異世界恋愛作品集 ~どんなことがあろうとも、心折れず、ただ前へと進みます~

四季

文字の大きさ
上 下
58 / 71

春の日に婚約した彼がある日突然婚約破棄を告げてきました。~穏やかな幸せを手に入れることができたので良かったです~

しおりを挟む
 春の日に婚約した私ミリーと婚約者パルフェット。
 二人の未来にはなんてことのない平凡でも穏やかな未来があると思っていた。

 ……けれどもそれは間違いだった。

「ミリー、君との婚約は破棄とする!」

 ある日突然告げられる関係の終わり。
 赤毛のパルフェットは私を自宅へ呼び出すとはっきりと告げてくる。

 あまりにも唐突な出来事でただただ戸惑いしかない……。

「婚約破棄、ですか?」
「ああ」
「また急に……どうしてです?」
「何をとぼけているんだ! くだらない!」
「怒らないでください」
「はああ!? 舐めているのか!? 俺は怒ってなどいない!!」

 パルフェットは鼻息を荒くし、ふんすふんすと大きな音を鳴らしつつ、怒りを顔面に濃く浮かべている。

「ちなみに婚約破棄の理由は君に飽きたからだ」
「ええっ」
「何だその反応。君が面白みのない女なのがすべての原因だというのに、なぜそんな引いたような顔をしているのか」
「理由があまりにも雑でしたので……」
「馬鹿にしやがって!! 絶対に許さなあああああい!!」
「落ち着いてください、パルフェットさん」

 こうして私たちの関係は終わりを迎えてしまったのだった。

 だが、いざそうなってしまった後で考えると、まぁいいかという気分が大きかった。

 想像していたよりかはショックはなくて。
 自然な形で受け止めることができている。


 ◆


 三ヶ月後。
 パルフェットは趣味の山登り中に斜面を転がり落ちて行方不明となってしまい、捜索するも発見されず、死亡したという結論が出されたのだった。

 彼の亡骸は見つからないまま。けれども恐らく亡くなったことは事実だろう。山の中で一人生き延びている可能性は低い。そんな奇跡のようなことは恐らく起こりはしないだろう。

 もっとも、今はもう婚約者同士ではないわけなので、気に掛ける必要もないのだけれど。

 ただ、少しは、ざまぁ、と思ってしまう部分もあった。

 あんな風に身勝手に切り捨ててきた男だ、明らかに心ない人である。そんな人が幸せに生きられるなんて、そんな世の中であってはならないと思うのだ。亡くなってほしいとはさすがに思わないけれど。心ないことをした人、悪人、そういった者が幸せになれる未来なんてない方が良いと思うのである。

 ……なんにせよ、さようならパルフェット。


 ◆


 あの婚約破棄から一年半。
 私は親戚の人から良い人を紹介してもらうことができ、その人と親しくなることができて、やがて結ばれることができた。

 夫となったその人はとても善良な人だ。

 少しもっちりした感じの男性で、それゆえ子どもの頃には虐められていたこともあったそうなのだが、そういった経験もあってか優しさと広い心の持ち主となっている。

 大人しくても善良な人。
 私は彼を心から愛している。

 彼とならきっと上手くやっていけると思う。

 必ず幸せになってみせよう。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ化企画進行中「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 部屋にこもって絵ばかり描いていた私は、聖女の仕事を果たさない役立たずとして、王太子殿下に婚約破棄を言い渡されました。 絵を描くことは国王陛下の許可を得ていましたし、国中に結界を張る仕事はきちんとこなしていたのですが……。 王太子殿下は私の話に聞く耳を持たず、腹違い妹のミラに最高聖女の地位を与え、自身の婚約者になさいました。 最高聖女の地位を追われ無一文で追い出された私は、幼なじみを頼り海を越えて隣国へ。 私の描いた絵には神や精霊の加護が宿るようで、ハルシュタイン国は私の描いた絵の力で発展したようなのです。 えっ? 私がいなくなって精霊の加護がなくなった? 妹のミラでは魔力量が足りなくて国中に結界を張れない? 私は隣国の皇太子様に溺愛されているので今更そんなこと言われても困ります。 というより海が荒れて祖国との国交が途絶えたので、祖国が危機的状況にあることすら知りません。 小説家になろう、アルファポリス、pixivに投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 小説家になろうランキング、異世界恋愛/日間2位、日間総合2位。週間総合3位。 pixivオリジナル小説ウィークリーランキング5位に入った小説です。 【改稿版について】   コミカライズ化にあたり、作中の矛盾点などを修正しようと思い全文改稿しました。  ですが……改稿する必要はなかったようです。   おそらくコミカライズの「原作」は、改稿前のものになるんじゃないのかなぁ………多分。その辺良くわかりません。  なので、改稿版と差し替えではなく、改稿前のデータと、改稿後のデータを分けて投稿します。  小説家になろうさんに問い合わせたところ、改稿版をアップすることは問題ないようです。  よろしければこちらも読んでいただければ幸いです。   ※改稿版は以下の3人の名前を変更しています。 ・一人目(ヒロイン) ✕リーゼロッテ・ニクラス(変更前) ◯リアーナ・ニクラス(変更後) ・二人目(鍛冶屋) ✕デリー(変更前) ◯ドミニク(変更後) ・三人目(お針子) ✕ゲレ(変更前) ◯ゲルダ(変更後) ※下記二人の一人称を変更 へーウィットの一人称→✕僕◯俺 アルドリックの一人称→✕私◯僕 ※コミカライズ化がスタートする前に規約に従いこちらの先品は削除します。

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

処理中です...