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婚約破棄されてショックだったので死んでしまおうと思ったのですが……? ~幸せな明日が待っていることは知りませんでした~

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「お前なんかとはもう一緒に生きていかない! 婚約は破棄とする! だいっきらいだ、お前は。飽きた!」

 婚約者ムルトルンはある日突然そんなことを言ってきた。

 それは関係解消の言葉。
 すべてを終わらせる一撃。

 それによって私たちの関係は断ち切られることとなってしまう。

 ――ああそうか、私は要らないんだ。

 酷くショックを受けていた私は彼の家からの帰り道崖から身を投げた。

 ――だってもう要らないのでしょう?

 何の価値もない。
 生きている意味もない。

 ならばここで終わりにしてしまおう。

 この先の道を歩いてもただ惨めなだけだから……。


 ◆


「崖から飛び降りるなんて危ないじゃないですか」

 身を投げて死を選んだ私は一人の青年によって救われた。

 彼はロッズと名乗っている。
 たまたま崖の下を通っていたところ私が落ちてくるのを目撃し救助してくれたみたいだ。

「私は……死ぬつもりです」
「何を言って」
「死なせてください! 私はもう要らないんです。早く、ここから出して。私はもう生きてゆくつもりはないんです!」

 訴えてみるけれど。

「駄目です」

 彼は私を自由にはしてくれない。

「死ぬと言うのなら解放はできません」

 ロッズは怒っていた。


 ◆


 あれから二年。
 彼に助けられた命は今も彼と共に在る。

「ケーキをどうぞ」
「え……お、美味しそう! 良いのですか? いただいて」
「はい」
「ありがとうございますロッズさん!」

 結婚はしていないけれど、私たち二人は確かに特別な二人だ。

「美~味~し~い~~!!」

 今はとても幸せ。
 だから可能な限りずっとここで生きていくつもり。

 ムルトルンのことなんて忘れて。

 この優しい世界に溺れながら生きていきたい。

「お茶、淹れてきますね」
「いつものやつですか?」
「そのつもりですが……別のものに変えます?」
「い、いえ! いつもので! お願いしたいです!」
「分かりました」
「あれ、好きなんです。とっても。美味しくて、お気に入りです」

 ちなみにムルトルンはもう死んだらしい。

 聞いた話によれば、彼は、婚約破棄後間もなく馬車に撥ねられたそうで――しかも撥ねられた後しばらく放置されてしまったらしく、そのまま失血死したそうだ。


◆終わり◆
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