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『ああ、また、雨が降る……。こんな日は思い出すわ。あの頃の記憶。』
ああ、また、雨が降る……。
こんな日は思い出すわ。
あの頃の記憶。
そう、愛していた人に切り捨てられて絶望の涙に打たれたあの頃を……。
婚約者の彼を愛していたのに、それなのに、彼は私を愛しはせず。何をやらかしたわけでもないのに、彼は私を切り捨てた。とてつもなく身勝手で滅茶苦茶な理由をつけて。ただ他の女のところへ行きたいがために。
それは私にとって人生最大の絶望だったの。
胸が痛くて。
息ができなくて。
とても耐えられないくらい、死んでしまった方がましかもしれないと思うくらい、あの時期は辛かったわ。
……でも。
「おはよう」
「あ、おはよ」
あの辛い時期があったからこそ、現在の夫、素晴らしい人柄の彼に巡り会えた。
「もう起きてたんだ? 早いね」
「ええ、目が覚めて」
「そうだったんだ。大丈夫? 悪夢でもみた?」
「いいえ」
「なら良かった」
あの苦しみがあって、だからこそ、今のこの幸福を手にできているのだ。
そう、すべての経験が糧となる。
過去を越えて。
幸せな現在、そして、未来へ。
私はもう泣いてはいない。
◆終わり◆
『十年前のあの日、いきなり告げられたのは婚約破棄でした。~すべてを越えて、我が道を行く~』
十年前のあの日、当時婚約していた相手であった彼から「お前との関係は終わりにする」と言ってきてさらに婚約破棄を宣言してきた。
何でも彼は私ではない女性に惚れたそうで、それゆえに婚約破棄したくなったとのことであった。
……それだけならまだ良かったのだが。
何を考えたのか彼は私のことを悪く言うための悪質な言葉を多数並べてきて――それゆえ、絶対に許せない、と、強く思った。
侮辱してくる人。
何もしていないのにまるでこちらが悪いことをしたかのように言う人。
そういうのは私が最も嫌いな種の人間だ。
だから許せなかった。
もう何も言い返さなかったけれど。
でも、絶対許さない、とは強く思っていた。
ただ、彼との終わりが、今の私を生み出してくれている。
それは確かなことだ。
婚約破棄されてすぐに以前から興味を持っていた服飾の世界に飛び込んだ私は、そこで多くの仕事をこなし、さらに先進的なデザインで大成功して有名人となれた。
案外悪くないかも、なんて思える未来が待ってくれていたから、私はもう過去のことを引きずってはいない。
ある意味、彼には感謝しなくては。
あ、そうそう。
ちなみにだが。
あの時私を切り捨てた彼は今はもうこの世には存在していない。
というのも、彼は、惚れた女性にはめられて怪しい男のもとへ売られ内臓を抜かれてしまったのだそう。
内臓を失った彼が生きているわけもなく。
つまり、彼はとうに滅んだのである。
許せない。
その気持ちは今でも多少あるけれど。
でもそこで立ち止まってはいられないから。
大きな声で言おう。
ざまぁ、と。
そしてまた歩き出す。
◆終わり◆
『婚約者の浮気が発覚したのは、ある夏の日でした。~裏で私の悪口を言っているなんて酷い人ですね、もう終わりにしましょう~』
婚約者ルヴェンズの浮気が発覚したのは、ある夏の日であった。
「好きだよお」
「んもぉ、ルーったらぁ、甘えたさぁん」
その日私は街へ出掛けていた。
そして見てしまったのだ。
ルヴェンズが見知らぬ金髪の女性と路地裏で抱き合い唇を重ねている場面を。
「いっつもこうねぇ」
「だってえ、好きなんだもん」
「もぉ、やめなさいよぉ、婚約者いるんでしょぉ?」
「いるけど、あんなやつどーっでもいいんだよお。美しくないし刺激的でもないし、形だけの婚約で、ちっとも楽しくないんだよお」
しかもルヴェンズは私の悪口を言っていた。
「だから慰めてよおおお……」
「結婚したらもう会うのは無理だものねぇ」
「いやだー、会いたいー、離れたくないよおー」
「なら婚約者と別れなきゃ」
「ううっ……無理なんだよおそれはあ……うう、辛い、辛いいい……」
もう我慢できない。
そう思った私は二人の前へ足を進める。
「ルヴェンズ、そんな風に思っていたのね」
悪口を言われてまで私は彼と一緒にいたくはないのだ。
「ならいいわ、婚約は破棄としましょう」
「えっ……!?」
「他の女に悪口を言うほどだものね、よほど私のことが嫌いなのでしょう?」
