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『愛され令嬢、女にそそのかされた婚約者から婚約破棄を告げられるも幸せになる!』
「エリーは本当に綺麗ね」
「きっと素敵なお嫁さんになるわぁ~」
「女神のよう」
「ほんと好き。愛してる。同性でも愛したいくらい好き好き」
良家の一人娘であるエリーは美しい容姿と綺麗な心の持ち主で、親からも親戚からも、皆から愛され称賛されて育った。
だがそんな彼女を良く思わない者もいて。
婚約者ベーガラー、彼はエリーの素晴らしさを認めたくないという心を持っていた。
そのため彼は定期的にエリーを呼び出しては罠にはめるようなことをして恥をかかせようとするといったことを繰り返していた。
もっとも、エリーはそのたびに味方の力を借りて乗り越えるので恥をかかせることはできず、彼の企みは無意味に終わるのだが。
そんなベーガラーには実は愛している女性がいる。
その名はエリミーネラ。
彼女はエリーとは比べ物にならない家柄の出だが、ベーガラーからすると自分より下の女といるという安心感のようなものがあったようで気に入っていた。
そんなベーガラーはある時エリミーネラから「あんな女、早く切り捨てて!」と迫られ、ついに覚悟を決めなくてはならないこととなる。
「エリー、君との婚約は破棄する」
ベーガラーは人が多くいる公園へエリーを呼び出すとそんなことを宣言する。
「え……」
「もう君とはやっていかない。いいな? じゃ、そういうことだから。永遠に……さよなら」
こうして終わりを告げたベーガラーだが。
「何あいつ、あり得なーい」
「エリーちゃんにあんなこと言うなんてサイテー」
「酷いわねぇ」
「ま、もともとつりあってねーけどな」
「エリー様にはあのような男は相応しくありませんわ!」
通行人からはベーガラーを批判するような声が多く出ていた。
たまたまその場に居合わせたベーガラーの勤め先の社長は一部始終を目にして怒り、ベーガラーをクビにした。
一方的過ぎる婚約破棄という問題行動によって失職したベーガラーは、社会的な評判も地に堕とすこととなり、そしてそれによってエリミーネラからも「あり得ない! 今のあんたみたいな男、価値なし!」と言われ捨てられた。
こうしてベーガラーはいろんな意味で終わったのだった。
ただ、エリミーネラのまた、その後痛い目に遭うこととなる。
というのも、エリーの父にベーガラーとの関係を暴かれ償いの金を支払わされることとなったのだ。
ベーガラーも、エリミーネラも、結局穏やかな日常は手に入れられなかった。
一方エリーはというと、後に旧王族の青年と結婚した。
とても裕福な家庭で育ってはいるもののきちんとした教育を受け凛とした青年に育っていたその人はエリーにお似合いの男性であった。
エリーは幸せに暮らしている。
結婚した今でも皆は口を揃えて「彼女は素晴らしい女性だ」「女神のようだ」などと言う。それほどの魅力を彼女は備えているのだ。夫はもちろん、周囲の人たちの心も、老若男女問わずとらえて離さないエリーであった。
◆終わり◆
『私は彼を愛していました。けれど彼は私を愛してはいなかったのかもしれません。……婚約破棄、その時は突然やって来ました。』
貴方を愛していた。
貴方を思っていた。
そうよ、私はずっと……。
「君との婚約だが、破棄とすることにした」
婚約者アイマフが告げてきた婚約破棄。
それは恐ろしいほど冷ややかなものであった。
優しさ、情、人としての最低限の思いやり。どれもない。その時の彼には、終わりを告げた時の彼は、そのすべてを手にしていなかった。自分の感情だけで彼は動いていた。
「いいな?」
「どうして……」
「簡単なこと。君のことなんてもうどうでもよくなかったから、ただそれだけだ」
アイマフがこれほどまでに心ない人だとは知らなかった。
だからこそショックで。
何も言えないほどに固まってしまった。
「君はせいぜいもっと似合った人と結ばれるがいい。君程度の女性に俺なんて……もったいなすぎるだろう? はは。そういうものだよ。結婚は、な? 似たような程度の者同士でするのが一番良いものなんだよ?」
こうしては私たちの関係は終わる。
彼が切り捨てたのだ。
その無情な刃で。
私の心が紅をこぼしていても、彼は気づかない。
◆
婚約破棄から少しして、アイマフはこの世を去った。
何でも、酒場で知り合った女性と一夜で深い仲にまで発展したそうなのだがその女性には実は婚約者がいたそうで、その婚約者に夜のことを知られ呼び出されて殴る蹴るの暴行を加えられたらしく。その際に負った怪我によってアイマフは衰弱、そこに風邪をこじらせるという悲劇もあわさってしまい、落命するに至ったようである。
ある意味騙されたとも言えるのか……。
だとすれば気の毒ではあるが……。
でも、私の立場から言わせてもらうなら、アイマフは可哀想ではない。
彼は人を平気で傷つけられる人だ。
だからたとえ理不尽に傷つけられたとしても自業自得。
すべては彼の行いが引き寄せたこと、そうとしか思えないし思わない。
彼が先日私に何をしたか?
