上 下
47 / 71

なんで!? 急に婚約破棄を告げられました。〜彼は意味不明なことをし始めました、理解不能です〜

しおりを挟む
 私フェリーチェと彼リッドは幼馴染みで婚約者同士。

「フェリーチェさぁ、この前カステラ食べてたじゃん?」
「うん」
「あれ美味かった?」
「美味しかったよ。でもどうしてまたその話? 気になってるとか?」
「今度食べてみよっかなって」
「いいね! 食べてみて食べてみて」

 私たち二人の付き合いは長い。
 し実家が近所だったところから始まったからである。

 物心ついた時には既に知り合っていた。

「どこで買った?」
「普通に町のお菓子屋さん」
「あ、そうなんだ」
「うん。新商品って書いてあったから、多分、これからは入荷するんじゃないかなぁ。限定品って書き方じゃなかったし」
「そういうことなら急いで買いにいかなくても大丈夫そうだな」
「うん、大丈夫と思う」

 それゆえ気を遣うことなく関わり合うことができる。
 そこは良いところだと思う。

「でさぁ、そういえばさ」
「何?」

 一緒にいるにしても、喋るにしても、いちいち気を遣うというのは疲れるものだ。それがないというのは付き合いが長いことの利点。幼馴染みとの婚約というのは、燃え上がるような恋ではないが、それとはまた違った良い点もあるものなのだ。

「フェリーチェ前言ってただろ、バス停の」
「貼り紙の話?」
「それそれ」
「えー。それもうだいぶ前の話だけど。今になってその話? どうしたの」
「貼り紙の絵、可愛かったな」
「今さら気づいたの!?」
「この前久々にバス停使ったんだけどさ、ついうっかり乗り過ごして。それで暇だったから見てた。そしたら絵が意外と良くてさ」
「あれ描いたの私」
「地味にやるなフェリーチェ」
「ありがとー」

 これからもこんな感じでやっていけたらいいなと思う。
 それが私の素直な気持ちだ。
 好き、とか、愛してる、とか、そんな感情はまだ抱けないけれど……そこはそんなに気にしない。

 結婚するなら安定感は大事だ。

「思ったより画力高かった」
「そう? ありがと」
「あれ自力で描けるのは凄いと思ったから、一応伝えとこうと思って」
「褒めてもらえるのは素直に嬉しい」
「やるなぁフェリーチェ」
「でもちょっと恥ずかしいかも。照れちゃう」
「フェリーチェらしくないなぁ……」
「な、何よ! 照れたら駄目!? 私だって照れることあるから!」
「うそうそ、冗談」
「あーよかった」

 そんな風に普通の会話をしていたのだが。

「あ、そうそう。フェリーチェとの婚約、破棄することにしたから」

 リッドはさらりとそんなことを言ってきて。

「え……」
「ごめんな急に。じゃ、そういうことなんで。ばいばいフェリーチェ」
「ちょっと待って、何それ」

 すぐには理解できずにいたのだが。

「さよならフェリーチェばいばいフェリーチェさよならフェリーチェばいばいフェリーチェとわにさよならフェリーチェさよならフェリーチェえいえんにさよならフェリーチェえいえんにばいばいフェリーチェさよならばいばいさよならフェリーチェばいばいさよならばいばいフェリーチェさよなららららららフェリーチェばいばいいいいいフェリーチェさよなららららららフェリーチェばいばいいいいいフェリーチェとわにさよならフェリーチェとわにばいばいいいいいフェリーチェらいせでもさよならフェリーチェらいせでもばいばいフェリーチェらいせでもさよなららららららららららららららららららららららららららフェリーチェえいえんのさよならららフェリーチェばいばいばいばいばいばいばいばいばいばいフェリーチェばいばいばいばいばいばいフェリーチェばいばいフェリーチェさよならばいばいフェリーチェえいえんにばいばいフェリーチェ」

 彼はよく分からないことを言っていた。


 ◆


 あの後リッドは笹を食べるという奇行に出て毒虫に刺されたことによって亡くなった。

 私フェリーチェは資産家の男性と結ばれ幸せに暮らしている。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

離婚します!~王妃の地位を捨てて、苦しむ人達を助けてたら……?!~

琴葉悠
恋愛
エイリーンは聖女にしてローグ王国王妃。 だったが、夫であるボーフォートが自分がいない間に女性といちゃついている事実に耐えきれず、また異世界からきた若い女ともいちゃついていると言うことを聞き、離婚を宣言、紙を書いて一人荒廃しているという国「真祖の国」へと向かう。 実際荒廃している「真祖の国」を目の当たりにして決意をする。

求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。 父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。 彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。 子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。 ※完結まで毎日更新です。

くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。

音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。> 婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。 冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。 「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」

お姉様のお下がりはもう結構です。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。 慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。 「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」 ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。 幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。 「お姉様、これはあんまりです!」 「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」 ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。 しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。 「お前には従うが、心まで許すつもりはない」 しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。 だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……? 表紙:ノーコピーライトガール様より

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...