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2話

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「おぉ! 貴女が国護りの女性ですな!」
「あの……その話、よく分からなくて……」
「司祭がそう判断したのでしょう! なら間違いありませんぞ!」
「そう……ですか」

 六十も過ぎていると思われる白髪の国王は、私の登場を非常に喜んでいた。これで国も安泰だ、などと、大層に思えるようなことまで言っていた。一見、馬鹿のようである。ただ、彼はとても純粋な瞳をしていたので、私が彼を馬鹿だと捉えることはなかった。

 彼は心から国の平穏を望んでいるのだろう。
 その気持ちは伝わってきた。

 そこまでは良かった。私がいれば国が安泰、というところまでは。だが、その先が問題だった。というのも、国王は自分の息子と私を結婚させると言い出したのである。

 私は「無理だ」と主張した。
 けれども、すっかり浮かれてしまっている彼の耳に私の言葉は届かなくて。

「取り敢えず婚約の手続きを進めることにしましたぞ! 突然で悪いけれどもな。どうか、これから、息子とこの国をよろしく!」

 国王はさっさと話を進めていってしまう。
 そうして私は国王の息子と婚約した。

 だが。

 国王の息子、長男であるザルベーは、唐突なこの婚約に不満を抱いているようだった。

 ザルベーは私と会う時いつも不満そうな顔をしている。最初は少しでも楽しんでもらおうと努力してみていたのだが、頑張っても無駄だと感じ、次第に私も気を遣わないようになっていった。


 ◆


 二ヶ月後、国王が亡くなった。

 彼の身を密かに蝕んでいた病が発見されたのは、彼が亡くなる一ヶ月ほど前。発見された時には既に悪化していて、この国の医学をもってしても到底太刀打ちできる状態ではなかったとのことだ。病を発見した時、医師はすぐに余命を告げたとか。
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