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しおりを挟む「君って、本当に、弱っちいよね」
かっこつけの婚約者アダーメルはたびたび私を見下すような視線を送りつつ自慢話を聞かせてくる。
彼はとにかく自慢話が好きだ。
朝起きて夜寝るまで、一緒にいる限りずっとそういう話ばかりをしてくる。
口を開けば、自分は凄いだ自分はこんな強いだと、そういう自分を称賛するような話ばかりをしてくるのだ。
とはいえ自慢だけならまだいい。
けれども彼の場合そこに私を落とすような内容が織り込まれてくるので非常に厄介なのである。
一緒にいて、非常に不愉快。
もう不愉快の極みでしかない。
――そんなある日、アダーメルは急に私を自宅へ呼び出した。
「今日はさ、大事な話があって来たんだ」
「そうなのですか?」
「ああそうだよ。君にいつかは言わなくちゃならないって思ってたことだよ。それを今日ついに告げることにしたんだ」
「そうですか。……何でしょうか?」
嫌な予感がする。
もしかして、という感じ。
アダーメルの青みがかった瞳は嵐の夜のような激しさの色をまとっているようにも感じられた――確かめることはできないが、もしかしたらそれは心の中の状態だったのかもしれない。
「君との婚約は破棄とする!」
彼は確かにそう言った。
空はまだ明るい時間だ。
けれども彼の瞳はいつだって夜の空のような色をしている。
「婚約、破棄……」
思わず意味もなく繰り返してしまった。
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