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派手な顔立ちで人気者だった妹はずっと姉である私を見下していましたが……?

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 妹は私よりも派手な顔立ちでずっと人気者だった。
 周囲の大人から可愛い可愛いと言われながら育ったために性格が悪くなってしまったけれど。
 でもその責任を取る者などいるはずもなく。
 ある程度の年齢になっても妹は他人を平気で見下すような人間のままであった。

 そして姉である私は特に見下されている。

 彼女はいつも「お姉さまはわたくしには一生叶いませんわね、うふふ、すべての側面から見て」とか「わたくしはきっと素晴らしい殿方に愛されるでしょうけれど、お姉さま、自分が醜いからと嫉妬しないでくださいね」などと言ってきていた。

 なぜ彼女は自身の心こそが醜いと気づかないのだろう……。

 でも、まぁ、そんなことはどうでもいい。

 彼女に何と言われようが私の人生は変わりはしないから。
 正直なところ彼女の心ない言葉に影響力はそれほどないのだ。

 だから私は私で生きてゆくつもりでいる。


 ◆


 妹に婚約者ができた。
 婚約者は資産家の息子で自身も有能な仕事人であった。

 彼との婚約が決まった時には妹は物凄く張り切っていて大喜びしていたのだが――あっという間に婚約破棄を言いわたされてしまう。

 婚約破棄の理由は彼女の性格の悪さ。
 ことあるごとに他者を悪く言ったり見下したりするところが不快、と、その人ははっきりと理由を挙げていた。

 そこから妹は壊れ始めた。

「何よあの男! このわたくしをあんな風に言って! 許さない! 絶対に、絶対、ぜぇーったいに、許しませんわ! 当たり前じゃない! こんなに美しいわたくしを捨てるなど、後悔させてあげますわ!」

 婚約破棄直後は激怒していた。

 だが徐々に弱ってきて。

「嫌だああああ……捨てないで、捨てないでよぉ……悪いところは直すからぁ……わたくしを一人にしないで王子様ぁぁぁぁぁ……あああぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁん……あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、あっ、ああああああああん、嫌なのぉぉぉぉぉぉぉぉ……」

 やがて正気を失ってしまい。

「帰ってきてあなたあああああ! 死なないでええええええ! 戻ってきてちょうだいお願いお願いお願いぃぃぃぃぃぃ! 早くうううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! ここへ戻ってきて、わたくしを、抱き締めてええええええ!」

 彼が死んでしまったという妄想に憑りつかれている妹は。

「嫌あああぁぁぁぁ! 嫌なのおおおおぉぉぉぉぉ! 寂しい寂しい、寂しいのぉぉぉぉぉぉ! 戻ってきてちょうだいよおおお! わたくしを置いて逝ってしまうなんてぇぇぇぇぇぇ……逝ってしまうなんてぇぇぇえええええええ! 嫌! 認めない! 嫌よおおおおおおおおお!」

 毎日泣き叫んでいた。

 ――そしてある休日に突然死亡した。


 ◆


 あれから数年が経ち、私は穏やかな家庭を築いた。

 妹はいつも私を見下していたけれど。
 後に幸せになれたのは妹ではなく私であった。


◆終わり◆
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