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後編
しおりを挟む「実は僕、これまで長い間、人間に痛めつけられていたのです。主が誰かと話をしている間に屋敷から何とか脱走はできたものの、これからどうしようかと不安でした。もうこのまま死ぬしかないのかなって……でも違った。貴女のおかげでこうして今生きられています」
ボーノならきっと今後罪なき人を傷つけたりはしないだろう。
「いえいえ、そんな、大層ですよ」
「ですが助けてもらったことは事実です!」
「……は、はい。あ、でも、気にしないでくださいね? 困った時は助け合いだと言うでしょう?」
「あ、ありがとうございます、救われます……」
それから数日、私は、ボーノと別れた。
さすがは獣人、回復が早い。
数日だけとはいえ同じ屋根の下で過ごした彼と別れるのは少し寂しくもあった。けれども、こんな小さなことで彼を縛るのも良くないと思って。だから彼を引き留めはしなかったし、彼が出ていく道を選んだ。
ボーノには、これからは幸せに生きてほしい――そう思う。
◆
一月後、レルヴィツイが亡くなったという話を耳にした。
何でも獣人に殺されたそう。
しかも熊に似た獣人だとか。
もしかして……と思っていたのだが、後に、やはりレルヴィツイはボーノに殺されたのだと分かった。
ただ、厳密には直接的な殺され方をしたわけではなかったようだ。
ボーノがレルヴィツイを脅したところ、レルヴィツイは崖から足を滑らせて転落し、そのまま死亡したということだそうだ。
また、ボーノを虐めていた人間というのはレルヴィツイだった、という話も出てきた。何でもレルヴィツイは獣人を監禁していたぶるのが趣味だそうで、長年、何人もの獣人に対して同じようなことをしてきていたそうだ。
それを聞けばもうレルヴィツイに同情なんてしなかった。
欠片ほども、可哀想とは思わない。
レルヴィツイこそが悪だ。
この国において人間より少し下に見られる傾向のある獣人が相手とはいえ、監禁して酷いことをするなんて、そんな黒い行動は許されるものではない。
◆終わり◆
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