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『学園時代に知り合った彼と卒業後間もなく婚約することとなったのですが……その後まさかの事実が発覚しまして!?』
学園時代に知り合った彼エルギニーは学園卒業後間もなく「実は好きだった」と打ち明けてきてさらに「婚約したい」と希望を告げてきた。
特に断る理由もなかったから、私はそれを受け入れ、婚約することを選んだ――のだが、婚約してからというものエルギニーは段々冷ややかになってゆき、やがて私のことなんて少しも見ないようになっていた。
そしてやがて知ることとなる。
彼が欲していたのは私ではなく我が家の資産だったのだということを。
「彼女さ、金持ちなんだ」
「だから婚約したのぉ?」
「そう。やっぱコルネリアはよく分かってるな。勘がいいし、俺のことよく分かってるし、最高な女だわ」
「んもぉ~照れるぅ」
エルギニーが見知らぬ女コルネリアとそんなことを話しているのを目撃してしまって、裏切られたような気分に苛まれる。
そして、心を決めた。
――もう彼とは生きない。
その後私はこの件について問い詰めた。するとエルギニーはわりとすぐに白状した。そうだ、と。金目的だ、と。彼は申し訳なさなんて欠片もなさそうに言った。
それによって私の両親は激怒、速やかに婚約を破棄させると言い始める。
で、その通り、私たちの婚約は破棄となった。
「ちっ、上手くやれてると思ってたのに。つまらねぇな」
最後に会った時、そんな心ない言葉を吐かれたのは忘れられない――が、まさかそれが最期になるとは。
その翌日エルギニーは亡くなった。
昼過ぎに散歩していたそうなのだが、山道で突如転がってきた大岩に潰され、この世を去ることとなった。
エルギニーの最期はあまりにも呆気ないものであった。
可哀想に、不運だ。普通であればそう思うだろう。大岩の落下に巻き込まれるなんて気の毒に、と。だがそれはあくまで罪のない人がであるからだ。罪なき人に降りかかる災難であれば気の毒なもの、しかし、もしそれが罪なき人でないなら。被害者だとしても、かつて加害者であった者を、純粋に気の毒とか可哀想とかは思えないというのが人の心理である。どうしてもざまぁみろ的な感情が芽生えてしまうのだ。
ちなみに私はというと、後に本屋を営む好青年と巡り会い意気投合することができ、彼と結婚した。
彼は我が家の資産狙いではない。
それは確かだ。
共に過ごしている中でそう確信した。
だから安心している。
彼はきっと裏切らない。
◆終わり◆
『穢らわしい? そのような無礼な発言をして、無事でいられると本気で思っているのですか?』
「エリーナ! 貴様! 穢らわしいぞ! 魔女め……婚約は破棄とするッ!!」
婚約者で王子であるトータスはあるパーティーにてそんな宣言をしてきたのだが。
「そのようなことを仰ってよろしいのですか?」
無礼な発言をしたために、彼は私に宿る神を怒らせた。
「ぎゃあああああ!!」
突如トータスに雷が落ちる。
「え、ちょ、何これ……?」
「こわっ」
「ひいいぃぃぃ」
「も、も、もしかして……神とやらを、怒らせた、から……とか……?」
私たち二人を除くパーティー参加者たちはすっかり怯えてしまっている。
だが、それもそうか。
いきなりこんなことになったら誰だって驚いて普通だろう。
落雷を見て冷静でいられる人のほうが珍しい。
私ももしこれが第三者であったなら驚き怯えていたに違いない。
……だって意味不明だもの。
よく分からない物事ほど怖く感じるものだ。
それが人の心というものである。
ちなみにその落雷によってトータスはこの世を去った。
一国の王子の、まさかの死であった。
◆
あれから五年。
私は生まれ育った国を出て隣国の王のもとへ嫁いだ。
「エリーナさま! 偉大なる王妃さま! この国をこれからもお護りください!」
他国の人間である私のこともこの国は温かく受け入れてくれた。
その心の広さにはもうとにかく感謝している。
よそ者を受け入れる余裕。
こうして大切にしてくれる優しさ。
この国はとても温かな空気に満ちている。
だからこそ、私もこの国のために生きたいと思えているし、この国を真っ直ぐに愛せている。
◆終わり◆
学園時代に知り合った彼エルギニーは学園卒業後間もなく「実は好きだった」と打ち明けてきてさらに「婚約したい」と希望を告げてきた。
特に断る理由もなかったから、私はそれを受け入れ、婚約することを選んだ――のだが、婚約してからというものエルギニーは段々冷ややかになってゆき、やがて私のことなんて少しも見ないようになっていた。
そしてやがて知ることとなる。
彼が欲していたのは私ではなく我が家の資産だったのだということを。
「彼女さ、金持ちなんだ」
「だから婚約したのぉ?」
「そう。やっぱコルネリアはよく分かってるな。勘がいいし、俺のことよく分かってるし、最高な女だわ」
「んもぉ~照れるぅ」
エルギニーが見知らぬ女コルネリアとそんなことを話しているのを目撃してしまって、裏切られたような気分に苛まれる。
そして、心を決めた。
――もう彼とは生きない。
その後私はこの件について問い詰めた。するとエルギニーはわりとすぐに白状した。そうだ、と。金目的だ、と。彼は申し訳なさなんて欠片もなさそうに言った。
それによって私の両親は激怒、速やかに婚約を破棄させると言い始める。
で、その通り、私たちの婚約は破棄となった。
「ちっ、上手くやれてると思ってたのに。つまらねぇな」
最後に会った時、そんな心ない言葉を吐かれたのは忘れられない――が、まさかそれが最期になるとは。
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可哀想に、不運だ。普通であればそう思うだろう。大岩の落下に巻き込まれるなんて気の毒に、と。だがそれはあくまで罪のない人がであるからだ。罪なき人に降りかかる災難であれば気の毒なもの、しかし、もしそれが罪なき人でないなら。被害者だとしても、かつて加害者であった者を、純粋に気の毒とか可哀想とかは思えないというのが人の心理である。どうしてもざまぁみろ的な感情が芽生えてしまうのだ。
ちなみに私はというと、後に本屋を営む好青年と巡り会い意気投合することができ、彼と結婚した。
彼は我が家の資産狙いではない。
それは確かだ。
共に過ごしている中でそう確信した。
だから安心している。
彼はきっと裏切らない。
◆終わり◆
『穢らわしい? そのような無礼な発言をして、無事でいられると本気で思っているのですか?』
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「そのようなことを仰ってよろしいのですか?」
無礼な発言をしたために、彼は私に宿る神を怒らせた。
「ぎゃあああああ!!」
突如トータスに雷が落ちる。
「え、ちょ、何これ……?」
「こわっ」
「ひいいぃぃぃ」
「も、も、もしかして……神とやらを、怒らせた、から……とか……?」
私たち二人を除くパーティー参加者たちはすっかり怯えてしまっている。
だが、それもそうか。
いきなりこんなことになったら誰だって驚いて普通だろう。
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私ももしこれが第三者であったなら驚き怯えていたに違いない。
……だって意味不明だもの。
よく分からない物事ほど怖く感じるものだ。
それが人の心というものである。
ちなみにその落雷によってトータスはこの世を去った。
一国の王子の、まさかの死であった。
◆
あれから五年。
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その心の広さにはもうとにかく感謝している。
よそ者を受け入れる余裕。
こうして大切にしてくれる優しさ。
この国はとても温かな空気に満ちている。
だからこそ、私もこの国のために生きたいと思えているし、この国を真っ直ぐに愛せている。
◆終わり◆
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