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4話

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 これまでも理不尽なことはたくさんあった。けれども、これほど理不尽だと感じたのは初めてかもしれない。何もしていないのに妹のたった一つの嘘で何もかもを失ったのだ、理不尽と言わずに何と言えば良いのか。

 だが、私が意見を言ったところで、口ごたえをするなと一蹴されるだけ。

 父親が「出ていけ」と言ったなら、私は出ていくしかない。それが定め、父親の決定には絶対に逆らえない。


 ◆


 その後、私は、偶然一人の紳士に拾われた。
 道ばたで息絶える直前に出会い、流れのままに、二人で暮らすようになった。

 若い娘を勝手に自宅に連れ帰るなんて、よくあることではない。だから、最初は、彼のことを警戒していた。変態紳士かもしれない、などと思っていた。が、彼はそんな人ではなくて。私を傷つけるようなことはしない、思いやりのある男性だった。

 年齢も性別も違っている私たち。
 でも心は通い合っている。

 かなり奇妙な始まりだったけれど、二人での暮らしは幸福に包まれていた。


 ◆


 これは後に耳にした話だが。

 妹はあの後、あの時の青年と婚約したそうだ。だが、父親から姉うんぬんの話を聞いた青年は「たぶらかされたなどという事実はない。そんな話は嘘だ」と言い、妹の人格を批判したそうだ。また、そこから喧嘩に発展してしまって。青年は「嘘つきで家族を貶める女性を妻にはできない」と言い、色々あって、最終的に婚約破棄となったらしい。

 妹は幸い慰謝料は請求されなかったようだが、評判には傷がつくこととなった。

 嘘をついて婚約者に拒まれた娘、として、人々から冷たい目で見られるようになったみたいだ。

 また、妹の嘘を信じ込み嘘つき癖を治せなかった父親もまた、近所の人たちから批判されたとか。また、噂は意外とあっという間に広がってゆくもので。老後は親戚一同にも見離され一人寂しく死んでいったらしい。


◆終わり◆
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