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三章~戦いの火蓋
侵入
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緑たち一行がそこに辿り着いたのは、夕暮れ間近だった。
店からはかなりの距離があったのだが、エリオットが車を出してくれたことによって、危険はなく無事に辿り着いた。
途中の景色はなるべく見ないようにしたかったが、嫌でも視界に飛び込んできた。
「酷い有り様だが、これはまだ序章に過ぎないことを肝に命じるんだ。」
エリオットが言っていた言葉の意味を緑は、なんとなくだが理解していた。
今はまだ正常な人間の方が圧倒的に多いらしい。
だが、エリオットが前に話していたことを思い返せば、これからまた、あの頭に直接響いてくる奇怪な声が起こるという予言めいたことを言っていた。
緑にはまだこの異変を乗り切るための策はまだ無い。
しかし、エリオットには何かが見えていることだけは確信している。
今はまだエリオットの言う通りに動くしかないと緑は自分に言い聞かせていた。
「さあ着いたぞ、ここだ。」
到着したのは山間にある大きな施設のようだった。
「ここは?」
「軍事研究をしている施設さ。この中に戒君や凛香ちゃんのお父さんがいるはずだ。彼に会わなければならない。」
施設の全貌は把握できなかったが、一目見ただけでもかなりの広大な建物のようだ。
周囲は金網で囲まれていて、出入口にはライフルを持った迷彩服に身を包んだ兵士らしき人影も見えた。
「あ、あのエリオットさん。ここって入れるんでしょうか?」
「まあ無理だろうね。そのためにレミを連れてきたんだ。頼めるか、レミ。」
「はいはーい、お安い御用だよ、パパ。」
「よし、それじゃあ緑君。走る準備をしておくんだ。」
緑たちは少し離れた場所に車を停め、隠れるように研究所へ歩み寄った。
「いいかい、私の手を掴み離さないようにね。じゃあ行くよ。」
緑はこれから何が起こるのか分からずに、ただエリオットに身を任せた。
「よし、いくよ!」
次の瞬間、レミは何かの物体を研究所の入り口付近に投げ込んだ。
「ほらほら、どんどんいくよ。」
それを何個も投げる、レミ。
数秒後、研究所の入り口は白い煙で覆われた。
「これって――!?。」
「ただのスモークグレネードだよ。さあ、今のうちに。」
エリオットは、その煙の中でも全てが見えているように、突き進む。
何か特殊なゴーグルでもしているのかと思えるほどに前へ前へと前進していく。
緑には辺りの状況は何も把握できていない。
いったい何がどうなっているのか分からないがエリオットの手だけは決して離さなかった。
しばらくして、ようやく煙が晴れてきた。
気づけば既に施設の内部にいるようだった。
「エリオットさん――。」
「静かに。もうすぐそこに彼がいる。」
店からはかなりの距離があったのだが、エリオットが車を出してくれたことによって、危険はなく無事に辿り着いた。
途中の景色はなるべく見ないようにしたかったが、嫌でも視界に飛び込んできた。
「酷い有り様だが、これはまだ序章に過ぎないことを肝に命じるんだ。」
エリオットが言っていた言葉の意味を緑は、なんとなくだが理解していた。
今はまだ正常な人間の方が圧倒的に多いらしい。
だが、エリオットが前に話していたことを思い返せば、これからまた、あの頭に直接響いてくる奇怪な声が起こるという予言めいたことを言っていた。
緑にはまだこの異変を乗り切るための策はまだ無い。
しかし、エリオットには何かが見えていることだけは確信している。
今はまだエリオットの言う通りに動くしかないと緑は自分に言い聞かせていた。
「さあ着いたぞ、ここだ。」
到着したのは山間にある大きな施設のようだった。
「ここは?」
「軍事研究をしている施設さ。この中に戒君や凛香ちゃんのお父さんがいるはずだ。彼に会わなければならない。」
施設の全貌は把握できなかったが、一目見ただけでもかなりの広大な建物のようだ。
周囲は金網で囲まれていて、出入口にはライフルを持った迷彩服に身を包んだ兵士らしき人影も見えた。
「あ、あのエリオットさん。ここって入れるんでしょうか?」
「まあ無理だろうね。そのためにレミを連れてきたんだ。頼めるか、レミ。」
「はいはーい、お安い御用だよ、パパ。」
「よし、それじゃあ緑君。走る準備をしておくんだ。」
緑たちは少し離れた場所に車を停め、隠れるように研究所へ歩み寄った。
「いいかい、私の手を掴み離さないようにね。じゃあ行くよ。」
緑はこれから何が起こるのか分からずに、ただエリオットに身を任せた。
「よし、いくよ!」
次の瞬間、レミは何かの物体を研究所の入り口付近に投げ込んだ。
「ほらほら、どんどんいくよ。」
それを何個も投げる、レミ。
数秒後、研究所の入り口は白い煙で覆われた。
「これって――!?。」
「ただのスモークグレネードだよ。さあ、今のうちに。」
エリオットは、その煙の中でも全てが見えているように、突き進む。
何か特殊なゴーグルでもしているのかと思えるほどに前へ前へと前進していく。
緑には辺りの状況は何も把握できていない。
いったい何がどうなっているのか分からないがエリオットの手だけは決して離さなかった。
しばらくして、ようやく煙が晴れてきた。
気づけば既に施設の内部にいるようだった。
「エリオットさん――。」
「静かに。もうすぐそこに彼がいる。」
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