にこり、笑みを浮かべてやれば。
「ち、ちちっ、ちがっ……」
今さら焦ったような顔をするけれど。
「さっきの会話、録音させてもらったから」
「盗聴!?」
「だから、ね? 別れましょう私たち。その方がいいと思うわ」
もう手遅れ。
私たちに共に歩む道はない。
「や、ちょ、待って!!」
「親にも話します」
「やめて! 違う! そうじゃないんだ! あ、そ、そう! あれは言わされていただけ! 彼女とは本気の交際じゃないんだ、本当なんだ……遊びだよ!!」
汗の粒が額に浮かぶような暑さの中、私は一人道を行く。
信じていた、彼を。
信じていた、未来を。
幸せになりたかった。
普通に、平凡でいいから、普通に穏やかに……生きていきたかった。
でも、それは、叶わない願いだった。
その後ルヴェンズとの婚約は破棄となった。
彼の行いを世に出し、それを根拠として、関係を解消することとしたのだ。
父は特に彼の行動に怒っていた。
だからこそ婚約破棄に関して色々手伝ってくれたし何なら私以上に熱心に取り組んでくれた。
そのかいあって、慰謝料をもぎ取れた。
始まりへと戻った私。
すぐには笑えない。
けれども永遠にここにいることはないから、いつかはまた立ち上がり歩き出すのだろう。
それが人というものだ。
苦しみも、絶望も、越えて生きてゆく――それが人間という生き物の本質。
◆
あれから数年。
私は歴史ある家柄の心優しい青年と結婚、今は夫婦で穏やかに暮らせている。
ルヴェンズとは上手くいかなかったけれど、それがあったからこそ彼に出会えた。そう思えば、ルヴェンズとのあの日々も意味はあったのかもしれない。今はそう思う。ただ私がそう思いたいだけかもしれないけれど。でも、幸せな今がある以上、生きてきた道が間違いであったとは思わない。すべての経験が私をここへ連れてきてくれたのだと、今はそう確信している。
ちなみにルヴェンズはというと、婚約者であった私に捨てられたうえあの女からも「遊びとか言うとか、ないわ」と言われて切られ、あれ以降一人ぼっちになってしまっているそうだ。
またそれによって心を病みつつあるそうで。
今の彼には明るい未来図などありはしない。
◆終わり◆
ああ、また、雨が降る……。
こんな日は思い出すわ。
あの頃の記憶。
そう、愛していた人に切り捨てられて絶望の涙に打たれたあの頃を……。
婚約者の彼を愛していたのに、それなのに、彼は私を愛しはせず。何をやらかしたわけでもないのに、彼は私を切り捨てた。とてつもなく身勝手で滅茶苦茶な理由をつけて。ただ他の女のところへ行きたいがために。
それは私にとって人生最大の絶望だったの。
胸が痛くて。
息ができなくて。
とても耐えられないくらい、死んでしまった方がましかもしれないと思うくらい、あの時期は辛かったわ。
……でも。
「おはよう」
「あ、おはよ」
あの辛い時期があったからこそ、現在の夫、素晴らしい人柄の彼に巡り会えた。
「もう起きてたんだ? 早いね」
「ええ、目が覚めて」
「そうだったんだ。大丈夫? 悪夢でもみた?」
「いいえ」
「なら良かった」
あの苦しみがあって、だからこそ、今のこの幸福を手にできているのだ。
そう、すべての経験が糧となる。
過去を越えて。
幸せな現在、そして、未来へ。
私はもう泣いてはいない。
◆終わり◆
『十年前のあの日、いきなり告げられたのは婚約破棄でした。~すべてを越えて、我が道を行く~』
十年前のあの日、当時婚約していた相手であった彼から「お前との関係は終わりにする」と言ってきてさらに婚約破棄を宣言してきた。
何でも彼は私ではない女性に惚れたそうで、それゆえに婚約破棄したくなったとのことであった。
……それだけならまだ良かったのだが。
何を考えたのか彼は私のことを悪く言うための悪質な言葉を多数並べてきて――それゆえ、絶対に許せない、と、強く思った。
侮辱してくる人。
何もしていないのにまるでこちらが悪いことをしたかのように言う人。
そういうのは私が最も嫌いな種の人間だ。
だから許せなかった。
もう何も言い返さなかったけれど。
でも、絶対許さない、とは強く思っていた。
ただ、彼との終わりが、今の私を生み出してくれている。
それは確かなことだ。
婚約破棄されてすぐに以前から興味を持っていた服飾の世界に飛び込んだ私は、そこで多くの仕事をこなし、さらに先進的なデザインで大成功して有名人となれた。
