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パンドラへ

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僕たちは、暗がりの中を歩かされました。

ベティルス宮殿の内部は意外に広いようですが、その全貌は暗くて把握できません。

しばらくすると、どうやら到着したようでした。

目を凝らして前の様子を伺うと、モルドスが突き当たりの壁に手の平を翳しているような様子が見てとれました。


その瞬間でした、何やら空間が歪んだような、えもいわれぬ不快さが辺りを支配していきました。

それは、まるで前日の夜に、たちの悪いお酒をしこたま飲んで、起きたら頭がグワングワンしているような、そんな気持ち悪い現象が唐突に起きたのです。

もちろん、それは僕だけに起こったことではありません。

ここにいる皆がそうでした。


「開いたぞ。これがパンドラへの道だ。」


モルドスの低い声が宮殿内に響きます。

その先には、どす黒く渦巻くような空気に包まれた大きなゲートのようなものがありました。


こんな所に入れというのでしょうか。

僕は、御免こうむりたい気分で一杯になりました。


「この先にパンドラがあるのね。いいわ、行きましょう。」


今回、先陣をきって声をあげたのはサーシャ様でした。

やれやれ、サーシャ様が行くのなら従者の僕が行かない訳には参りません。

躊躇いながらも覚悟を決める時がやってきたようですね。


「それでは、我に続くのだ。」


モルドスは、躊躇することなくゲートな中に消えて行きました。

それに続き、アイス、ゼイン、その他の黒装束たちが次々と吸い込まれていきました。


「我々も行こう……だが、ここから先は何が起きるか見当もつかない。全員生きて戻って来れる確証も何もない。引き返すのならば今だぞ。」


僕はディミトリさんの、お言葉に素直に甘えさせてもらうことにしましょう。


「何を馬鹿なことを。そんな者がいるはずないではないか。それよりも私は楽しみで仕方がないのだ。早く行くぞ。」


馬鹿はあなたです、レジェス。

そんな戦闘大好き人間はあなたくらいなものですよ。

内心では皆、帰りたいに決まっているではありませんか。


僕は皆の方へチラリと視線をと向けました。


「レジェス様が、こうなっては仕方ありません。私もお供いたします。」


ジャクリンさんまで。

確かにジャクリンさんは、レジェスのお世話係ですから、彼が行くと言うのならば行かない訳にはいかないでしょう……いや、それは僕も同じか。


「当然、私もディミトリ様と共に。」


まあフォックスさんも当然そう答えますよね。


「私も勿論行くわよ。レッツゴー!」


シエルさん。

貴女は確かに偉大な魔法使いですが、いざという時に役に立たないことのほうが多いんですよ。

自重してください。


「だ、だったら俺も行くぜ。シエル様のためなら地獄へでもお供致します。」


ローラス……君はそれでいい。


「無論、私も覚悟はできている。ディミトリ殿、最後まで付き合いますぞ。」


ダマンさん、ここにはまだ覚悟を決めきれぬ男が一人いることをお忘れなく。


「そうか、皆頼もしいな。サーシャ、お前も大丈夫だな。」


ディミトリさんの言葉にサーシャ様は、少しの笑みを浮かべて頷きました。


ちなみに僕は、まだ何も言っていないのですが、どうやら自動的に行く、という方向で決定しているみたいです。


こうして、僕らはモルドスやアイスを追ってパンドラの箱を開けることになったのでありました。

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