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人々の役に立つことをしてきたのにそれを野蛮と一蹴するような方とは結局上手くいかなかったでしょうね。
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親が元冒険者であったこともあり、私は、女性ながら十五歳から冒険者の世界に飛び込んだ。
生まれながら得意であった魔法を使って魔法使いとして冒険へ。
そこでは多くの経験を積むことができた。
仕事内容は色々で、魔物や危険な生き物を退治するといったものから困っている人を助ける、災害救助など――とにかく幅広い内容。
ただそれらはすべて他人の役に立つもので。
それゆえ、誰かのために何かできている、と思えることによる充実感を日々楽しむことができた。
これは天職だ。
そう思っていた。
だがそんな私も年頃になると将来を見据えなくてはならなくなって。この国において女性が独身のまま生きてゆくということはあり得ないことなので、私も自然な流れでガルーディンという青年と婚約することとなった。
しかし彼は元冒険者の私を嫌い馬鹿にして見下していて。
ガルーディンの口癖は「どうして俺が元冒険者の女なんぞと……」というものであった。
それでも一応何とか関係は続いていっていたのだが。
「婚約は破棄とする」
ある冬の日、ガルーディンから突然そんな宣言をされてしまった。
「俺はやはり淑女と結婚したい。妻が元冒険者、なんて、友人らにも恥ずかしくて言えないしな。それに、いつか子が生まれた時に、野蛮な女が母だなんて可哀想過ぎるだろう? だから俺は未来のためにお前との関係をここで終わらせる。逆恨みするなよ、これは俺と俺の子の未来の幸福のためだ」
◆
ガルーディンとの関係はあっさり壊れ終わってしまったけれど、それから数年が経った今、長い目で見ればあの時ああなって良かったのだと思えている。
婚約破棄後、私は冒険者の道へと戻った。
そしてそこで成功の道を歩むこととなる。
活動再開から一年で地区最優秀賞を受賞、続けて三ヶ月以内に地区の冒険者ランキング一位にまで駆けあがることとなった。そして徐々に名が売れ始め、新しい遠方からの仕事なども入ってくるようになって。それらを真面目にこなしているうちに国内の冒険者ランキングベストテン入り。歴代のベストテン入りでは最年少であった。また、女性としても初である。
また、そんな時、魔王軍による侵攻が発生。
それを撃退するべく国境へと向かった。
そして一ヶ月もかからず見事撃退に成功。
国を護ったことで国王より表彰されることとなり、そのために向かった王都にて――私は運命の相手となる王子エリツと知り合うこととなる。
そしてやがて彼と結婚した。
エリツ王子の妻となった私は冒険者は引退した。
だが今後もしも国に何かが起きれば絶対に戦いへと赴くつもりだ。
王子の妻である以上、国を護る義務がある。
その覚悟でこの居場所を選んだのだから、逃げる気は一切ない。
……ああ、そうだ、そういえば。
かつて私を一方的に捨てたガルーディンだが、貴族令嬢と結婚したらしい。
だがその令嬢は見た目が可愛いだけで性格は極悪だそうで。
資産は勝手に使われるわ社交の場で問題行動を起こしまくられるわで、その対応に追われる日々だそうだ。
また、ただ忙しいだけではなく、彼女の尻拭いに奔走する中でガルーディンは段々心を病んできていると聞いている。
しかしそれもまた彼の選んだ道。
それゆえ第三者が同情する必要はない。
◆終わり◆
生まれながら得意であった魔法を使って魔法使いとして冒険へ。
そこでは多くの経験を積むことができた。
仕事内容は色々で、魔物や危険な生き物を退治するといったものから困っている人を助ける、災害救助など――とにかく幅広い内容。
ただそれらはすべて他人の役に立つもので。
それゆえ、誰かのために何かできている、と思えることによる充実感を日々楽しむことができた。
これは天職だ。
そう思っていた。
だがそんな私も年頃になると将来を見据えなくてはならなくなって。この国において女性が独身のまま生きてゆくということはあり得ないことなので、私も自然な流れでガルーディンという青年と婚約することとなった。
しかし彼は元冒険者の私を嫌い馬鹿にして見下していて。
ガルーディンの口癖は「どうして俺が元冒険者の女なんぞと……」というものであった。
それでも一応何とか関係は続いていっていたのだが。
「婚約は破棄とする」
ある冬の日、ガルーディンから突然そんな宣言をされてしまった。
「俺はやはり淑女と結婚したい。妻が元冒険者、なんて、友人らにも恥ずかしくて言えないしな。それに、いつか子が生まれた時に、野蛮な女が母だなんて可哀想過ぎるだろう? だから俺は未来のためにお前との関係をここで終わらせる。逆恨みするなよ、これは俺と俺の子の未来の幸福のためだ」
◆
ガルーディンとの関係はあっさり壊れ終わってしまったけれど、それから数年が経った今、長い目で見ればあの時ああなって良かったのだと思えている。
婚約破棄後、私は冒険者の道へと戻った。
そしてそこで成功の道を歩むこととなる。
活動再開から一年で地区最優秀賞を受賞、続けて三ヶ月以内に地区の冒険者ランキング一位にまで駆けあがることとなった。そして徐々に名が売れ始め、新しい遠方からの仕事なども入ってくるようになって。それらを真面目にこなしているうちに国内の冒険者ランキングベストテン入り。歴代のベストテン入りでは最年少であった。また、女性としても初である。
また、そんな時、魔王軍による侵攻が発生。
それを撃退するべく国境へと向かった。
そして一ヶ月もかからず見事撃退に成功。
国を護ったことで国王より表彰されることとなり、そのために向かった王都にて――私は運命の相手となる王子エリツと知り合うこととなる。
そしてやがて彼と結婚した。
エリツ王子の妻となった私は冒険者は引退した。
だが今後もしも国に何かが起きれば絶対に戦いへと赴くつもりだ。
王子の妻である以上、国を護る義務がある。
その覚悟でこの居場所を選んだのだから、逃げる気は一切ない。
……ああ、そうだ、そういえば。
かつて私を一方的に捨てたガルーディンだが、貴族令嬢と結婚したらしい。
だがその令嬢は見た目が可愛いだけで性格は極悪だそうで。
資産は勝手に使われるわ社交の場で問題行動を起こしまくられるわで、その対応に追われる日々だそうだ。
また、ただ忙しいだけではなく、彼女の尻拭いに奔走する中でガルーディンは段々心を病んできていると聞いている。
しかしそれもまた彼の選んだ道。
それゆえ第三者が同情する必要はない。
◆終わり◆
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