上 下
2 / 5

2話

しおりを挟む
「知人? 知人って誰なんだい?」
「以前晩餐会に一緒に参加していた彼よ」
「ぶっふぉ!!」
「……大丈夫?」
「あ……あ、あぁ。うん。大丈夫」

 反応が謎。しかし重要なのはそこではない。外出が本当に研修だったのか、ということの方が、ずっと重要なことである。彼が発した謎の声など、今はどうでもいいことだ。

「次の研修、明後日よね。私も同行して構わないかしら。研修の邪魔はしないから」
「なっ……無理だよ! そんなの!」

 スカイは目をぱちぱちさせながら焦ったように大きな声を返してくる。

「どうして?」
「研修に婚約者を連れていくなんて! 変だと思われるよ!」

 確かに珍しいことだろう。だが、研修に入っていって余計なことをするわけではない。同行するだけなら邪魔にはならないはずだ。研修の間は離れていれば良いのだから。それに、もし何か言われたとしたら、事情を説明すればいい。

「なら私が直接説明するわ」
「ま、まままま、待って! か、勝手にはな、話を、進めないでよっ!」
「……何を慌てているの?」

 ただ同行するだけ。たったそれだけのことなのに、こんなに慌てて断るなんて、不自然としか言い様がない。それに、慌てているということがやましいことがあるということを証明してしまっているのではないか。やましいことがないのなら、断るにしてもさらりと断れば良いのだから。

「安心して、悪くは言わせないわ。事情の説明が必要なら私が説明するから大丈夫」
「う、うぅ……酷い……」
「それとも貴方が証明する? やましいことは何もない、本当に研修だって」
「研修だよ! 勘違いしないでよ、研修だよ!」

 必死なわりに内容が伴っていないから怪しいのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

さようなら、あなたとはもうお別れです

四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。 幸せになれると思っていた。 そう夢みていたのだ。 しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。

義母の秘密、ばらしてしまいます!

四季
恋愛
私の母は、私がまだ小さい頃に、病気によって亡くなってしまった。 それによって落ち込んでいた父の前に現れた一人の女性は、父を励まし、いつしか親しくなっていて。気づけば彼女は、私の義母になっていた。 けれど、彼女には、秘密があって……?

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう

四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。 親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。 しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

絶世の美女オフィーリア、復讐する

四季
恋愛
絶世の美女オフィーリアは婚約者から理不尽に拒まれた。 そんな彼女の復讐とは……?

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

執着はありません。婚約者の座、譲りますよ

四季
恋愛
ニーナには婚約者がいる。 カインという青年である。 彼は周囲の人たちにはとても親切だが、実は裏の顔があって……。

処理中です...