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連合軍出撃
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「マスターゼロ、なぜグリフォンブルーまでもが援軍を?」
どうやらレジェスは、この件について何も知らなかった様子ですね。
「まあ簡単に言えば金を払った。グリフォンブルーは以前より、戦場に傭兵として兵を派遣するという事業をやっていたのを、知っていたからな。むろん、私はグリフォンブルーの元将軍だから、特別に値引きしてもらった。」
確かに、そういう契約ならば話が早くて助かりますからね。
後々聞いた話では、グリフォンブルーが傭兵として兵を出すのは、勝てる見込みのある戦が主に対象のようです。
すると、今回は勝ち戦と見越しての参戦になるのでしょうか?
「それでいったい誰を呼んだのです?」
「ディルクじゃ。」
ディルク?
そういえばこの間、ブレイズで出会ったグリフォンブルーの将軍が、確かそんな名前だったはずです。
「ディルクか。懐かしいな。あいつも将軍になって日が浅いので、良い経験になるだろう。それを踏まえての指名とは、マスターゼロも、なかなか気が利いていますな。」
「そうだな。まあ、六人の将軍の中でも一番安く契約が出来たのでな。ワハハハ。」
「金額の問題ですか……。」
こうして、強力な援軍を手にしたフェイトフル・リアルムは、その日の出陣を取り止め、翌日に連合軍で総攻撃へ出る作戦へと切り替えました。
――翌日。
「いよいよじゃな。」
「ええ、あのレト大陸の覇者、キリエスとの戦争ですから少し緊張しますけどね。」
オベリンさんと、その横に立っているのは、ブレイズの若き皇子ネリさんです。
彼はブレイズの次期国王と言われています。
ただ大きな戦は今回が初めてのようで少し固くなっているようですね。
「姉からは、敵の大将首をとってこいと言われましたが、この戦い、簡単にはいかないでしょうね。」
あのカモミール姫なら言い兼ねませんね。
しかし、ネリさんの言う通り、いくらブレイズとグリフォンブルーの援軍を得たといっても、これでやっとキリエスとの兵力差と肩を並べられたかどうかといったところです。
浮かれていては、どうなるか分かりません。
気を引き締めなければキリエスに食われてしまいますよ。
「よし、では私も参戦しよう。私がキリエスを殲滅してみせようぞ。」
「いや、レジェス、それから君らはここで待っているんだ。」
「しかし、マスターゼロ、少しでも戦力があった方がよいのでは?」
「気持ちは分かるが、お前たちにはまだ次の戦いが待っている。フード平原までの道は何とか切り開いてみせる。」
パークさんの言う通り、これは僕らの戦いではありませんからね。
ここで大人しく戦況を見守っていましょう。
「では、ブレイズの王子よ、参るとしましょうか。」
「承知しました、オベリン様。」
「パークよ、グリフォンブルーへの連絡はお主に任せる。時を見て、一斉に攻撃を仕掛けるぞ。」
ついに決戦の時です。
これほどの大戦はなかなかお目にかかれません。
僕らは、このジャスティス城から皆の武運を祈りましょう。
この日は早朝から、連合軍が慌ただしく支度をしていました。
一方のキリエス側は、フェイトフル・リアルムの鉄壁の城壁を落としたことで少しの油断がありました。
しかし、ブレイズとグリフォンブルーの参戦の報告を受け、キリエス側も臨戦態勢を着々と整えつつありました。
「よいか。この戦、絶対に負けられぬ。負ければ、このレト大陸に我々の居場所はない。それに、加勢に来てくれたブレイズやグリフォンブルーの皆にも顔向けできん。死ぬ覚悟で臨むのだ。――フェイトフル・リアルムよ――突撃!」
「おーっ!!」
オベリンさんの号令で、フェイトフル・リアルム軍は、一斉に城壁へ向けて進撃を開始いたしました。
「皆、聞いてくれ。我々の仕事は、フェイトフル・リアルムへの支援だ。それにはまず、あの城壁を奪還することが最優先。臆するな、我々は誇り高きブレイズの戦士だ。――ゆくぞ!」
ネリ皇子は、若いながらも兵たちを上手くまとめ上げているようです。
ブレイズの兵たちの士気も高いようで、これは期待してよさそうです。
そして、最後はグリフォンブルーです。
この国に関しては、僕は詳しいことは知りませんが、話しによると小国ながら、あの大国ブレイズでさえも武力では敵わないのでは、と噂されています。
どんな戦いを見せてくれるのでしょうか、楽しみです。
「フェイトフル・リアルムとブレイズは動いたか。私たちはキリエスを背後から攻める。慣れぬレト大陸での戦いに加え相手は、あのキリエスだ。簡単にはいかぬだろうが、いつも通り戦えば問題はない。――グリフォンブルーの戦いを見せてやれ!」
兵力は少ないですが、逆に敵に奇襲をかけるには丁度よいかもしれません。
グリフォンブルーは機動力を活かした戦闘を得意としているのかもしれませんね。
こうしてフェイトフル・リアルムの城壁へと全軍が集結し、激しい戦闘が始まろうとしています。
僕は城の高台から、ごくりと唾を飲み込み、歴史に残るであろう戦いを目撃するのでした。
どうやらレジェスは、この件について何も知らなかった様子ですね。
「まあ簡単に言えば金を払った。グリフォンブルーは以前より、戦場に傭兵として兵を派遣するという事業をやっていたのを、知っていたからな。むろん、私はグリフォンブルーの元将軍だから、特別に値引きしてもらった。」
確かに、そういう契約ならば話が早くて助かりますからね。
後々聞いた話では、グリフォンブルーが傭兵として兵を出すのは、勝てる見込みのある戦が主に対象のようです。
すると、今回は勝ち戦と見越しての参戦になるのでしょうか?
