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episode.94 よく分からなくなってくる
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「一週間以内、か」
誰もいない夜の食堂。私は一人、呟いた。
私がわざわざ食堂まで来た理由は一つ。
寝つけなかったから、だけである。それ以外に理由はない。
化け物狩り部隊の人間の半数は、この時間だと、帝都の警備や化け物の殲滅を行っていることだろう。そして、非番の者は自室にいる。
つまり、この時間帯に食堂にいる者はいない、と言っても過言ではないのだ。
「これからどうなってしまうのかなっ? ……なんて」
思ったことをすべて口から出している私は、端から見れば、結構な変わり者だろう。だが、今は、こうでもしていないと落ち着きを保っていられないのだ。変わり者だと思われてもいい。本当に気が変になるくらいなら、他者から変わっていると認識される方がましだ。
「そもそも、どうして私を狙うのよ……」
食堂の営業時間内ではないため、料理やスイーツは頼めない。しかし、セルフサービスのコーナーにある紅茶やコーヒーだけは、夜中でも淹れられる。なので私は、そこに置いてある紅茶を飲むことにした。
白いカップを一個手に取る。ティーバッグは、種類を選ばず適当に一つ。そして、それらを使い、適当に紅茶を入れた。湯は近くに備え付けられているポットのものだ。
席に戻ると、カップから立ちのぼる湯気をぼんやりと眺める。
「あぁもう! 分からない!」
衝動的に、カップの中の紅茶を飲み干す。
「って、熱っ!!」
舌に走るのは、焼けるような感覚。
そうだ。淹れたばかりの紅茶だった。と、後悔しても、時既に遅し。舌の先から喉の奥まで、ひりひりする。
「……うぅ」
冷水を飲みたくなるが、取りに行くのも面倒臭い。だから私は、そのひりひりする痛みを我慢することに決めた。
舌を歯に当ててみると、感覚がだいぶなくなっていることに気がつく。
ただ、こんなのはよくあることだ。神経質になって気にすることではない。
せっかく紅茶を淹れたカップは、空になってしまった。
露わになったカップの底を、私は、意味もなく見つめ続ける。ほんの少し紅茶の色が残る底は、私の浮かない顔を映していた。
そんな風にして時間を潰していると、突然、視界の端に人の姿が入る。こんな時間に珍しいな、と思い、私は視線をそちらへ向けた。
「トリスタン?」
目を向けた先にいたのは、彼だった。
帝国軍の制服でもある白い衣装を身にまとい、一つにまとめた金の髪をなびかせて歩く様は、ダリアで初めて会った日の彼を彷彿とさせる。
何だか懐かしい光景だ。
「……マレイちゃん?」
少し遅れて私に気づいたトリスタンは、その足を止めた。
深海のような青の瞳は、今日も変わらず綺麗だ。大自然を思い起こさせるような色をしている。
「こんな時間に、どうして?」
彼は少々気まずそうな表情で、そう尋ねてきた。
「ちょっと眠れなくて」
私は正直に真実を答える。
飾る必要はない、無理に理由を作る必要もない、と判断したから。
「不眠症?」
「違う!」
「そ、そっか。ごめん」
「いいえ。こちらこそ、ごめんなさい。気にしないで」
何だかぎこちない会話になってしまっている。どうにか普段通りの楽しい会話へもっていきたいのだが、なかなか上手くいかない。
「……眠れないのも仕方がないよね。これだけ色々あったら」
十秒ほどの沈黙の後、控えめな声でトリスタンが言った。
「宣戦布告の話は、グレイブさんから聞いたよ。マレイちゃんとゼーレを狙っているらしいね」
「えぇ、そうなの」
「マレイちゃんが狙われていることは前から分かっていたけど、ゼーレもなんだ」
「そうよ。ボスからすれば、彼は、反逆者で裏切り者だもの」