それを思えば、私は彼の味方はできないのである。
◆
アイマフの死から一年半ほどが経ち、私は、親の紹介で知り合った大商人の子である男性と結婚した。
今は公私共に彼のパートナーとして活動している。
仕事のことに関してはまだまだ駆け出しだが、彼やその周囲に色々な面で支えられ、今のところは順調に動けていると感じる。
彼のため、そして、自分のためにも。
より高みを目指して。
日々学び働いていきたい。
それが二人の明るい未来のためになることだと知っているから。
◆終わり◆
「エリーは本当に綺麗ね」
「きっと素敵なお嫁さんになるわぁ~」
「女神のよう」
「ほんと好き。愛してる。同性でも愛したいくらい好き好き」
良家の一人娘であるエリーは美しい容姿と綺麗な心の持ち主で、親からも親戚からも、皆から愛され称賛されて育った。
だがそんな彼女を良く思わない者もいて。
婚約者ベーガラー、彼はエリーの素晴らしさを認めたくないという心を持っていた。
そのため彼は定期的にエリーを呼び出しては罠にはめるようなことをして恥をかかせようとするといったことを繰り返していた。
もっとも、エリーはそのたびに味方の力を借りて乗り越えるので恥をかかせることはできず、彼の企みは無意味に終わるのだが。
そんなベーガラーには実は愛している女性がいる。
その名はエリミーネラ。
彼女はエリーとは比べ物にならない家柄の出だが、ベーガラーからすると自分より下の女といるという安心感のようなものがあったようで気に入っていた。
そんなベーガラーはある時エリミーネラから「あんな女、早く切り捨てて!」と迫られ、ついに覚悟を決めなくてはならないこととなる。
「エリー、君との婚約は破棄する」
ベーガラーは人が多くいる公園へエリーを呼び出すとそんなことを宣言する。
「え……」
「もう君とはやっていかない。いいな? じゃ、そういうことだから。永遠に……さよなら」
こうして終わりを告げたベーガラーだが。
「何あいつ、あり得なーい」
「エリーちゃんにあんなこと言うなんてサイテー」
「酷いわねぇ」
「ま、もともとつりあってねーけどな」
「エリー様にはあのような男は相応しくありませんわ!」
通行人からはベーガラーを批判するような声が多く出ていた。
たまたまその場に居合わせたベーガラーの勤め先の社長は一部始終を目にして怒り、ベーガラーをクビにした。
一方的過ぎる婚約破棄という問題行動によって失職したベーガラーは、社会的な評判も地に堕とすこととなり、そしてそれによってエリミーネラからも「あり得ない! 今のあんたみたいな男、価値なし!」と言われ捨てられた。
こうしてベーガラーはいろんな意味で終わったのだった。
ただ、エリミーネラのまた、その後痛い目に遭うこととなる。
というのも、エリーの父にベーガラーとの関係を暴かれ償いの金を支払わされることとなったのだ。
ベーガラーも、エリミーネラも、結局穏やかな日常は手に入れられなかった。
一方エリーはというと、後に旧王族の青年と結婚した。
とても裕福な家庭で育ってはいるもののきちんとした教育を受け凛とした青年に育っていたその人はエリーにお似合いの男性であった。
エリーは幸せに暮らしている。
結婚した今でも皆は口を揃えて「彼女は素晴らしい女性だ」「女神のようだ」などと言う。それほどの魅力を彼女は備えているのだ。夫はもちろん、周囲の人たちの心も、老若男女問わずとらえて離さないエリーであった。
◆終わり◆
『私は彼を愛していました。けれど彼は私を愛してはいなかったのかもしれません。……婚約破棄、その時は突然やって来ました。』
貴方を愛していた。
貴方を思っていた。
そうよ、私はずっと……。
「君との婚約だが、破棄とすることにした」
婚約者アイマフが告げてきた婚約破棄。
それは恐ろしいほど冷ややかなものであった。
優しさ、情、人としての最低限の思いやり。どれもない。その時の彼には、終わりを告げた時の彼は、そのすべてを手にしていなかった。自分の感情だけで彼は動いていた。
「いいな?」
「どうして……」
「簡単なこと。君のことなんてもうどうでもよくなかったから、ただそれだけだ」
アイマフがこれほどまでに心ない人だとは知らなかった。
だからこそショックで。
何も言えないほどに固まってしまった。
「君はせいぜいもっと似合った人と結ばれるがいい。君程度の女性に俺なんて……もったいなすぎるだろう? はは。そういうものだよ。結婚は、な? 似たような程度の者同士でするのが一番良いものなんだよ?」
こうしては私たちの関係は終わる。
彼が切り捨てたのだ。
その無情な刃で。
私の心が紅をこぼしていても、彼は気づかない。
◆
婚約破棄から少しして、アイマフはこの世を去った。
何でも、酒場で知り合った女性と一夜で深い仲にまで発展したそうなのだがその女性には実は婚約者がいたそうで、その婚約者に夜のことを知られ呼び出されて殴る蹴るの暴行を加えられたらしく。その際に負った怪我によってアイマフは衰弱、そこに風邪をこじらせるという悲劇もあわさってしまい、落命するに至ったようである。
ある意味騙されたとも言えるのか……。
だとすれば気の毒ではあるが……。
でも、私の立場から言わせてもらうなら、アイマフは可哀想ではない。
彼は人を平気で傷つけられる人だ。
だからたとえ理不尽に傷つけられたとしても自業自得。
すべては彼の行いが引き寄せたこと、そうとしか思えないし思わない。
彼が先日私に何をしたか?
それを思えば、私は彼の味方はできないのである。
◆
アイマフの死から一年半ほどが経ち、私は、親の紹介で知り合った大商人の子である男性と結婚した。
今は公私共に彼のパートナーとして活動している。
仕事のことに関してはまだまだ駆け出しだが、彼やその周囲に色々な面で支えられ、今のところは順調に動けていると感じる。
彼のため、そして、自分のためにも。
より高みを目指して。
日々学び働いていきたい。
それが二人の明るい未来のためになることだと知っているから。
◆終わり◆
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