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覚醒対決
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サーシャ様は剣を抜きました。
魔法剣が使えない、この勝負の行く末を大きく左右するのは、パープルアイズを発動できるかどうかだと思います。
「さあ始めようか、ディミトリの娘。」
アランも剣を抜きます。
「――サーシャよ!」
先手に出たのはサーシャ様でした。
素早い動きで、アランを囲むように高速移動しながら、攻撃を仕掛けていきます。
しかし、この動きは?
「ちっ!ちょこまかと、しやがって。」
アランは、サーシャ様のスピードについていけない様子。
この時、僕は確信しました。
サーシャ様が自分自身の意思でパープルアイズを覚醒状態にすることが出来るようになっていると。
どうやら、サーシャ様は戦いが始まってすぐにパープルアイズを発動していたようです。
「ふっ、やるじゃねーか。認めてやる、俺の負けだ。」
「もう終わりなの?」
「勘違いするなよ。スピードでは、お前に勝てないと言ったまでだ。」
パワーでは、サーシャ様に勝ち目はありません。
しかし、当たらなければどうってことはないでしょう。
「もう、これは要らんな。」
アランは、何を思ったのか剣を投げ捨てました。
「これは少しまずい展開ですね。」
意味深な呟きをしたのは、フォックスでした。
「サーシャ様は序盤からパープルアイズを発動させていますが、アランはまだ本気ではありません。」
確かにそうです。
フルガイアの民には何かしらの能力が備わっています。
その能力がサーシャ様にとってはパープルアイズなのです。
アランは、まだ通常の状態。
ここから、どんなパワーアップをしてくるのかで勝敗が決するでしょう。
「アランの覚醒は、サーシャ様にとって相性が悪い。奴を覚醒させる前にしとめるしか手立ては、ありません。」
フォックスは実際、昔からアランのことを知っています。
その彼が言うのですから、きっとそうなのでしょう。
ですが、サーシャ様を舐めてもらっては困ります。
「デビルロック!」
アランの全身を覆うように岩盤が包みこんでいきます。
そしてアランは、まるで岩の鎧を纏ったような出立ちに変貌を遂げました。
「それがあなたの能力ってわけね。」
「そういうこと。残念だが、こうなった俺を倒すことは不可能だぜ、サーシャ。」
防御力は高そうですね。
しかし、ただでさえスピードで劣っているのに、あんな重そうな物を装備しちゃったら、サーシャ様に弄ばれちゃいますよ。
「それはどうかしら。」
サーシャ様は、スピードでアランに揺さぶりをかけながら、攻撃をかけていきます。
一方のアランはこれまでとは違い、その場を一歩たりとも動こうとはしませんでした。
「もらった!」
サーシャ様の剣がアランに突き刺さりました……いや、刺さったと思われた剣先は、アランの厚い岩に弾き返されてしまいました。
「なかなか、いい攻撃だったな。だが、俺には届かないぜ。」
「まだまだ!」
サーシャ様の攻めは、まるで嵐の様でした。
自慢のスピードに乗って、攻撃の手数を増やしていきます。
その攻撃が、次々にヒットしているのですが、アランの分厚い岩を破ることができません。
「だから、効かねえって言ってるだろ!」
アランのパンチがサーシャ様を捉えました。
その衝撃は凄まじく、サーシャ様は吹き飛ばされてしまいました。
ただのパンチであの威力は反則に近いです。
これは、選手交代したほうがよさそうですね。
「私がいこう。」
レジェスも、そう感じたらしく、自ら名乗りを上げました。
「引っ込んでて、レジェス。やっと面白くなってきたところなの。」
「し、しかし……分かった。」
サーシャ様の強がりでしょうか?
それとも何か策でもあるのでしょうか。
「いいね、その心意気は認めてやるが、仲間に変わってもらったほうがいいんじゃねえか?」
敵ではありますが、これはアランの言う通りかもしれません。
今のサーシャ様にあるのは、スピードだけです。
魔法剣も通じない、パワーでもアランの岩を砕く力も持ち合わせていません――!?
この時、僕は一筋の光明を見つけました。
パワーがなければ作ればいい。
攻撃の付加価値としての魔法剣は効かないとしても、剣を強化する補助的な魔法剣ならいけるはずです。
もしかして、サーシャ様はそのことに気づいているのかもしれません。
「大丈夫よ。私はあなたに勝てるわ。」
「ほう、どうやって勝つつもりだ?」
「あなたの弱点は、その右の脇付近にある、そこよね。」
サーシャ様は、アランを指差しながら言いました。
「なるほどな。そのパープルアイズには魔力の流れを見抜く、そんな能力があるのか。」
そういえば、この場所を発見する時も魔力の流れを見つけていましたね。
それを応用して戦いに役立てるとは、サーシャ様にも臨機応変が身に付いてきましたね。
「だが、お前に貫けるのか?簡単にはいかないぜ。」
「分かってる。その小さな弱点は、針の穴に糸を通すようなもの――だけど、私はやれる。」
「いいね。かかってこい!」
「アイアンニードル!」
サーシャ様は遂に魔法剣を使いました。
その剣、スパロウティアズは極細の針のように変化しました。
あれほど細い剣先で貫かなければならない弱点というのは、おそらく相当に難易度が高いはず。
しかも、相手は完全防御スタイル。
何か策がなければ難しい状況ですね。
サーシャ様は、これまで同様スピードでアランを撹乱しながら、攻撃を仕掛けていきます。
しかし、結果は同じでした。
だが、サーシャ様はアランのパンチに何度となく吹き飛ばされながらも立ち向かっていきます。
どうやら、策は無さそうです。
これは、早いとこレジェスに代わってもらったほうが良いかもしれません。
「どうした、ほら俺の弱点はここだぜ。」
アランは自分の弱点を指差しながら、余裕を見せます。
「ハァハァ――まったく、女の子相手にパンチするなんて――!」
サーシャ様もかなり追い詰められてしまいしたね。
次の攻撃を食らったら、終わりかもしれません。
何とか、ここを耐えて好機を伺うしか手がない。
「いいこと思いついちゃった。」
魔法剣が使えない、この勝負の行く末を大きく左右するのは、パープルアイズを発動できるかどうかだと思います。
「さあ始めようか、ディミトリの娘。」
アランも剣を抜きます。
「――サーシャよ!」
先手に出たのはサーシャ様でした。
素早い動きで、アランを囲むように高速移動しながら、攻撃を仕掛けていきます。
しかし、この動きは?
「ちっ!ちょこまかと、しやがって。」
アランは、サーシャ様のスピードについていけない様子。
この時、僕は確信しました。
サーシャ様が自分自身の意思でパープルアイズを覚醒状態にすることが出来るようになっていると。
どうやら、サーシャ様は戦いが始まってすぐにパープルアイズを発動していたようです。
「ふっ、やるじゃねーか。認めてやる、俺の負けだ。」
「もう終わりなの?」
「勘違いするなよ。スピードでは、お前に勝てないと言ったまでだ。」
パワーでは、サーシャ様に勝ち目はありません。
しかし、当たらなければどうってことはないでしょう。
「もう、これは要らんな。」
アランは、何を思ったのか剣を投げ捨てました。
「これは少しまずい展開ですね。」
意味深な呟きをしたのは、フォックスでした。
「サーシャ様は序盤からパープルアイズを発動させていますが、アランはまだ本気ではありません。」
確かにそうです。
フルガイアの民には何かしらの能力が備わっています。
その能力がサーシャ様にとってはパープルアイズなのです。
アランは、まだ通常の状態。
ここから、どんなパワーアップをしてくるのかで勝敗が決するでしょう。
「アランの覚醒は、サーシャ様にとって相性が悪い。奴を覚醒させる前にしとめるしか手立ては、ありません。」
フォックスは実際、昔からアランのことを知っています。
その彼が言うのですから、きっとそうなのでしょう。
ですが、サーシャ様を舐めてもらっては困ります。
「デビルロック!」
アランの全身を覆うように岩盤が包みこんでいきます。
そしてアランは、まるで岩の鎧を纏ったような出立ちに変貌を遂げました。
