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前編

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 私には三つ年下の妹がいる。

 素朴系で派手さのない外見の私とは違い、彼女はとても華やかな容姿を持っている。それも、生まれながらにして。

 私と妹はとても姉妹には見えない。

 子ども時代、そのことを周りからもよくからかわれていた。

 母親は地味な私のことも可愛がって大切にしてくれた。けれども父親はそうではなくて。彼はいつだって妹のことばかりを可愛がっていた。私を目にするたびに舌打ちをする彼がずっと怖かった。

 私が十八歳になる頃、母親は病によって弱りきってしまっていた。

 母親のことが好きだった私は毎日会いに行く。けれども、母親のことを心配しているのは、家庭内では私一人。父親も妹も、落ち込んでいる私を馬鹿にする。その様を見ていて、心なしか違和感を覚えた。家族の一人が亡き人となりかけているのにどうして平気でいられるのだろう、と。

 また、ある夜には、父親と妹が楽しそうに話しているのを聞いてしまった。

「母さんが死んだら遺産はわたしにもくれる? お父様」
「あぁ、もちろんだ。母さんの実家は金持ちだからな、がっぽり儲かるぞ」
「やったわね! お父様!」

 二人は夜中にこっそりそんなことを話していたのだ。

「一緒に豪華な暮らしをしましょ! ……あ、でも、あの地味女が邪魔ね」
「あいつは追い出せばいい」
「そうね! 名案だわ。そうしましょ、お父様!」

 その会話を耳にした時、私は、二人が母親の心配をまったくしていないのだと悟った。

 病に倒れる母親の身を案じているのは私だけ。それは変わることのない事実なのだ。そして、この先もずっと、二人がこちら側へ来てくれることはない。
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