1 / 2
前編
しおりを挟む
領地持ちの家に長女として生まれた私には婚約者がいる。
私より三つ年上のそこそこ整った顔面の青年。親が勝手に決めてきた婚約者だけれど、嫌な人だとは思わなかった。誠実そうな雰囲気も漂っていたから。
だが、婚約してから数週間が経過した頃、彼に怪しい動きが増えてきた。
結婚より先に同居したのだが、彼はやたらと外出するのだ。
昼も夜も関係なく彼は出掛ける。そしてなかなか帰ってこない。また、外出の内容を尋ねてみても、彼は嫌な顔をするだけ。何も思わず「今日は遠くへ行くの?」と質問した時にはキレられてしまった。
どうやら彼は外出の内容について聞かれたくないらしい。
誰にだって触れられたくないことというのは存在するものなのだろう。私には触れられたくないことはそれほどないので、その心理を完璧に理解することはできないけれど。でも、そういうこともあるのだろうな、と想像くらいはできる。
でも、外出の内容について一度も聞いたことがないというのは、少々珍しいのではないだろうか。
どうやら仕事や趣味ではないようだし。
そこで私は、婚約者には秘密で、調査員を雇うことにした。婚約者の行動が気になったからだ。万が一犯罪に手を染めていたりしたら大変だ、という思いもあった。
調査の結果判明したのは、婚約者の浮気だった。
婚約者は外出するたびに女性と二人で会っているらしい。相手の女性は数名存在するようだが、会う時は必ず二人きりだそうだ。そして、その女性たちとは、既に大人の関係になっているらしい。そういう宿泊所へ入っては出てくるのが毎日の行動の流れだとか。
予感はあった。だから調査結果を聞いた時も「そんなことだろうなと思っていた」くらいにしか思わなかった。それに、恋愛の後に婚約したわけではないので、彼がそうなるのも仕方のないことなのかもしれない。
でも、いつかは分かり合える時が来ると信じている部分はあったので、残念だ。
恋愛から始まらない婚約で真っ当な夫婦になれるなんて考えていた私に問題があったのだろう……今は一応そういうことにしておく。
それからも私はちまちまと情報を集めた。
情報収集を行っていく中で驚いたのは、浮気相手の中に私の妹がいたことだ。
父親似で地味な外見の私とは違い、母親似の妹は華やかな目鼻立ちをしている。まさに美少女というやつだ。そのため、妹が男性に気に入られるのは分からないではない。が、妹に手を出したのがよりによって私の婚約者だとは。偶然か何か知らないが、そんなことが起こるものなのだろうか。
妹は私の婚約者のことを知っていただろう。
婚約者は婚約者で、彼女が私の妹であると知っていただろう。
それなのに勝手に親しくなるなんて、驚きしかない。しかも、友だちのような恋人などではなく大人な関係にまで発展していたというのだから、ますます驚きである。
二週間後、私と婚約者はとある会場で開かれる晩餐会に参加することとなった。
私はその日に婚約破棄を告げるつもりだ。
証拠は色々集まってきている。もはや婚約者に逃げ道はない。彼が私の調査行動に気づいているのか否かははっきりしないけれど、この際そんなことはどうでもいいのだ。
すべてをはっきりさせて、もう終わりにしよう。
私より三つ年上のそこそこ整った顔面の青年。親が勝手に決めてきた婚約者だけれど、嫌な人だとは思わなかった。誠実そうな雰囲気も漂っていたから。
だが、婚約してから数週間が経過した頃、彼に怪しい動きが増えてきた。
結婚より先に同居したのだが、彼はやたらと外出するのだ。
昼も夜も関係なく彼は出掛ける。そしてなかなか帰ってこない。また、外出の内容を尋ねてみても、彼は嫌な顔をするだけ。何も思わず「今日は遠くへ行くの?」と質問した時にはキレられてしまった。
どうやら彼は外出の内容について聞かれたくないらしい。
誰にだって触れられたくないことというのは存在するものなのだろう。私には触れられたくないことはそれほどないので、その心理を完璧に理解することはできないけれど。でも、そういうこともあるのだろうな、と想像くらいはできる。
でも、外出の内容について一度も聞いたことがないというのは、少々珍しいのではないだろうか。