「それがあなたの能力ってわけね。」
「そういうこと。残念だが、こうなった俺を倒すことは不可能だぜ、サーシャ。」
防御力は高そうですね。
しかし、ただでさえスピードで劣っているのに、あんな重そうな物を装備しちゃったら、サーシャ様に弄ばれちゃいますよ。
「それはどうかしら。」
サーシャ様は、スピードでアランに揺さぶりをかけながら、攻撃をかけていきます。
一方のアランはこれまでとは違い、その場を一歩たりとも動こうとはしませんでした。
「もらった!」
サーシャ様の剣がアランに突き刺さりました……いや、刺さったと思われた剣先は、アランの厚い岩に弾き返されてしまいました。
「なかなか、いい攻撃だったな。だが、俺には届かないぜ。」
「まだまだ!」
サーシャ様の攻めは、まるで嵐の様でした。
自慢のスピードに乗って、攻撃の手数を増やしていきます。
その攻撃が、次々にヒットしているのですが、アランの分厚い岩を破ることができません。
「だから、効かねえって言ってるだろ!」
アランのパンチがサーシャ様を捉えました。
その衝撃は凄まじく、サーシャ様は吹き飛ばされてしまいました。
ただのパンチであの威力は反則に近いです。
これは、選手交代したほうがよさそうですね。
「私がいこう。」
レジェスも、そう感じたらしく、自ら名乗りを上げました。
「引っ込んでて、レジェス。やっと面白くなってきたところなの。」
「し、しかし……分かった。」
サーシャ様の強がりでしょうか?
それとも何か策でもあるのでしょうか。
「いいね、その心意気は認めてやるが、仲間に変わってもらったほうがいいんじゃねえか?」
敵ではありますが、これはアランの言う通りかもしれません。
今のサーシャ様にあるのは、スピードだけです。
魔法剣も通じない、パワーでもアランの岩を砕く力も持ち合わせていません――!?
この時、僕は一筋の光明を見つけました。
パワーがなければ作ればいい。
攻撃の付加価値としての魔法剣は効かないとしても、剣を強化する補助的な魔法剣ならいけるはずです。
もしかして、サーシャ様はそのことに気づいているのかもしれません。
「大丈夫よ。私はあなたに勝てるわ。」
「ほう、どうやって勝つつもりだ?」
「あなたの弱点は、その右の脇付近にある、そこよね。」
サーシャ様は、アランを指差しながら言いました。
「なるほどな。そのパープルアイズには魔力の流れを見抜く、そんな能力があるのか。」
そういえば、この場所を発見する時も魔力の流れを見つけていましたね。
それを応用して戦いに役立てるとは、サーシャ様にも臨機応変が身に付いてきましたね。
「だが、お前に貫けるのか?簡単にはいかないぜ。」
「分かってる。その小さな弱点は、針の穴に糸を通すようなもの――だけど、私はやれる。」
「いいね。かかってこい!」
「アイアンニードル!」
サーシャ様は遂に魔法剣を使いました。
その剣、スパロウティアズは極細の針のように変化しました。
あれほど細い剣先で貫かなければならない弱点というのは、おそらく相当に難易度が高いはず。
しかも、相手は完全防御スタイル。
何か策がなければ難しい状況ですね。
サーシャ様は、これまで同様スピードでアランを撹乱しながら、攻撃を仕掛けていきます。
しかし、結果は同じでした。
だが、サーシャ様はアランのパンチに何度となく吹き飛ばされながらも立ち向かっていきます。
どうやら、策は無さそうです。
これは、早いとこレジェスに代わってもらったほうが良いかもしれません。
「どうした、ほら俺の弱点はここだぜ。」
アランは自分の弱点を指差しながら、余裕を見せます。
「ハァハァ――まったく、女の子相手にパンチするなんて――!」
サーシャ様もかなり追い詰められてしまいしたね。
次の攻撃を食らったら、終わりかもしれません。
何とか、ここを耐えて好機を伺うしか手がない。
「いいこと思いついちゃった。」
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