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1話

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「聞いたぞ、テレレ。お前、俺の妹を陰で虐めているそうだな」

 ある日突然、婚約者からこんなことを言われた。

 だが心当たりがない。婚約者に妹がいることは知っているけれど、彼女とはそれほど交流がないし、当然虐めたという認識もない。

 なのにどうしていきなりこんなことを言われなくてはならないのか。
 せめて事情を説明してほしい。

「すみませんが話が分かりません。私が妹さんを虐めているとは、どのようなお話でしょうか」
「妹から話を聞いたのだ」

 大事に置いていた服を切り裂かれた。
 淹れて飲もうとしていた紅茶に虫を投げ込まれた。
 通りすがりに足を引っ掛けられた。

 私ーーテレレが婚約者の妹に対してそのような意地悪をしているという話になっているらしい。

「私はそのようなことはしていません」
「嘘をつくな! お前は妹が嘘つきだと言うのかっ!?」

 婚約者はいつもこんな感じだ。少しでも気に食わないことがあるとすぐにキレて騒ぎ始める。そして、相手が自分の思い通りになるまで騒ぎ続けるのだ。直接的な暴力行為には至らないことが多いのだけれど、この現象は厄介としか言い様がない。

 親が勝手に決めた婚約。

 正直、こんなものはさっさと破棄したい。

 けれどもすんなり破棄することができないことも事実だ。なぜなら私と彼だけの問題ではないから。こちらから一方的に婚約破棄をしたりなんかしたら、絶対、またややこしい話に発展してしまう。できればそれは避けたい。
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