この短期間で、ゼーレを消すための刺客を、二人も送り込んできたのだ。ボスの手の者は、また襲ってくるに違いない。
これまでのところは、何とか切り抜けられてきた。が、今後現れる刺客から確実に逃れられるという保証はどこにもないのである。いつ誰に襲われ、どんな目に遭うか、分かったものでない。
「ボスはゼーレを殺すつもりだわ。私は彼に、そんな険しい道を歩ませてしまった……」
するとトリスタンは問う。
「後悔してるの?」
淡々とした調子で問うトリスタンには、妙だと感じるほどの落ち着きがあった。この前ダリアで迫ってきた彼とは、別人のようである。……もっとも、あの時の彼がおかしかっただけかもしれないが。
「マレイちゃんは、ゼーレをこちら側へ引き込んだことを後悔してるの?」
「……今は、少しだけ」
正しいことだと思っていたのだ、あの頃は。
悪人として一生を終えるより、今からでも善き人となって生き直すべきだと、そう信じて疑わなかったのだ。
でも、今はよく分からなくなった。
これが本当にゼーレにとって、最善の幸せな道なのか、もはや私には分からない。
「変よね。今になって、過去の行いの善し悪しについて悩むなんて」
そう呟くと、トリスタンは首を左右に動かす。
「マレイちゃんは変なんかじゃないよ。ただ、理想を追いすぎているようには思うけどね」
「理想を追いすぎている、って?」
「何もかもが最善になる選択肢を、君は探している。でも、そんなものは、この世界にはほとんどない。君の中の理想と、この世界の現実には、大きな差があるんだよ」
トリスタンの言葉は、私の胸に突き刺さる。
しかし、その理由を私は知っている。
浴びせられた言葉に、胸がこんなにも痛むのは、その言葉が正しいからだ。真実だからこそ、的を得ているからこそ、言われるのが辛いのだろう。
「確かに、ゼーレはこちら側についたことで、ボスから命を狙われる立場になってしまった。でも彼は、それ以上のものを手に入れたんじゃないのかな」
それはそうなのかもしれない。
けれど、私がしたことによってゼーレが狙われているという事実に、耐えられないのだ。
「それでも嫌!」
私は思わず声を強めてしまった。
「確かに、ゼーレは色々なものを手に入れたかもしれない。でも、だから狙われても仕方ないなんて、言いたくない!」
トリスタン以外に誰もいないというのも手伝って、私は、いつもより、きついことを言ってしまっているかもしれない。
「理想と現実の差なんて関係ないわ! たとえ理想には届かないとしても、そこへ少しでも近づけるように努力するべきじゃない!」
「努力ではどうしようもないことだってあるんだよ。マレイちゃんには分からないかもしれないけど……」
「えぇ! ちっとも分からないわ!」
——まただ。またしても、当たり散らすようなことを言ってしまった。
こんなことをトリスタンに言ったって、何も変わりはしない。それを分かっていながら、彼に酷い言葉を吐いている。
なぜ、こんな風にしか言えないのだろう。こんなはずではなかったのに。
「そもそも、化け物がこんなに蔓延り続けているのだって、誰も世界を変えようとしないからでしょ!?」
「マレイちゃん……」
「化け物を倒す術を持っていながら、いつまでも、毎晩ぷちぷち倒すだけで! 状況を改善しようともしないで!」
「違うよ、それは……」
私を見つめるトリスタンの瞳は揺れている。
しかしそれでも、この胸に込み上げるものを、抑えられはしなかった。
「何が『違う』よ! ふざけないで!」
必死に止めようとした。
だがもはや、自力で止められる範囲ではない。
「口では綺麗なことを言っても、本当は、民間人が何人かやられるくらいならいいって思っているのでしょう? 大勢の死者が出さえしなければいい、帝都に甚大な被害がでなければまぁいいやって、そう思っているのでしょう?」
だから——と言いかけた瞬間。
突如、トリスタンが抱き締めてきた。
「ごめん」
