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第四回「働く人と楽しむ人」
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あたし、ハピネス・ピース!
今はクライネくんと一緒にいるの!
クライネくんはよく喋る方ではないよ。どちらかというと、明るい方でもないとは思うの。でもね、あたしはそんなクライネくんが嫌いじゃないんだ。
喋りが少ないってことは、それだけあたしの話を聞いてくれるってことだしね。
「編み物……も、もし……良かっ……たらしますか……?」
「うん! やってみたい!」
「ほ、本当です……か……?」
「うん! あー、でも、あたしにできるかなー」
多趣味なのも、クライネくんの良いところ。
小さい頃から店を手伝っていたから、あたしには、それ以外の世界はなかったの。でも、彼に出会ってから、他の物事にも詳しくなったの。それは全部、彼がいろんなことを教えてくれたからで。
つまり、彼がいたからこそ、今のあたしがあるってことだね!
「で、で……はハピネスさ……いや違ったハピネスちゃ……ん。今日は……あ、編み……物につい……て……説明します」
彼は少しづつゆっくり話すから、説明の時は少し聞き取りづらいかも。でも、そんなのは小さいこと。あたしは気にしないよ。一回で分からなければ、聞き直せばいいだけだしね。
「これ……とこれを使っ……て……、編ん……でいきます……」
「へぇー。面白いねっ」
「は、はは、ははは……良かったです……」
クライネくん、楽しそう。
今日遊びに来て良かったかも。
———
僕の名前は、クライネ・イツモです。
せっかく会いに来てくれたハピネスさんを退屈させてしまってはいけないので、編み物のお話を振ってみました。すると意外と食いついてきてくれまして。僕は今、幸せです。
「さ、早速……やってみ……ますか……?」
「うん! やってみる!」
編み針を手渡す瞬間、ほんの一二秒ほど、お互いの指が触れました。
ハピネスさんの指に触れる日が来るなんて。
夢のようで、とても、現実とは思えません。
世にはこんなにも幸せなことがあったのか、と、僕は一人、指が触れ合った感動を噛み締めます。
「あれー? これ、おかしくなっちゃったみたい!」
「あ、はい……そこは、こ、こう……」
「おぉ! ホント! 凄いっ」
僕は人より多趣味な方です。
特に、家の敷地内で行える趣味は星の数ほどあります。
水彩画や油絵など、絵を描くこと。
家の中にある銅像を参考に、彫刻を楽しむこと。
家の西棟に位置する図書館から持ってきた本を読むこと。
紙三枚程度の短編から三千ページはある長編まで、様々な文学作品を書き上げること。
一階の客室にある水槽を眺め、生き物を観察すること。
地下に広がる規模の大きい風呂にゆっくり浸かること。
遠方から取り寄せた植物の香りに癒やされ、誰にも邪魔されることのないゆったりとした時間を過ごすこと。
楽器を演奏したり、歌ったりすること。
女性の影を見ながら一人で踊ったりすること。
すべては挙げきれないのでこのくらいにしておきますが。とにかく多趣味なのです、僕は。
「クライネくん凄い! 編み物得意なんだねっ」
けれど、一番僕を幸せにしてくれた趣味は、結局編み物でした。
なぜなら、編み物だけは、ハピネスさんの指に触れさせてくれたからです。
ー終わりー
今はクライネくんと一緒にいるの!
クライネくんはよく喋る方ではないよ。どちらかというと、明るい方でもないとは思うの。でもね、あたしはそんなクライネくんが嫌いじゃないんだ。
喋りが少ないってことは、それだけあたしの話を聞いてくれるってことだしね。
「編み物……も、もし……良かっ……たらしますか……?」
「うん! やってみたい!」
「ほ、本当です……か……?」
「うん! あー、でも、あたしにできるかなー」
多趣味なのも、クライネくんの良いところ。
小さい頃から店を手伝っていたから、あたしには、それ以外の世界はなかったの。でも、彼に出会ってから、他の物事にも詳しくなったの。それは全部、彼がいろんなことを教えてくれたからで。
つまり、彼がいたからこそ、今のあたしがあるってことだね!
「で、で……はハピネスさ……いや違ったハピネスちゃ……ん。今日は……あ、編み……物につい……て……説明します」
彼は少しづつゆっくり話すから、説明の時は少し聞き取りづらいかも。でも、そんなのは小さいこと。あたしは気にしないよ。一回で分からなければ、聞き直せばいいだけだしね。
「これ……とこれを使っ……て……、編ん……でいきます……」
「へぇー。面白いねっ」
「は、はは、ははは……良かったです……」
クライネくん、楽しそう。
今日遊びに来て良かったかも。
———
僕の名前は、クライネ・イツモです。
せっかく会いに来てくれたハピネスさんを退屈させてしまってはいけないので、編み物のお話を振ってみました。すると意外と食いついてきてくれまして。僕は今、幸せです。
「さ、早速……やってみ……ますか……?」
「うん! やってみる!」
編み針を手渡す瞬間、ほんの一二秒ほど、お互いの指が触れました。
ハピネスさんの指に触れる日が来るなんて。
夢のようで、とても、現実とは思えません。
世にはこんなにも幸せなことがあったのか、と、僕は一人、指が触れ合った感動を噛み締めます。
「あれー? これ、おかしくなっちゃったみたい!」
「あ、はい……そこは、こ、こう……」
「おぉ! ホント! 凄いっ」
僕は人より多趣味な方です。
特に、家の敷地内で行える趣味は星の数ほどあります。
水彩画や油絵など、絵を描くこと。
家の中にある銅像を参考に、彫刻を楽しむこと。
家の西棟に位置する図書館から持ってきた本を読むこと。
紙三枚程度の短編から三千ページはある長編まで、様々な文学作品を書き上げること。
一階の客室にある水槽を眺め、生き物を観察すること。
地下に広がる規模の大きい風呂にゆっくり浸かること。
遠方から取り寄せた植物の香りに癒やされ、誰にも邪魔されることのないゆったりとした時間を過ごすこと。
楽器を演奏したり、歌ったりすること。
女性の影を見ながら一人で踊ったりすること。
すべては挙げきれないのでこのくらいにしておきますが。とにかく多趣味なのです、僕は。
「クライネくん凄い! 編み物得意なんだねっ」
けれど、一番僕を幸せにしてくれた趣味は、結局編み物でした。
なぜなら、編み物だけは、ハピネスさんの指に触れさせてくれたからです。
ー終わりー
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