「それでいったい誰を呼んだのです?」
「ディルクじゃ。」
ディルク?
そういえばこの間、ブレイズで出会ったグリフォンブルーの将軍が、確かそんな名前だったはずです。
「ディルクか。懐かしいな。あいつも将軍になって日が浅いので、良い経験になるだろう。それを踏まえての指名とは、マスターゼロも、なかなか気が利いていますな。」
「そうだな。まあ、六人の将軍の中でも一番安く契約が出来たのでな。ワハハハ。」
「金額の問題ですか……。」
こうして、強力な援軍を手にしたフェイトフル・リアルムは、その日の出陣を取り止め、翌日に連合軍で総攻撃へ出る作戦へと切り替えました。
――翌日。
「いよいよじゃな。」
「ええ、あのレト大陸の覇者、キリエスとの戦争ですから少し緊張しますけどね。」
オベリンさんと、その横に立っているのは、ブレイズの若き皇子ネリさんです。
彼はブレイズの次期国王と言われています。
ただ大きな戦は今回が初めてのようで少し固くなっているようですね。
「姉からは、敵の大将首をとってこいと言われましたが、この戦い、簡単にはいかないでしょうね。」
あのカモミール姫なら言い兼ねませんね。
しかし、ネリさんの言う通り、いくらブレイズとグリフォンブルーの援軍を得たといっても、これでやっとキリエスとの兵力差と肩を並べられたかどうかといったところです。
浮かれていては、どうなるか分かりません。
気を引き締めなければキリエスに食われてしまいますよ。
「よし、では私も参戦しよう。私がキリエスを殲滅してみせようぞ。」
「いや、レジェス、それから君らはここで待っているんだ。」
「しかし、マスターゼロ、少しでも戦力があった方がよいのでは?」
「気持ちは分かるが、お前たちにはまだ次の戦いが待っている。フード平原までの道は何とか切り開いてみせる。」
パークさんの言う通り、これは僕らの戦いではありませんからね。
ここで大人しく戦況を見守っていましょう。
「では、ブレイズの王子よ、参るとしましょうか。」
「承知しました、オベリン様。」
「パークよ、グリフォンブルーへの連絡はお主に任せる。時を見て、一斉に攻撃を仕掛けるぞ。」
ついに決戦の時です。
これほどの大戦はなかなかお目にかかれません。
僕らは、このジャスティス城から皆の武運を祈りましょう。
この日は早朝から、連合軍が慌ただしく支度をしていました。
一方のキリエス側は、フェイトフル・リアルムの鉄壁の城壁を落としたことで少しの油断がありました。
しかし、ブレイズとグリフォンブルーの参戦の報告を受け、キリエス側も臨戦態勢を着々と整えつつありました。
「よいか。この戦、絶対に負けられぬ。負ければ、このレト大陸に我々の居場所はない。それに、加勢に来てくれたブレイズやグリフォンブルーの皆にも顔向けできん。死ぬ覚悟で臨むのだ。――フェイトフル・リアルムよ――突撃!」
「おーっ!!」
オベリンさんの号令で、フェイトフル・リアルム軍は、一斉に城壁へ向けて進撃を開始いたしました。
「皆、聞いてくれ。我々の仕事は、フェイトフル・リアルムへの支援だ。それにはまず、あの城壁を奪還することが最優先。臆するな、我々は誇り高きブレイズの戦士だ。――ゆくぞ!」
ネリ皇子は、若いながらも兵たちを上手くまとめ上げているようです。
ブレイズの兵たちの士気も高いようで、これは期待してよさそうです。
そして、最後はグリフォンブルーです。
この国に関しては、僕は詳しいことは知りませんが、話しによると小国ながら、あの大国ブレイズでさえも武力では敵わないのでは、と噂されています。
どんな戦いを見せてくれるのでしょうか、楽しみです。
「フェイトフル・リアルムとブレイズは動いたか。私たちはキリエスを背後から攻める。慣れぬレト大陸での戦いに加え相手は、あのキリエスだ。簡単にはいかぬだろうが、いつも通り戦えば問題はない。――グリフォンブルーの戦いを見せてやれ!」
兵力は少ないですが、逆に敵に奇襲をかけるには丁度よいかもしれません。
グリフォンブルーは機動力を活かした戦闘を得意としているのかもしれませんね。
こうしてフェイトフル・リアルムの城壁へと全軍が集結し、激しい戦闘が始まろうとしています。
僕は城の高台から、ごくりと唾を飲み込み、歴史に残るであろう戦いを目撃するのでした。
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