耳元で囁かれるのは、息の混じった声。弱弱しく、震えていた。
「あの夜、僕が間に合わなかったから……君にそんな思いを背負わせてしまったんだよね。本当に、ごめん」
誰もいない夜の食堂。私は一人、呟いた。
私がわざわざ食堂まで来た理由は一つ。
寝つけなかったから、だけである。それ以外に理由はない。
化け物狩り部隊の人間の半数は、この時間だと、帝都の警備や化け物の殲滅を行っていることだろう。そして、非番の者は自室にいる。
つまり、この時間帯に食堂にいる者はいない、と言っても過言ではないのだ。
「これからどうなってしまうのかなっ? ……なんて」
思ったことをすべて口から出している私は、端から見れば、結構な変わり者だろう。だが、今は、こうでもしていないと落ち着きを保っていられないのだ。変わり者だと思われてもいい。本当に気が変になるくらいなら、他者から変わっていると認識される方がましだ。
「そもそも、どうして私を狙うのよ……」
食堂の営業時間内ではないため、料理やスイーツは頼めない。しかし、セルフサービスのコーナーにある紅茶やコーヒーだけは、夜中でも淹れられる。なので私は、そこに置いてある紅茶を飲むことにした。
白いカップを一個手に取る。ティーバッグは、種類を選ばず適当に一つ。そして、それらを使い、適当に紅茶を入れた。湯は近くに備え付けられているポットのものだ。
席に戻ると、カップから立ちのぼる湯気をぼんやりと眺める。
「あぁもう! 分からない!」
衝動的に、カップの中の紅茶を飲み干す。
「って、熱っ!!」
舌に走るのは、焼けるような感覚。
そうだ。淹れたばかりの紅茶だった。と、後悔しても、時既に遅し。舌の先から喉の奥まで、ひりひりする。
「……うぅ」
冷水を飲みたくなるが、取りに行くのも面倒臭い。だから私は、そのひりひりする痛みを我慢することに決めた。
舌を歯に当ててみると、感覚がだいぶなくなっていることに気がつく。
ただ、こんなのはよくあることだ。神経質になって気にすることではない。
せっかく紅茶を淹れたカップは、空になってしまった。
露わになったカップの底を、私は、意味もなく見つめ続ける。ほんの少し紅茶の色が残る底は、私の浮かない顔を映していた。
そんな風にして時間を潰していると、突然、視界の端に人の姿が入る。こんな時間に珍しいな、と思い、私は視線をそちらへ向けた。
「トリスタン?」
目を向けた先にいたのは、彼だった。
帝国軍の制服でもある白い衣装を身にまとい、一つにまとめた金の髪をなびかせて歩く様は、ダリアで初めて会った日の彼を彷彿とさせる。
何だか懐かしい光景だ。
「……マレイちゃん?」
少し遅れて私に気づいたトリスタンは、その足を止めた。
深海のような青の瞳は、今日も変わらず綺麗だ。大自然を思い起こさせるような色をしている。
「こんな時間に、どうして?」
彼は少々気まずそうな表情で、そう尋ねてきた。
「ちょっと眠れなくて」
私は正直に真実を答える。
飾る必要はない、無理に理由を作る必要もない、と判断したから。
「不眠症?」
「違う!」
「そ、そっか。ごめん」
「いいえ。こちらこそ、ごめんなさい。気にしないで」
何だかぎこちない会話になってしまっている。どうにか普段通りの楽しい会話へもっていきたいのだが、なかなか上手くいかない。
「……眠れないのも仕方がないよね。これだけ色々あったら」
十秒ほどの沈黙の後、控えめな声でトリスタンが言った。
「宣戦布告の話は、グレイブさんから聞いたよ。マレイちゃんとゼーレを狙っているらしいね」
「えぇ、そうなの」
「マレイちゃんが狙われていることは前から分かっていたけど、ゼーレもなんだ」
「そうよ。ボスからすれば、彼は、反逆者で裏切り者だもの」
この短期間で、ゼーレを消すための刺客を、二人も送り込んできたのだ。ボスの手の者は、また襲ってくるに違いない。
