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『婚約者が私ではない他の女性と深い仲になっていることが判明しまして。~罪に罪を重ねるとは愚かの極みですね~』
婚約者ウィルフが私ではない他の女性と深い仲になっていることが判明したために「そういうことは今後やめてほしい」と希望を述べたところ火山噴火のような勢いで激怒されてしまった。
「何言ってんだよお前! くっだらねぇ、つっまらねぇ、低級女のくせに! 威張ってんじゃねぇよ!」
ウィルフは怒った熊のような凄まじい形相で叫んでくる。
それは明らかに婚約相手に向けるようなものではなかった。
けれど、今の彼にとっては、それが当然の表現なのだろう。
きっと彼はもう私を婚約者とも何とも思っていないのだ。鬱陶しい女、不愉快な女、そうとしか思っていないのだろう。
だからこそ、私に対してこのような表情を向けることも躊躇わないのだろう。
「待って。威張っているのではないわ。私はただ希望を述べているだけ」
冷静な会話をしようと努力はしてみるが。
「ふざけんな! 言い訳だろそんなの! 明らかに偉そうなんだよ、威張ってるとしか思えねーわ。ま、くだらねぇやつほど偉そうな物言いするってのが定説だからな、ある意味その通りとも言えるけどな」
落ち着いて言葉を紡いでも、向こうが冷静さを取り戻すことはなくて。
「話を聞いてちょうだい」
「聞くわけねーだろ! お前の話なんてよ!」
一度ついてしまった火はもう消えはしないのだ。
「そもそもなぁ、前から思ってたけどよ、お前なんて低級低能過ぎなんだよ! 女として! 顔面並、性格クズ、面白味皆無。お前みたいな女、本来なら誰も相手にしねえって! けど俺は優しいからよ、付き合ってやってたんだよ。不満があっても口にせずに。優しいだろ? けど! お前はそんな俺に対して無礼なことを言った! だから許さねぇ、絶対に!」
ウィルフはどんどんヒートアップしてくる。その口から飛び出すのは汚い言葉や心ない言葉ばかり。彼は容赦なく私を責め立てた。無数の暴言を並べて、私を侮辱し続けた。
私は取り敢えず録音魔法具でその暴言たちをこっそり録音しておいた。
「てことで、婚約は破棄な!」
こうしてウィルフとの関係は終わってしまった。
……でも、もう、べつにそれで構わない。
酷いことを言われて。
傷つけるようなことをされて。
それでも彼と共に生きたいなんて思わない。
その後、親と共にそういった仕事の人に相談して、ウィルフに反撃を開始する――婚約者がいる身で他の女に手を出したことと婚約者を理不尽に侮辱したこと、その罪は必ず償ってもらう。
それから一年ほどが経って。
この戦いはようやく終わりを迎えた。
私にとって非常に理想的な結末であった。
まず償いのお金を支払ってもらうことができた。
そして彼の親から謝罪してもらうこともできた。
本人からの謝罪は――正直彼に会いたくなかったので――なし、ということで話を済ませた。
代わりに、この件を世に広めるという選択を取ることにした。
それならば私は彼と会わなくて済む。それでいて、彼の悪行を多くの人に知らしめることもできる。きっと社会的にも何かしらの形で罰を受けることとなるだろう。
だから私はその道を選んだのだった。
――それから半年も経たず、ウィルフはこの世を去った。
彼は職場で周囲から冷ややかな目を向けられるようになり、それを苦として心を病んだそうだ。
で、やがて休職。
だが彼の不幸はそれで終わりではなかった。
というのも、休職中にクビを言いわたされたのである。
彼は休職の状態からそのまま失職することとなる。
収入ゼロの暮らしが始まって。
それによって実家にも居づらくなって。
やがて、希望を見出せなくなったようで、彼はそのまま死を選んだ。
……まぁ、ある意味。
罪を償ったとも言える、か。
◆終わり◆
『私は貴方を許さない。そうよ永遠に。』
私は貴方を許さない。
そうよ永遠に。
この命が尽きる日まで。
私は貴方を愛していた。そして私たちは正式の婚約していた。婚約者同士、そう、特別な関係。私たちはそうだった。なのに貴方は――あの夜、他の女に手を出して。その腕を、女に絡めた。私ではなく、他の女を。抱き締めて、甘い言葉を囁いて。
……あまりにも卑怯よ、貴方は。
しかも。
その行為だけでも十分な裏切りで私を傷つけたというのに、加えて意見を述べた私を侮辱してさらに傷つけて。
許せるわけがないでしょう、そんな酷いことをされたら。
もう今は他人。
それは事実。
けれどもだからといってすべての罪が消えるわけじゃない。
そうよ、貴方の罪は永遠に消えないの。
……少なくとも私が死ぬまでは。
あと、あんなことをしておいて幸せになれるなんて思わないで。
この先貴方には多くの災難が降りかかるでしょう。
けれどもそれは貴方自身が引き寄せたもの。
貴方の行いが、貴方の罪が、貴方を地獄へと誘いやがて引きずりおろすでしょう――。
私は貴方を許さない。
そうよ永遠に。
この命が尽きる日まで。
