異世界恋愛作品集　～たとえ婚約破棄されても幸せになります、理不尽などには負けません～

四季

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２作品

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『婚約破棄されたため、とある屋敷で働いていたのですが……そこで意外な出会いがありまして!?』

「君との婚約は破棄とする！」

　婚約者ローゼンがそんなことを言ってきたので、私はそれを受け入れることにした。

「あ、そうですか。分かりました」

　だって、ここであれこれ言って反発したところで、意味なんてないだろう。婚約破棄すると決められ、それを既に告げられてしまっているのだから、今さらあれこれ言ったところで完全に無意味である。

　ならば私は彼との道は諦める。

「さようなら、ローゼンさん」
「なっ……そんな軽い感じでッ!!?」
「婚約破棄、なのですよね」
「ぐ……」
「ではそういうことで、私は去りますね。……さようなら」

　婚約破棄されたから去る、ただそれだけだ。

　彼が先に私を捨てたのだからおかしな行動ではないだろう。

　◆

　婚約破棄された私はかつて仲良くしていた友人の紹介でとある屋敷での仕事に就いた。そこで細々と働いていた時、屋敷に頻繁に出入りしている資産家の男性から声をかけられて、そこから彼と関わるようになっていった。もちろん仕事は継続、真摯に取り組んでいるままで。で、そうして生きているうちに男性からプロポーズを受け、それをありがたく受け入れて。

　そうして私は男性と共に生きる道を選んだ。

　ちょうどその頃、ローゼンが亡くなったという話を聞くこととなる。
　彼は私との婚約を破棄した後「ストレス源から解放された、だからしばらくのんびりしたい」と話していたそうなのだが、ある夜何者かによって殺められたそうだ。

　彼は幸せな未来を掴めなかった。

　……否、幸せな未来どころか、普通に生きることすらできなかった。

　でも自業自得なのだ。
　だってその道を選んだのは外の誰でもない彼自身なのだから。

　◆

「これ、きみが作ってくれたのかい？」
「あ、はい。そうです。ショートケーキです」
「わぉ……！　すごい……！　それは素晴らしいね」

　屋敷で働いていた時期に出会った男性と結婚し夫婦になった私は、あれから数年経った今でも幸せに暮らしている。

「さすがだなぁ……！」
「紅茶もあります」
「わ！　それは嬉しい！　好きなんだよ、きみが淹れてくれる紅茶」

　今は屋敷での仕事はない。
　結婚を理由に退職したのだ。

　でも、その代わりと言うと変かもしれないけれど、今は夫を懸命に支えている。

　けれどもそれは嫌なことではない。私がやりたいからやっていることだ。愛する人を支えたい、その強い思いがあるからこそ、私は彼の隣に妻として存在しているのである。

「元気が出るよ」
「本当ですか……！　良かった、良かったです」
「あはは」
「これからもたくさん淹れますね」

　言えば、彼は眉尻を下げる。

「申し訳ないな、いつも」

　彼は時に申し訳なさそうな顔をする。
　だがそういうどこか控えめなところも含めて私は彼を愛している。

◆終わり◆

『婚約破棄されましたので……舞います！　～そう、これは、呪いの舞いです～』

「エリーミネラ、貴様との婚約は……破棄とするッ!!」

　婚約者である彼リィーットはある日突然そんな風に宣言してきた。

「え……っと、その、それは本気で仰っていますか？」
「ああ」
「ええーっ……」
「当たり前だろ。婚約破棄するんだ、婚約破棄」

　こうして私は理不尽に捨てられた。

「では……舞いますね」

　私にとってリィーットはもう大切な人ではなくなった。

　だからこそこの舞いを解放できる。

「てぃったらたったてぃったらたったてぃってらとったらてぃってらとったらとったらとったらてぃってらたったてぃってらたったてっとらてったらてぃってらたったてぃってらたったてぃったらてぃたらたらったらてぃとぅらったらてぃったらてぃったらてぃったらてぃとらてぃらっとれてぃとれられらとぅららてぃらっとれ」

　私は身体を動かす。
　身と心を一つにして。

　翼を得たかのように、天の加護を受けているかのように、どこまでも自由に。

　するとリィーットは突然右足の指の痛みを訴え、泡を噴き出して倒れた。

「さようなら、リィーットさん」

　天罰だと思ってほしい。あんな風に、身勝手に、婚約破棄なんて言ったからだ。身勝手なことをしたから。そもそもの原因を作り出したのは外の誰でもない彼であり、決して私ではない。私はあくまでやられたことに対して仕返しをしただけのこと。

　◆

　冬が来た。
　穏やかな、どこか寂しげな、そんな凍りつくような季節が。

　私は先日一人の商人の青年と結婚した。

　今は商人である彼に付き添って各地を転々としながら暮らしている。
　環境がたびたび変わる生活というのは時に苦労もあるもの、だが、それ以上の幸福があるからこそ彼と共に歩める。

　そう、私はもう過去は振り返らないのだ。

　ただ前へ進むのみ。

◆終わり◆

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