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前編
しおりを挟む「ま、もういっか。辛いし。全部終わりにしてしまおっかな」
何年も前から親しくしていた婚約者オードレイズから婚約破棄を告げられたうえ他の女に乗り換えたのだと明かされた日の晩、私は、家の近くに位置する女神が棲むと言われている湖に飛び込んだ。
この世とお別れするためである。
未練なんてもうなかった。
その時は投げやりになっていて、だから、もうどうでもいいこのまま消えてしまおうというくらいに思っていたのだ。
だが、湖に棲む女神は、私が死ぬことを許しはしなかった。
『貴女はまだ死んではいけません』
意識が途切れる直前、そんな声を聞いた。
『これから貴女には幸福が訪れるのです。ですからもう少し頑張って生きてください。必ず、貴女は幸せになりますしなれます。ですから、生きることを諦めないで』
――そして私は目覚める。
「気がついたの!? 大丈夫!?」
「あ……か、母さん……? 私、一体……」
「倒れていたのよ、湖の畔に。町の人から連絡があって、それで、駆けつけて様子を見ていたの」
徐々に思い出してくる。
そうだ、私、死のうとしていたんだ……。
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