◆終わり◆
婚約者ウィルフが私ではない他の女性と深い仲になっていることが判明したために「そういうことは今後やめてほしい」と希望を述べたところ火山噴火のような勢いで激怒されてしまった。
「何言ってんだよお前! くっだらねぇ、つっまらねぇ、低級女のくせに! 威張ってんじゃねぇよ!」
ウィルフは怒った熊のような凄まじい形相で叫んでくる。
それは明らかに婚約相手に向けるようなものではなかった。
けれど、今の彼にとっては、それが当然の表現なのだろう。
きっと彼はもう私を婚約者とも何とも思っていないのだ。鬱陶しい女、不愉快な女、そうとしか思っていないのだろう。
だからこそ、私に対してこのような表情を向けることも躊躇わないのだろう。
「待って。威張っているのではないわ。私はただ希望を述べているだけ」
冷静な会話をしようと努力はしてみるが。
「ふざけんな! 言い訳だろそんなの! 明らかに偉そうなんだよ、威張ってるとしか思えねーわ。ま、くだらねぇやつほど偉そうな物言いするってのが定説だからな、ある意味その通りとも言えるけどな」
落ち着いて言葉を紡いでも、向こうが冷静さを取り戻すことはなくて。
「話を聞いてちょうだい」
「聞くわけねーだろ! お前の話なんてよ!」
一度ついてしまった火はもう消えはしないのだ。
「そもそもなぁ、前から思ってたけどよ、お前なんて低級低能過ぎなんだよ! 女として! 顔面並、性格クズ、面白味皆無。お前みたいな女、本来なら誰も相手にしねえって! けど俺は優しいからよ、付き合ってやってたんだよ。不満があっても口にせずに。優しいだろ? けど! お前はそんな俺に対して無礼なことを言った! だから許さねぇ、絶対に!」
ウィルフはどんどんヒートアップしてくる。その口から飛び出すのは汚い言葉や心ない言葉ばかり。彼は容赦なく私を責め立てた。無数の暴言を並べて、私を侮辱し続けた。
私は取り敢えず録音魔法具でその暴言たちをこっそり録音しておいた。
「てことで、婚約は破棄な!」
こうしてウィルフとの関係は終わってしまった。
……でも、もう、べつにそれで構わない。
酷いことを言われて。
傷つけるようなことをされて。
それでも彼と共に生きたいなんて思わない。
その後、親と共にそういった仕事の人に相談して、ウィルフに反撃を開始する――婚約者がいる身で他の女に手を出したことと婚約者を理不尽に侮辱したこと、その罪は必ず償ってもらう。
それから一年ほどが経って。
この戦いはようやく終わりを迎えた。
私にとって非常に理想的な結末であった。
まず償いのお金を支払ってもらうことができた。
そして彼の親から謝罪してもらうこともできた。
本人からの謝罪は――正直彼に会いたくなかったので――なし、ということで話を済ませた。
代わりに、この件を世に広めるという選択を取ることにした。
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だから私はその道を選んだのだった。
――それから半年も経たず、ウィルフはこの世を去った。
彼は職場で周囲から冷ややかな目を向けられるようになり、それを苦として心を病んだそうだ。
で、やがて休職。
だが彼の不幸はそれで終わりではなかった。
というのも、休職中にクビを言いわたされたのである。
彼は休職の状態からそのまま失職することとなる。
収入ゼロの暮らしが始まって。
それによって実家にも居づらくなって。
やがて、希望を見出せなくなったようで、彼はそのまま死を選んだ。
……まぁ、ある意味。
罪を償ったとも言える、か。
◆終わり◆
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そうよ永遠に。
この命が尽きる日まで。
私は貴方を愛していた。そして私たちは正式の婚約していた。婚約者同士、そう、特別な関係。私たちはそうだった。なのに貴方は――あの夜、他の女に手を出して。その腕を、女に絡めた。私ではなく、他の女を。抱き締めて、甘い言葉を囁いて。
……あまりにも卑怯よ、貴方は。
しかも。
その行為だけでも十分な裏切りで私を傷つけたというのに、加えて意見を述べた私を侮辱してさらに傷つけて。
許せるわけがないでしょう、そんな酷いことをされたら。
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それは事実。
けれどもだからといってすべての罪が消えるわけじゃない。
そうよ、貴方の罪は永遠に消えないの。
……少なくとも私が死ぬまでは。
あと、あんなことをしておいて幸せになれるなんて思わないで。
この先貴方には多くの災難が降りかかるでしょう。
けれどもそれは貴方自身が引き寄せたもの。
貴方の行いが、貴方の罪が、貴方を地獄へと誘いやがて引きずりおろすでしょう――。
私は貴方を許さない。
そうよ永遠に。
この命が尽きる日まで。
◆終わり◆
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