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 婚約者エメルは私に一度も「愛してる」と言ってくれたことはない。いや、それどころか、好きだとかその程度の言葉さえも。何なら微かにでも気持ちが伝わってくるような行動すらほとんどなくて。

 エメルはいつも私なんてどうでもいいみたいだった。

 でも、それはそれで納得していたのだ――なんせ私はただの平凡な女だから。

 際立って美しいわけではない。可愛さ爆発なわけでもない。愛想が最高に良いわけでもないし、不器用だし、女性としての奉仕の心が特別強いわけでもない。

 だからそれほど愛されなくても仕方ない。

 そう思っていた。

 ――その日までは。

「お姉さま、地味だし愛想ないし低能だし、楽しくないでしょ?」
「そうだな」
「あたしの方がいいでしょお?」
「ああ」
「飽きちゃったんじゃない? お姉さまには」
「飽きたも何も、最初からどうでもいい存在だ」
「あっはははぁ! 可哀想なお姉さまぁ! どうでもいい存在、ってぇ~、さすがに酷すぎぃっ」

 その日私は路上でいちゃつく男女の目撃――で、その二人というのが、エメルと私の妹だったのだ。

 それを見た瞬間、すべてを悟った気がした。

 そうか、そういうことか。

 かなり納得できた。
 しっくりきたような感覚があって。

 翌日、私は死を選ぶことにした。

 ――しかし私は生き延びてしまった。
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