上 下
36 / 44

自由奔放であることは知っていましたが……まさかここまでとは思いませんでしたよ。

しおりを挟む
 婚約者リュージオンは自由奔放な男だった。
 でも幼い頃から遊んでいた仲なのでそんなものと思っている――つもりだったのだが。

「リュー、好きぃ」
「あっはははぁ。嬉しいなぁ。俺も君がだいちゅきだぁ」
「キスしてもいい?」
「やめろよぉ」
「なんでぇ? もしかして照れてる? あ、やっぱり! 照れてるんだ! でも……しちゃう!」

 彼の浮気を知った時、彼とはもう無理だと思ってしまった。

 リュージオンは路上で女といちゃつくようなそこまでの常識なし男だったのか。
 今になって気づいてしまった。
 これまでの付き合いがあるとしても、彼が愚かであるという事実に気づいてしまったらもうどうしようもない。
 そんな男と一緒に生きてゆくなんて無理だし、そもそも、結婚自体も絶対に嫌だ。

 そこでそれから証拠集めを開始した。

 そして――。

「貴方との婚約は破棄するわ」

 その日、私ははっきりと宣言した。

「えっ……」
「貴方、浮気しているでしょう?」
「し、してない! 何でだよ! おかしいだろそんなの!」
「見てしまったのよ路上でのいちゃいちゃを」
「人違いだ!」
「それで、それから色々調べたわ。証拠集めにね。だから分かっているの、貴方の浮気については、それはもうかなり詳しく」

 彼は突然怒り出し「証拠を出せ!」と言ってきたので、集めた証拠の一部を彼の目の前に出す。

 するとさすがに黙り込んだ。

「事実でしょう」
「……ごめん、けど、これは俺のせいじゃない」
「どういうこと?」
「俺が彼女を愛していたのはお前が魅力的でないからなんだ」

 彼はそこから私のことを悪く言い続けた。

 心ない言葉を大量に並べてくる。
 明らかに嫌がらせ目的での行為であった。

「何にせよ、婚約は破棄とさせてもらうわ。だからリュージオン、さよなら。関係はここまでよ」

 こうして私たちの関係は終わった。


 ◆


 これは離れてから知ることとなったのだが、リュージオンといちゃついていたあの女は実は裏で薬物の取引をしていたそう。危険な薬物を売りつける商人だったのだ。で、リュージオンもその餌食となった。私との関係が終わってから本格的に交際し始めたそうなのだが、薬物を売りつけられ、その結果リュージオンは薬物に溺れていってしまう。

 で、やがて、リュージオンは急死した。

 可哀想とは思わない。
 すべては彼の選択の結果だから。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女は支配する!あら?どうして他の聖女の皆さんは気付かないのでしょうか?早く目を覚ましなさい!我々こそが支配者だと言う事に。

naturalsoft
恋愛
この短編は3部構成となっております。1話完結型です。 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★ オラクル聖王国の筆頭聖女であるシオンは疑問に思っていた。 癒やしを求めている民を後回しにして、たいした怪我や病気でもない貴族のみ癒やす仕事に。 そして、身体に負担が掛かる王国全体を覆う結界の維持に、当然だと言われて御礼すら言われない日々に。 「フフフッ、ある時気付いただけですわ♪」 ある時、白い紙にインクが滲むかの様に、黒く染まっていく聖女がそこにはいた。

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。

音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。> 婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。 冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。 「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。 守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。 だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。 それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。

処理中です...