上 下
2 / 2

後編

しおりを挟む
「出会いはある午後、彼女の方からティータイムに誘ってくれてな。それで、少しだけと思って、一度行ってみたんだ。そうしたらとても快適だったんだ。彼女はとにかく優しくて、話もじっくり聞いてくれて肯定してくれる」

 いや、もう、そういう話はいいから。

「分かりました。そちらに別の女性がいるなら仕方がないので、お別れしましょう」
「ようやく分かったか」

 婚約破棄して損することになるのは彼の方。いや、厳密には、彼の両親か。わたしたちが別れるとなると、彼の両親の思惑はすべて崩壊することとなる。この話を知れば、彼の両親は驚き慌てるだろう。

「さようなら」
「ああ。永遠にバーイ、だな」

 カールスは最後まで感じ悪かった。


 ◆


 その後わたしとカールスの婚約は破棄となる。

 予想通りカールスの両親は驚き慌てていた。また、何とか別れ話をなくそうと、わたしやわたしの親を説得しようとしてきた。が、すべて無意味だ。だって、婚約破棄の話を出したのはこちらではないのだから。破棄しようと言い出したのはカールス自身なのだから。

 わたしは慰謝料の支払いは求めなかった。
 とにかく少しでも早く彼の前から去りたかったのだ。

 後に聞いた噂によると、わたしとの婚約を破棄するや否やカールスはフルシリエラのところへ行ったそうだ。そしてプロポーズしたらしい。だが断られたそうだ。というのも、フルシリエラには愛している婚約者がいたのだ。フルシリエラにとって、カールスはちょっとした遊び相手に過ぎなかったのである。

 すっかり落ち込んでしまったカールス。

 そんな彼を帰りを待っていたのは、激怒している父親。

 カールスは父親から叱られることとなる。せっかくいい感じの婚約だったのに、と責められ続けたカールスは、苛立ちのあまり父親を殴ってしまう。そのことを通報され、親を暴行したとして捕まってしまう。

 カールスは、愛する女性からは相手されず、罪人として扱われ虚しく生きた。

 一方わたしはというと。
 誰かと再び婚約する気にもなれず、勉強に力を入れ、植物学者になった。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

理不尽に婚約破棄した彼がどうなったか教えてあげましょう

四季
恋愛
ひと月ほど前私に理不尽な婚約破棄を突きつけた彼の、その後。

妹の方が好みなのかと思っていたら……実は

四季
恋愛
領地持ちの家の長女として生まれたリリーナ・フォレストは、家の事情で、同じ領地持ちの家であるノーザン家の長男カストロフ・ノーザンと婚約したのだが……。

そちらの都合で婚約破棄するとなると、デメリットが多いのですよ?

四季
恋愛
婚約者サナーベルは年下の娘ミレニアにすっかり惚れてしまったようで、婚約破棄を突きつけてきた……。

薬屋の一人娘、理不尽に婚約破棄されるも……

四季
恋愛
薬屋の一人娘エアリー・エメラルドは新興領地持ちの家の息子であるカイエル・トパーヅと婚約した。 しかし今、カイエルの心は、エアリーには向いておらず……。

フレイヤはもう誰にも惚れない

四季
恋愛
貴族の娘フレイヤ・アルゴリズムは色々な男性から求婚される。 しかし彼女は必ず断る。 実はそれには理由があって……。

一番愛されていると信じていたのに……

四季
恋愛
とあるお屋敷に勤めている齢十八の少女マリナは、カインツに愛されていると信じていたのだが……。

完璧過ぎる女性が好かれないというのは事実のようですね

四季
恋愛
資産家の娘イレイナは、整った容姿を持っているうえ性格も悪くなく、そのため周囲から温かく見守られ育ってきた。 しかし、イグニスと婚約したことによって、災難の渦に巻き込まれ……。

彼女を傷つけた罪は重いのです

四季
恋愛
歴史ある領地持ちの家に生まれた娘フロマンジェと、十年ほど前に領地持ちとなった家の息子アインズ。二人は、二ヶ月ほど前、婚約者同士となった。アインズの親の意向があってのことだった。だが、周りから相応しくないと笑われることになったアインズは傷つき、やがて、浮気に走ってしまって……。

処理中です...