どうやら仕事や趣味ではないようだし。
そこで私は、婚約者には秘密で、調査員を雇うことにした。婚約者の行動が気になったからだ。万が一犯罪に手を染めていたりしたら大変だ、という思いもあった。
調査の結果判明したのは、婚約者の浮気だった。
婚約者は外出するたびに女性と二人で会っているらしい。相手の女性は数名存在するようだが、会う時は必ず二人きりだそうだ。そして、その女性たちとは、既に大人の関係になっているらしい。そういう宿泊所へ入っては出てくるのが毎日の行動の流れだとか。
予感はあった。だから調査結果を聞いた時も「そんなことだろうなと思っていた」くらいにしか思わなかった。それに、恋愛の後に婚約したわけではないので、彼がそうなるのも仕方のないことなのかもしれない。
でも、いつかは分かり合える時が来ると信じている部分はあったので、残念だ。
恋愛から始まらない婚約で真っ当な夫婦になれるなんて考えていた私に問題があったのだろう……今は一応そういうことにしておく。
それからも私はちまちまと情報を集めた。
情報収集を行っていく中で驚いたのは、浮気相手の中に私の妹がいたことだ。
父親似で地味な外見の私とは違い、母親似の妹は華やかな目鼻立ちをしている。まさに美少女というやつだ。そのため、妹が男性に気に入られるのは分からないではない。が、妹に手を出したのがよりによって私の婚約者だとは。偶然か何か知らないが、そんなことが起こるものなのだろうか。
妹は私の婚約者のことを知っていただろう。
婚約者は婚約者で、彼女が私の妹であると知っていただろう。
それなのに勝手に親しくなるなんて、驚きしかない。しかも、友だちのような恋人などではなく大人な関係にまで発展していたというのだから、ますます驚きである。
二週間後、私と婚約者はとある会場で開かれる晩餐会に参加することとなった。
私はその日に婚約破棄を告げるつもりだ。
証拠は色々集まってきている。もはや婚約者に逃げ道はない。彼が私の調査行動に気づいているのか否かははっきりしないけれど、この際そんなことはどうでもいいのだ。
すべてをはっきりさせて、もう終わりにしよう。
11
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
ある日突然嫁にされました。
四季
恋愛
現代日本で平凡に暮らしていた少女・澤田 誉は、ある日、突然見たことのない世界に転移してしまう。
そこで出会った、ジルカスと名乗る男性は、誉のことを「我が妻」と呼び、家へ招こうとするが……。
※2019.11.21〜2019.12.11に執筆した作品になります。
話が違います! 女性慣れしていないと聞いていたのですが
四季
恋愛
領地持ちの家に長女として生まれた私。
幼い頃から趣味や好みが周囲の女性たちと違っていて、女性らしくないからか父親にもあまり大事にしてもらえなかった。
そんな私は、十八の誕生日、父親の知り合いの息子と婚約することになったのだが……。
ことあるごとに絡んでくる妹が鬱陶しいので、罠にかけました
四季
恋愛
わがままに育った妹は、私の大事なものをことあるごとに奪ってくる。しかも父親は妹を可愛がっていてまっとうな判断ができない。
これまでは諦めるだけだった。
でももう許さない。
妹の特性を利用し、罠にはめるーー!
山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!
甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・
婚約者がいるのに他の女性といちゃつくのはどうかと思いますが……。
四季
恋愛
領地持ちとしてそこそこ長い歴史を持つベベル家の娘イレイナ・ベベルは、新興領地持ちであるババラ家の息子セイン・ババラと婚約することとなった。ババラ家から頼まれてのことだった。
しかしセインは同じ新興領地持ちの家の娘ミレニア・メメルと親しくなっていて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる