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領地持ちのそれなりに裕福な家に生まれた私——アメリア・フルレスクは、十八になった春、両親の知り合いの息子であるカゼインと婚約した。
カゼインの第一印象はそれほど悪いものではなかった。
私より一つ年上な彼は、地味な雰囲気の青年ではあるけれど、不愉快な思いをさせてくるような人ではなくて。見た感じ慎ましく落ち着いた雰囲気であった。多くを語りはしないが、品は感じられる、そんな人。だから、多分それなりに上手くいくのではないかと、そう思っていた。
だが、その希望は、あっという間に崩れ去ってしまう。
というのも、カゼインには私に告げていない趣味があったのだ。
風俗店通いである。
女性慣れしていない、と、彼は言っていた。彼の両親もそう話していた。けれどもそれは、あくまで『一般人の女性とは』という話であって。一般人でない女性と関わることには慣れていたのだ。
婚約して間もない頃、彼はよく仕事があるからと言って出掛けていた。また、こちらから顔を合わせようと誘った時にも、仕事があるからと断られたことが少なくない。だから、心当たりがなかったわけではないのだけれど、真実を知った時にはさすがに驚きを隠すことはできなかった。
その事実が発覚した時、私と彼は話し合いをすることになった。
一般女性と親しく関係にあるよりかはましなのかもしれない。
仕事だから、と割り切っている女性が相手なのだから。
だが、このまま何も言わずに放っていたら、彼はこれからもずっと通い続けるだろう。それはいつか関係にひびを入れてしまうに違いない。今は見逃していられても、その事実はいつか二人の関係に傷をつけるはずだ。
だからここで一旦整理しようと考えて、話し合いの場を設けたのだ。
一方的に責めるつもりではなかった。
カゼインの第一印象はそれほど悪いものではなかった。
私より一つ年上な彼は、地味な雰囲気の青年ではあるけれど、不愉快な思いをさせてくるような人ではなくて。見た感じ慎ましく落ち着いた雰囲気であった。多くを語りはしないが、品は感じられる、そんな人。だから、多分それなりに上手くいくのではないかと、そう思っていた。
だが、その希望は、あっという間に崩れ去ってしまう。
というのも、カゼインには私に告げていない趣味があったのだ。
風俗店通いである。
女性慣れしていない、と、彼は言っていた。彼の両親もそう話していた。けれどもそれは、あくまで『一般人の女性とは』という話であって。一般人でない女性と関わることには慣れていたのだ。
婚約して間もない頃、彼はよく仕事があるからと言って出掛けていた。また、こちらから顔を合わせようと誘った時にも、仕事があるからと断られたことが少なくない。だから、心当たりがなかったわけではないのだけれど、真実を知った時にはさすがに驚きを隠すことはできなかった。
その事実が発覚した時、私と彼は話し合いをすることになった。
一般女性と親しく関係にあるよりかはましなのかもしれない。
仕事だから、と割り切っている女性が相手なのだから。
だが、このまま何も言わずに放っていたら、彼はこれからもずっと通い続けるだろう。それはいつか関係にひびを入れてしまうに違いない。今は見逃していられても、その事実はいつか二人の関係に傷をつけるはずだ。
だからここで一旦整理しようと考えて、話し合いの場を設けたのだ。
一方的に責めるつもりではなかった。
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