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「それでさぁ、あいつ! めっちゃおもろかったんだよ! もううけてうけて、さぁ~」

 我が婚約者オーディスはとにかくよく喋る人だ。

 一緒にいる時は大抵彼ばかりが喋っている。

「へぇ、そうだったのね」

 一部の人たちからはオーディスは密かに『おしゃべり人形』と呼ばれ馬鹿にされている――けれども当人はそのことを知らない。

 彼は自分がトークの面白い気の利く男だと思っている。

 まぁもっとも誰しも「裏で変なあだなつけられて馬鹿にされてるよ」なんて本人には言わないわけで、それゆえ、真実に彼が気づく機会なんて今後もほぼないのだろうが。

「あ、そうだ! で、あれのことなんだけど。ああなって、こうなって、で最後にはこーんな風な踊りとか始めてさ!」

 私はいつだって聞き役だ。
 でも他に彼の話を聞いていられる者がいないのであればそれでも構わない。

 私はオーディスの婚約者だ、だからお喋りくらい聞いて差し上げようと思える。

「前に言っていたやつね」
「そうそうそれそれ!」
「それで、どうなったの?」
「あっちに飛んでった!」
「うわぁ……」
「ぎゃっはははは! うっけたー! ぶほわはははは!」
「とんでもなく笑うわね」
「何だよ? 面白くないのかよ?」
「いいえべつにそういうことじゃないわ」

 聞き役として生きてゆくこととなるのなら、私は、それはそれで構わないと思っている。
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