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9話「二人のその後についてです」
しおりを挟むあれから早いもので一年以上が過ぎた。
そうそう、そういえば先日、オーツクとアルバニアがあれからどうなったかを聞いた。
あれから二人は大急ぎで結婚。
そして第一子が誕生したそう。
しかしその子が順調に成長することはなかった。
その子は身体が弱めであり、それゆえ、たびたび体調を崩していたようだ。そんな中でも何とか育児していたようだが、ある日、アルバニアがその子をオーツクに預けて短時間外出。アルバニアが子と離れるのはそれが初めてだったらしい。
だがその最中に子の状態が急変。
しかし世話し慣れていないオーツクは何もできず、そのまま時間だけが過ぎてゆく。
しかもオーツクは途中から眠気に襲われて居眠りしてしまっていた。
それからしばらくしてアルバニアが帰宅したのだが――その時には子は既に死んでいたそうだ。
それによってアルバニアはオーツクに強い憎しみを抱くようになったのだとか。
子を失ったのだ、母として情緒不安定になるのも無理はないだろう。だがオーツクはそんなことちっとも気にせず、それまでと同じように飲み会三昧。休日にまで勝手にお出掛けする始末で。
そんなある日、オーツクはシャワールームで背後から何者かに襲われ、頭を強く殴られてそのまま死亡した。
――その犯人が、妻であるアルバニアだったのだ。
アルバニアはオーツクをとてつもなく怨んでいた。
我が子を殺した、と。
苦しむ子を前にして対応さえしなかった、と。
しかしオーツクはそんなことには一切気づいておらず彼女を苛立たせることばかりする。
そうしてアルバニアは耐え切れなくなって。
憎しみを抑えきれず、その果てに、彼を殺めるという道を選択したのである。
アルバニアは当然人殺しで拘束された。
しかし彼女は捕えられても笑みを浮かべていたのだとか。
オーツクを殺せて満足している、周囲には常にそう話していたらしい。
恐ろしいことだ……。
そこまで憎しみを抱いていたとは……。
ただ、アルバニアもまた、後にこの世を去ることとなったそうだ。
というのも処刑になったのだそう。
牢屋に入れられている期間中何度も見張りの男に殴りかかり暴力事件を起こしたうえ反省の色は一切なかったため、最終的に処刑ということになったのだとか。
その時アルバニアはもう壊れてしまっていたのかもしれない。
少なくとも、正気ではなかったのだろう。
子を失う痛みは分からないではない。
もしこの話に出てくる女性がアルバニアでなかったとしたら――私は多分、母でもあった女性に同情していただろうと思う。
でもアルバニアだから。
それゆえ、純粋に可哀想と思うことはできなかった。
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