜

ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。 年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。 そんな彼女の癒しは3匹のペット達。 シベリアンハスキーのコロ。 カナリアのカナ。 キバラガメのキィ。 犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。 ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。 挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。 アイラもペット達も焼け死んでしまう。 それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。 何故かペット達がチートな力を持って…。 アイラは只の幼女になって…。 そんな彼女達のほのぼの異世界生活。 テイマー物 第3弾。 カクヨムでも公開中。

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~

りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。 ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。 我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。 ――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」 乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。 「はい、では平民になります」 虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...