異世界恋愛作品集 ～さくっと読める!? 大変なことやややこしいことがあっても乗り越えて幸せを掴みます～

突然の婚約破棄には驚きましたしショックも受けましたが……冷静に会話することもできない方とは離れておく方が良いのかもしれないですね。

「婚約は今日で破棄な」

　この国においては珍しい緑髪が特徴的な婚約者エーデンバースルはある日突然そんなことを告げてきた。

「エーデ、一体何を言い出すの……？」
「いやだから婚約破棄」
「聞こえたけれど。でも、急過ぎない？　しかも婚約破棄って……そんな重大なこと、どうして急に」

　すぐには理解できず、戸惑っていると。

「何だよ！　うぜぇよ！」

　急にキレられてしまった。

「だから言ってんだろ婚約破棄だって！　ただそれだけのことなのにさぁ、なんでそんなあれこれ言ってくるんだよ！」

　エーデンバースルは調子を強める。非常に好戦的だ。

「うぜえよ！　しつこすぎ！　はいそうですか分かりました、って言って去ればいいだけだろ？　それをさぁ、そうやってさぁ、ずるずる話を引き延ばそうとしてさぁ……みっともないと思わないわけ？」

　なぜそんなに攻撃的なのだろう？　普通に話せばいいのに。疑問があるにせよ、言いたいことがあるにせよ、怒らずに言葉を紡げばそれでいいという話ではないか。そこを敢えて怒った口調にするのはどうして？　ただただ感じ悪いだけだ、そんな口調。普通に言葉を発することはできないのか？

「待って、怒らないでちょうだい」
「そういうとこだよ！　うぜぇの！」
「冷静に話して」
「もういいだろ！　うっぜぇ女。サイテーだな。ま、お前みたいな女は一生誰にも愛されず生きることになる。じゃあな!!」

　こうしてエーデンバースルとの関係は終わりへと誘われたのだった。


　◆


　エーデンバースルは「一生誰にも愛されず生きることになる」と言ったけれど、その言葉は現実にはならなかった。

　あの突然の婚約破棄より一年半が過ぎた今日、私は結婚式を挙げた。

　もちろん相手はエーデンバースルではない。
　けれども彼よりも愛と幸福を与えてくれる人物だ。

　私は彼を愛しているし、彼も私を大事にして愛してくれる。

　今はとても良い関係を築けている。だからこそ、これからも、初心を忘れずに生きてゆこうと思う。今の心。今の想い。それを抱えて、落とすことなく歩んでゆけたなら、私たちはきっと良き未来へと進めるはずだ。

　夫婦になっても。
　家族になっても。

　いつまでも思いやりを大切にして生きてゆこう。

　生きていればきっと辛い時も悲しい時もあるだろう。でも支え合うことはできるはず。

　そうよ、どんな時だって。

　絶望に見舞われたり心折れかけたりしている時だとしても、二人手を取り合うことはできるはず。

　ちなみにエーデンバースルはあの後数人の女性に同時にプロポーズをしていてそれがばれたために女性たちから袋叩きにされ、四肢の自由を失うこととなってしまったそうだ。


◆終わり◆