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後編
しおりを挟むだってそうでしょう? このまま同じような会話を繰り返していても大事な人生の時間を失うだけ。得るものはなく失うものだけはある、そうなることは目に見えている。ならば続ける意味なんてないでしょう? だってそれは無駄なことなのだから。無駄なことを繰り返すことに意味なんてある? ……いいえ、意味なんてない。それ自体が楽しいものなら無意味なものにも意味はあるけれど、そうでないのなら意味なんてない。
ならば私はさっさと終える。
無駄は切り捨て、先に進む。
◆
あれから数年、私は親友の紹介で知り合った青年と結婚した。
彼は服飾系の大会社の若き社長。
自らの手で作った会社を全国展開にまで成長させて手腕の持ち主だ。
しかも、それでいて私には優しい。
嘘みたいな話だろう? でも嘘ではない。いわば、嘘みたいな本当の話、というやつだ。分かってもらえるだろうか? 現実の奇妙さ偶然の良い意味での恐ろしさ――それらを体現したような展開、出来事である。
ただ私が幸せになれたことに変わりはない。
たとえどんなに嘘みたいな話だとしても。
それが現実を書き換えるわけではないのだ。
だから私は彼と共に進んでいく。
この先辛いことがあったとしても、山や谷があったとしても、それでも手を取り合って歩んでゆけるのなら――きっとどんな時も笑い合えるだろうし、幸せという光をどこまでも求められるだろう。
一方アドベンはというと。
父親がこっそり借金を重ねていてそれを返済できなかったために息子である彼が借金取りに捕まってしまったそうで。
自らのやらかしではないにもかかわらず怖い人たちに捕まり、売って出た儲けを借金返済に充てるために内臓を抜かれてしまったそうだ。
彼にはもう内臓すら満足にない。
きっと幸せな未来も――彼はどうあがいても手に入れられないだろう。
◆終わり◆
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