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学園編(初等部)

騎士道を通す

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2年生の試合も終わり、全ての試合が終了した。

私はガーディアンズなので大会の準備がある。大きな円形闘技場で開催されるらしい。

娯楽の少ないこの世界で、大会やイベントは多くの者が集まる。

それに今回は怪盗スティルの予告状もある。ファンの人達も来るのは明白。

前回の大会よりも観客が多い。つまり、準備も沢山あるのだ。

準備の追われる日を超え、ついに大会当日となった。クジを引いて順番を決める。

私は2番を引いた。クジの結果はこうなった。

1回戦目ゼネアVSアズサ
2回戦目セシリアVSアベティ
3回戦目アイラVSライベル
4回戦目カインVSレオン

「最初の第1回戦はゼネアVSアズサの試合だ!」
アナウンスの言葉に観客は盛り上がっている。

「始め!」
審判の開始合図にゼネアが走る。

アズサは動かない。ゼネアはファルシオンをアズサに叩き込む。

アズサは避ける。ゼネアが攻撃を仕掛けるもアズサは避け続けた。

「避けるだけっすか!」
ゼネアの言葉を無視し、アズサは6本のナイフを構えた。

そのまま走りながら距離を取り、ナイフを2本ゼネアに投げた。

ゼネアはファルシオンでナイフを弾く。またもやアズサがナイフを投げるも、ゼネアには当たらなかった。

「アズサさんは攻撃をしても避けられていますし、ゼネアさんが有利でしょうか。」

隣にいるアイラが言うが私はそうは思わない。
「いや、恐らくゼネアが不利だろう。」

カインとレオンも私と同じ意見の様だ。
「何故ですか?」

「見てれば分かるさ。」
「そうだな。」

ゼネアの攻撃を避け続けるアズサ。攻撃はしているがナイフを投げるだけだ。

「けりをつけるっすよ!」
ゼネアはファルシオンを構え、アズサに突っ込む。

しかし、ゼネアの攻撃がアズサに届く事はない。何故ならゼネアが動かなくなったから。

まあ、動けないの方が正しいと思うが。
「なんすか!?これ!」

アズサが指を動かして告げる。
「スレッドナイフ」

アズサが唱えるとゼネアが握っていたファルシオンが吹き飛んだ。

「お前はもう動けない。だから俺の攻撃を避ける事は不可能だ。」



「何でゼネアさんは動かないんですか?」

「動かないんじゃない、動けないんだ。アズサが仕掛けた罠に捕まってな。」

カインの言葉にアイラは首を傾げる。
「どう言う事ですか?」

「アズサさんが投げたナイフには、細い糸が仕掛けられていようですね。」

「糸がですか?」
「ええ、糸に絡まって動かないのでしょう。」

「普通の糸なら切れるが、魔力が流れているんだろうな。魔力が流れてたら簡単に切れないからな。」

「それに糸が細過ぎて見えない。魔力を感知しないと気づかないぐらいだ。」

「なら、勝者は・・・」


ゼネアがもがくが全く動かない。
「諦めろ。って言っても聞かないんだろうな。」

「俺は負けないっすよ!」
「チッ!なら、諦めさせてやる。アーススピア」

アズサの詠唱に土の槍が現れた。そのままゼネアにぶつけるアズサ。

「俺は・・・まだ、戦えるっす・・・。」
「口先だけじゃ、勝てないぞ。弱ければ何も出来ない。」

「くっ。何としても勝つっす!ハアァァァ!」
「力を込めても動かないぞ。」

「やってみないと分からないっす!俺は仲間や絆を馬鹿にする奴は絶対に許さないっす!」

「お前に何が分かる!グラウンド」
アズサの詠唱に岩が突き上げ、ゼネアに激突した。

もう戦えないと見込んだ審判が止めようとする。
「まだ・・・終わってないっす!」

ゼネアの言葉に審判は足を止める。
「しつこいな。」

「俺の騎士道を否定されたんす!ここで引いたら男じゃないっす!」

「お前の騎士道なんて簡単に崩れる。」
それから一方的にゼネアが攻撃されるのか。

そう思ったが、ゼネアは魔力を周りに纏わせた。
「簡単に・・負けるつもりはないっす!」

そう言って糸から脱出した。
「なっ!?」

ゼネアはファルシオンを、ふらつく足取りで取りに行く。そしてそのまま前へ倒れた。

「・・・!?勝者はアズサだ!」
その言葉に観戦者達は拍手を送る。


「ぷぷっ!何だあのみっともない姿は!」
その言葉に視線を向けると、1人の少年が笑っていた。

濃い緑色の髪に黒い瞳。不健康そうな白い肌に、瞳の下にクマができている少年。

「騎士道なんて馬鹿な事を言う前に、自分の負け姿をどうにかしろよ!」

その言葉にカインが剣の柄を握り、大笑いしている少年に向かって歩く。

「酷いです。」
アイラも少年を睨みつける。

レオンもカインの腕を掴んで止めているものの、もう少しで爆発しそうだ。

「今の勝負を馬鹿にするなよ!」
カインが叫ぶ。すると少年はこちらを睨む。

「本当の事を言って何が悪い。泣き叫びでもすれば会場の笑いも取れただろうによ!」

「貴様!?」
「はーい、そこまでだよ。」

呑気な声の主はアシンだった。
「負けは負け。仕方ない事だよ。」

アシンの言葉に勝ち誇った顔をする少年。しかし、アシンは冷たい視線を少年に向ける。

「だけどさ。人の騎士道を馬鹿にするなんて、何様なのかな?」

「えっ・・・」
少年の顔が驚愕に変わる。

「そうでしょ?騎士道を馬鹿にするのは人生を馬鹿にするのと同じ。」

「そんなつもりは・・・でも、あんな無様な!」
「だから?」

その言葉に少年は私達の方を睨む。
「俺はアベティ。セシリア!お前の次の対戦相手だ。」

私を指を指して言う。
「覚悟しろよ!お前を会場で大恥かかせてやる。」

そう言って出て行った瞬間、カインが言う。
「セシリア!あんな奴、ボッコボコにしてやれ!」

「気をつけてね。あの男は汚い手を使う事で有名だから。まあ、負けないだろうけど。」

「ありがとうございます。キングさん。私は負けません。」

私は試合へ向かった。

「第2回戦セシリアVSアベティの試合だ!」
アナウンスの紹介が終わり、審判が合図を送る。

「おい、降参なら今の内だぞ!」
「お構いなく。負けませんので。」

「チッ!その余裕、崩してやる!ウインド」
そう言ってアベティは唱えると風が吹く。

強く吹き荒れ、砂煙が舞う。私の周りはもはや砂竜巻である。

「ウインドアロー」
そう言って風の矢が現れ、攻撃して来た。

「貴方が馬鹿にした騎士道の重みを感じなさい。」
「なんだと」

私は柄に手で掴み唱える。
「アイスボール」

複数の氷の球体が現れ、砂竜巻に当たり凍り付く。そのまま風魔法で凍った竜巻を破る。

そしてアベティに向かって走る。走りながらレイピアを抜き放ち、アベティの横を通り立ち止まる。

そのまま鞘にレイピアを戻すと同時に、アベティが倒れた。

私が通り過ぎたと同時に、アベティに一撃を喰らわしたからだ。

「勝者はセシリア!次は第3回戦。アイラVSライベルだ。」

アイラとライベルの勝敗は数秒で付いた。それは抜刀術をアイラが使ったからだ。

綺麗な太刀筋で一撃で倒したのだ。観客も驚きを隠せていなかった。

「第4回戦。カインVSレオン!」
等々2人の勝負が始まった。



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