これまでのところは、何とか切り抜けられてきた。が、今後現れる刺客から確実に逃れられるという保証はどこにもないのである。いつ誰に襲われ、どんな目に遭うか、分かったものでない。
「ボスはゼーレを殺すつもりだわ。私は彼に、そんな険しい道を歩ませてしまった……」
するとトリスタンは問う。
「後悔してるの?」
淡々とした調子で問うトリスタンには、妙だと感じるほどの落ち着きがあった。この前ダリアで迫ってきた彼とは、別人のようである。……もっとも、あの時の彼がおかしかっただけかもしれないが。
「マレイちゃんは、ゼーレをこちら側へ引き込んだことを後悔してるの?」
「……今は、少しだけ」
正しいことだと思っていたのだ、あの頃は。
悪人として一生を終えるより、今からでも善き人となって生き直すべきだと、そう信じて疑わなかったのだ。
でも、今はよく分からなくなった。
これが本当にゼーレにとって、最善の幸せな道なのか、もはや私には分からない。
「変よね。今になって、過去の行いの善し悪しについて悩むなんて」
そう呟くと、トリスタンは首を左右に動かす。
「マレイちゃんは変なんかじゃないよ。ただ、理想を追いすぎているようには思うけどね」
「理想を追いすぎている、って?」
「何もかもが最善になる選択肢を、君は探している。でも、そんなものは、この世界にはほとんどない。君の中の理想と、この世界の現実には、大きな差があるんだよ」
トリスタンの言葉は、私の胸に突き刺さる。
しかし、その理由を私は知っている。
浴びせられた言葉に、胸がこんなにも痛むのは、その言葉が正しいからだ。真実だからこそ、的を得ているからこそ、言われるのが辛いのだろう。
「確かに、ゼーレはこちら側についたことで、ボスから命を狙われる立場になってしまった。でも彼は、それ以上のものを手に入れたんじゃないのかな」
それはそうなのかもしれない。
けれど、私がしたことによってゼーレが狙われているという事実に、耐えられないのだ。
「それでも嫌!」
私は思わず声を強めてしまった。
「確かに、ゼーレは色々なものを手に入れたかもしれない。でも、だから狙われても仕方ないなんて、言いたくない!」
トリスタン以外に誰もいないというのも手伝って、私は、いつもより、きついことを言ってしまっているかもしれない。
「理想と現実の差なんて関係ないわ! たとえ理想には届かないとしても、そこへ少しでも近づけるように努力するべきじゃない!」
「努力ではどうしようもないことだってあるんだよ。マレイちゃんには分からないかもしれないけど……」
「えぇ! ちっとも分からないわ!」
——まただ。またしても、当たり散らすようなことを言ってしまった。
こんなことをトリスタンに言ったって、何も変わりはしない。それを分かっていながら、彼に酷い言葉を吐いている。
なぜ、こんな風にしか言えないのだろう。こんなはずではなかったのに。
「そもそも、化け物がこんなに蔓延り続けているのだって、誰も世界を変えようとしないからでしょ!?」
「マレイちゃん……」
「化け物を倒す術を持っていながら、いつまでも、毎晩ぷちぷち倒すだけで! 状況を改善しようともしないで!」
「違うよ、それは……」
私を見つめるトリスタンの瞳は揺れている。
しかしそれでも、この胸に込み上げるものを、抑えられはしなかった。
「何が『違う』よ! ふざけないで!」
必死に止めようとした。
だがもはや、自力で止められる範囲ではない。
「口では綺麗なことを言っても、本当は、民間人が何人かやられるくらいならいいって思っているのでしょう? 大勢の死者が出さえしなければいい、帝都に甚大な被害がでなければまぁいいやって、そう思っているのでしょう?」
だから——と言いかけた瞬間。
突如、トリスタンが抱き締めてきた。
「ごめん」
耳元で囁かれるのは、息の混じった声。弱弱しく、震えていた。
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