婚約破棄、その後海へ。

四季

文字の大きさ
上 下
1 / 1

婚約破棄、その後海へ。

しおりを挟む
 私は親からも愛され大事にされて育ってきた。

 すべて順調だった。
 いつも笑顔でいられた気がする。

 けれども今日、ついに告げられてしまった。

「君とはやめる」

 婚約者の口から出たのは婚約破棄。

 奈落の底へ落ちるように。
 地獄の口が笑むように。

 私は手にしていたものを失うこととなってしまった。

 負けたくない。
 でも心が折れそうで。
 息をするのが辛い。

 水の迷宮に入り込んでしまったかのようだ。


 ◆


 あれから月日は流れ、私は、船乗りとなっている。

 きっかけは船乗りをしている父の知人の息子に会ったこと。

 仕事について語る彼はとても楽しそうで。
 次第に、私もその世界を見てみたいと思うようになった。

 もちろん苦労はあったけれど、今は、青の中生きられることに光を感じる。

 視界の先には、光が、希望が、確かにそこにある。

 私はもう負けない。
 心も柔軟に強く。
 息を大きく吸い込んで。

 行こう。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...