案外悪くないかも、なんて思える未来が待ってくれていたから、私はもう過去のことを引きずってはいない。
ある意味、彼には感謝しなくては。
あ、そうそう。
ちなみにだが。
あの時私を切り捨てた彼は今はもうこの世には存在していない。
というのも、彼は、惚れた女性にはめられて怪しい男のもとへ売られ内臓を抜かれてしまったのだそう。
内臓を失った彼が生きているわけもなく。
つまり、彼はとうに滅んだのである。
許せない。
その気持ちは今でも多少あるけれど。
でもそこで立ち止まってはいられないから。
大きな声で言おう。
ざまぁ、と。
そしてまた歩き出す。
◆終わり◆
『婚約者の浮気が発覚したのは、ある夏の日でした。~裏で私の悪口を言っているなんて酷い人ですね、もう終わりにしましょう~』
婚約者ルヴェンズの浮気が発覚したのは、ある夏の日であった。
「好きだよお」
「んもぉ、ルーったらぁ、甘えたさぁん」
その日私は街へ出掛けていた。
そして見てしまったのだ。
ルヴェンズが見知らぬ金髪の女性と路地裏で抱き合い唇を重ねている場面を。
「いっつもこうねぇ」
「だってえ、好きなんだもん」
「もぉ、やめなさいよぉ、婚約者いるんでしょぉ?」
「いるけど、あんなやつどーっでもいいんだよお。美しくないし刺激的でもないし、形だけの婚約で、ちっとも楽しくないんだよお」
しかもルヴェンズは私の悪口を言っていた。
「だから慰めてよおおお……」
「結婚したらもう会うのは無理だものねぇ」
「いやだー、会いたいー、離れたくないよおー」
「なら婚約者と別れなきゃ」
「ううっ……無理なんだよおそれはあ……うう、辛い、辛いいい……」
もう我慢できない。
そう思った私は二人の前へ足を進める。
「ルヴェンズ、そんな風に思っていたのね」
悪口を言われてまで私は彼と一緒にいたくはないのだ。
「ならいいわ、婚約は破棄としましょう」
「えっ……!?」
「他の女に悪口を言うほどだものね、よほど私のことが嫌いなのでしょう?」
にこり、笑みを浮かべてやれば。
「ち、ちちっ、ちがっ……」
今さら焦ったような顔をするけれど。
「さっきの会話、録音させてもらったから」
「盗聴!?」
「だから、ね? 別れましょう私たち。その方がいいと思うわ」
もう手遅れ。
私たちに共に歩む道はない。
「や、ちょ、待って!!」
「親にも話します」
「やめて! 違う! そうじゃないんだ! あ、そ、そう! あれは言わされていただけ! 彼女とは本気の交際じゃないんだ、本当なんだ……遊びだよ!!」
汗の粒が額に浮かぶような暑さの中、私は一人道を行く。
信じていた、彼を。
信じていた、未来を。
幸せになりたかった。
普通に、平凡でいいから、普通に穏やかに……生きていきたかった。
でも、それは、叶わない願いだった。
その後ルヴェンズとの婚約は破棄となった。
彼の行いを世に出し、それを根拠として、関係を解消することとしたのだ。
父は特に彼の行動に怒っていた。
だからこそ婚約破棄に関して色々手伝ってくれたし何なら私以上に熱心に取り組んでくれた。
そのかいあって、慰謝料をもぎ取れた。
始まりへと戻った私。
すぐには笑えない。
けれども永遠にここにいることはないから、いつかはまた立ち上がり歩き出すのだろう。
それが人というものだ。
苦しみも、絶望も、越えて生きてゆく――それが人間という生き物の本質。
◆
あれから数年。
私は歴史ある家柄の心優しい青年と結婚、今は夫婦で穏やかに暮らせている。
ルヴェンズとは上手くいかなかったけれど、それがあったからこそ彼に出会えた。そう思えば、ルヴェンズとのあの日々も意味はあったのかもしれない。今はそう思う。ただ私がそう思いたいだけかもしれないけれど。でも、幸せな今がある以上、生きてきた道が間違いであったとは思わない。すべての経験が私をここへ連れてきてくれたのだと、今はそう確信している。
ちなみにルヴェンズはというと、婚約者であった私に捨てられたうえあの女からも「遊びとか言うとか、ないわ」と言われて切られ、あれ以降一人ぼっちになってしまっているそうだ。
またそれによって心を病みつつあるそうで。
今の彼には明るい未来図などありはしない。
◆終わり◆
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