いちゃつきを見せつけて楽しいですか?

四季

文字の大きさ
上 下
1 / 5

1話

しおりを挟む
 それなりに大きな力を持つ王国に第一王女として生まれた私——リルリナ・グランシェは、目の前で繰り広げられる謎茶番に言葉を失っている。

「あーん、かっこいーい! フランク王子、今日も素敵過ぎますぅー!」
「はは。そうかい。いつもそう言っているね」

 フランク王子と呼ばれる彼は、隣国の第一王子だ。

 彼の国は私の祖国より小さい国。経済の規模、軍事力など、すべてにおいて彼の国の方がこじんまりとしている。が、私の祖国との関係は悪くない。隣国にしては仲が良い。

 そういう事情もあって私は彼と婚約することとなったのだが、婚約してからというもの、一人の女が彼につきまとうようになった。

「本当のことですもの! 本当のことを言ってはいけませんか?」

 フランクにつきまとい、常に彼を褒め続ける女。彼女は彼の国の貴族の令嬢らしい。だが貴族の令嬢にしてはかなり知的でない。聡明さが感じられない。

 ただ、フランクにとっては、誰よりも都合が良い存在のようだ。
 彼は彼女といると情けないくらいヘラヘラしている。

「いや、そんなことを言うつもりはないよ。僕が魅力的であることは事実だしね」
「ですよね、良かったですぅ! うっふふ、とってもかっこいいですぅー!」
「マリネ、君は本当によく分かっているね。女性にしては賢いね」
「えぇー? 女性にしては、って、酷いですぅー」

 最初は「以前から親しかったのだろうか」とも考えたが、フランクの身の回りの世話をしている人たちによるとそういうわけではないらしい。貴族の令嬢マリネがフランクに絡むようになったのは最近のことだそうだ。

 彼女の企みは何なのだろう。

 私と彼の婚約を潰すことなのだろうか。

 できればそんなことは考えたくない。他人を悪く捉えたくはない。が、今回に限っては、どうしても悪く受け取らざるを得ないのだ。彼女の言動が明らかに普通でないから。不自然さの塊だから。

「あの、フランク王子」
「あぁ。いたんだ、リルリナ王女」

 何だその態度。

 呼び出しておいていちゃいちゃを見せつけ、さらに「いたんだ」などと言うとは、無礼にもほどがある。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖夜は愛人と過ごしたい?それなら、こちらにも考えがあります

法華
恋愛
貴族の令嬢であるメイシアは、親同士の政略によってランディと婚約していた。年明けには結婚が迫っているというのに、ランディは準備もせず愛人と過ごしてばかり。そんな中迎えたクリスマス、ランディはメイシアが懸命に用意した互いの親族を招いてのパーティーをすっぽかし、愛人と過ごすと言い出して......。 そんなに協力する気がないなら、こちらにも考えがあります。最高のプレゼントをご用意しましょう。 ※四話完結

元婚約者は、ずっと努力してきた私よりも妹を選んだようです

法華
恋愛
貴族ライルは、婚約者アイーダに婚約破棄を宣告し、アイーダの妹であるメイと婚約する道を選ぶ。 だが、アイーダが彼のためにずっと努力してきたことをライルは知らず、没落の道をたどることに。 一方アイーダの元には、これまで手が出せずにいた他の貴族たちから、たくさんのアプローチが贈られるのであった。 ※三話完結

私より幼馴染を大事にする男と婚約破棄したら、王子様と結婚して幸せになれました

法華
恋愛
リゼ・リィンカーネーションの婚約者オッズ卿は、彼女より幼馴染からの呼び出しを優先してばかり。それどころか、まるで恋人同士かのようにいちゃついている。リゼはそんな婚約者に愛想を尽かして、婚約破棄を突きつける。行き場所のない彼女を拾ったのは、なんとこの国の第三王子だった。彼のもとでリゼは精神を立て直し、愛を育んでいく。 ※五話完結

とある断罪劇の一夜

雪菊
恋愛
公爵令嬢エカテリーナは卒業パーティーで婚約者の第二王子から婚約破棄宣言された。 しかしこれは予定通り。 学園入学時に前世の記憶を取り戻した彼女はこの世界がゲームの世界であり自分が悪役令嬢であることに気づいたのだ。 だから対策もばっちり。準備万端で断罪を迎え撃つ。 現実のものとは一切関係のない架空のお話です。 初投稿作品です。短編予定です。 誤字脱字矛盾などありましたらこっそり教えてください。

さようならお姉様、辺境伯サマはいただきます

夜桜
恋愛
 令嬢アリスとアイリスは双子の姉妹。  アリスは辺境伯エルヴィスと婚約を結んでいた。けれど、姉であるアイリスが仕組み、婚約を破棄させる。エルヴィスをモノにしたアイリスは、妹のアリスを氷の大地に捨てた。死んだと思われたアリスだったが……。

乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……

三葉 空
恋愛
「ごめん、シアラ。婚約破棄ってことで良いかな?」  ヘラヘラと情けない顔で言われる私は、公爵令嬢のシアラ・マークレイと申します。そして、私に婚約破棄を言い渡すのはこの国の王太子、ホリミック・ストラティス様です。  何でも話を聞く所によると、伯爵令嬢のマミ・ミューズレイに首ったけになってしまったそうな。お気持ちは分かります。あの女の乳のデカさは有名ですから。  えっ? もう既に男女の事を終えて、子供も出来てしまったと? 本当は後で国王と王妃が直々に詫びに来てくれるのだけど、手っ取り早く自分の口から伝えてしまいたかったですって? 本当に、自分勝手、ワガママなお方ですね。  正直、そちらから頼んで来ておいて、そんな一方的に婚約破棄を言い渡されたこと自体は腹が立ちますが、あなたという男に一切の未練はありません。なぜなら、あまりにもバカだから。  どうぞ、バカ同士でせいぜい幸せになって下さい。私は特に復讐するつもりはありませんから……と思っていたら、元王太子で、そのバカ王太子よりも有能なお兄様がご帰還されて、私を気に入って下さって……何だか、復讐できちゃいそうなんですけど?

望まない婚約破棄と望まない崩壊

岡暁舟
恋愛
誰も婚約破棄を望まない。そして、誰も帝国の崩壊を望まない。でも、少しほころびが出来てしまうと、簡単に崩れてしまう。令嬢だけど、本当は聖女。その力、無限大。前編、後編の2部構成です。

婚約破棄ですか? では、この家から出て行ってください

八代奏多
恋愛
 伯爵令嬢で次期伯爵になることが決まっているイルシア・グレイヴは、自らが主催したパーティーで婚約破棄を告げられてしまった。  元、婚約者の子爵令息アドルフハークスはイルシアの行動を責め、しまいには家から出て行けと言うが……。  出ていくのは、貴方の方ですわよ? ※カクヨム様でも公開しております。

処理中です...