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カレーだよね?
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「えーと、その焼き菓子小さい袋で二つください」
「銅貨四枚だ」
「はい」
「しっかりと。どうぞ」
店主から焼き菓子が入った袋を二つ受け取った。
さて、本格的に立場とか気にせずに遊ぼう。そのために念入りに下準備をしてだね……そう、そのためだけに夜の寝る時間も惜しんでちまちまと設定を練っていたのだ。
バレたら個人としての楽しみがなくなってしまう。バレたからと言って楽しみがなくなるわけではないんだけどさ。
ふっふっふ……この姿じゃバレるわけなんてないもんな。
現在オレは金髪碧眼の少年になっている。もちろん顔も変じゃない程度にいじった。
「……!」
どこからかいい匂いが漂ってくる。スパイシーなあれに似た匂い。みんな大好きカレーですよ。
この匂いは、こっち?おや、こんな人気のないところでカレーを作ってんのか。ま、こっちにカレー自体もカレーの類似品もなかったと思うし、見たこともなかったから、新商品?新しい味というものは受け入れられるのに時間を要するよね。
「んー、見た目と匂いが違うっ!なんでだぁー!」
頭にタオルを巻いて腰にはエプロンを巻いている。格好的にはラーメン屋さん?
一人でカレーの出来がよろしくないと叫んでいる。
「カレーを再現したかったのに……カレー不足で死んでしまう!」
元気一杯だね。とっても騒がしい。
「なぜだ、普通さぁこんなグロテスクな色にならないでしょー」
たしかにそうだね。彼が持っているカレーらしき物体の色はドス黒い紫色。気のせいかな、モヤが出てきているような。
それはもう食物とは言えないんじゃないかな。出されたら食べるのをためらうような物体に出来上がっているよ。
匂いだけはカレーなんだけどね。
「なんでなのさ!ノーカレーノーライフ!」
「あははっ……さっきから、一人で……」
もう見てらんないよ。
オレは見てるだけに耐えられず吹き出してしまった。だって、ここまでカレーに入れ込んで再現しようとしてるなんて。一生懸命なんだけど、彼の場合お笑いをやっているように見えちゃうんだ。
そして、今までの言動から察するに彼は転移か転生してきた者だろう。ここまで熱を注ぐようなのは、そういう人物と接したからじゃなさそうな熱の入り具合だし。
彼の見た目からして転生した感じかな。
「な、なに!」
「面白くて、ごめんね」
表情がコロコロ変わるなぁ。
「オレはユウキ。カレー好きなの?」
「カレーを知ってるのか!オレはライって言うんだよ。ユウキって日本人か?」
それに純粋。警戒するのを知らないのかな?って心配になるほど。あと、直球で聞くね。
ちなみに今名乗った名前、嘘はついてない。結城マオだもの。ユウキだから、なんにも嘘はついてないだろ。名字を名乗っただけにすぎない。
日本人かと聞くってことは、確定だね。
「ライは?」
「オレは転生者だ。カレーの食い過ぎでちょっとやってしまって」
「食い過ぎで……ははっ、死んだ原因がカレーって」
カレーの食べ過ぎって。暴食したせいで胃とかやられてかな。それとも、スパイスって辛いのあるから……あ、結局胃か。
好きなものも程々にしないとだな。
「笑うなよ」
「食い過ぎでって。オレは……」
一応どっちでもあるんだよな。転生者でも転移者でも。だから、これもどっちを答えても嘘ではない。
「転生者、だよ。……同じだな」
「おお!仲間だ!」
男に抱きつかれる趣味はないんですよ。オレはフィーリア一筋だ。
というのは冗談だけど、抱きつくほどかな。たしかに同じ日本人に出会えてオレも嬉しくないわけではないけどさ。
「元人間だから魔族の暮らしって慣れないものだろ?なにより、カレーがないのが辛い……」
「魔族は人間、人族と違うからね。いきなりはなれないものだと思うよ」
「だよな」
世界と文化の違いは大きいのだ。
「人族といえば、人族と交通を断つんだってな」
「うん。そうだね」
「なんか複雑なんだよ。元人間としてはさ」
「そう……」
もとが人間だと人族寄りな考えになってしまうんだろう。いくら魔族の中で魔族として生きていても、価値観を作る時期は人間だったのだから。
「ライってちびっこいよな。何歳?」
外見的には十歳かそれよりちょっと上かといったところ。けれど、見た目通りの年齢じゃない確率のほうが高い。
「十八歳。精神年齢は三十四歳」
つまり、十六歳のときにカレーの食い過ぎでこっちに来たわけか。親不孝ものだね。死因がカレーだもん。
「年下か」
こちとら三千五百年と三十年ほど生きておりまして、精神年齢は三千五百三十ほどなんですよ。
「それでオレ、賢族なの。ユウキは?」
「オレはね、血族。ライは賢族なんだね」
賢族、賢王族。賢いんじゃないのかな。ガイオスといい、ライといい賢いとは言えない者がそういうのに生まれているって……。すべてが賢いわけではないけど。
「その髪と瞳の色なのに?」
「……知ってたか」
変なところで賢いね。
現在のオレの髪色と瞳の色は血族にはありえない色だ。血族は赤系統の髪色と瞳の色をもつのも特徴だ。血が赤いからかな。
金髪と碧眼だったら、そうだね。血族っていうより、髪色とかの特徴がない吸血鬼って言っておいたほうが良かったかな。
ライが疑わしげにオレを見つめる。本当に賢王族と賢族には感覚的な賢い子しかいないのか!
「銅貨四枚だ」
「はい」
「しっかりと。どうぞ」
店主から焼き菓子が入った袋を二つ受け取った。
さて、本格的に立場とか気にせずに遊ぼう。そのために念入りに下準備をしてだね……そう、そのためだけに夜の寝る時間も惜しんでちまちまと設定を練っていたのだ。
バレたら個人としての楽しみがなくなってしまう。バレたからと言って楽しみがなくなるわけではないんだけどさ。
ふっふっふ……この姿じゃバレるわけなんてないもんな。
現在オレは金髪碧眼の少年になっている。もちろん顔も変じゃない程度にいじった。
「……!」
どこからかいい匂いが漂ってくる。スパイシーなあれに似た匂い。みんな大好きカレーですよ。
この匂いは、こっち?おや、こんな人気のないところでカレーを作ってんのか。ま、こっちにカレー自体もカレーの類似品もなかったと思うし、見たこともなかったから、新商品?新しい味というものは受け入れられるのに時間を要するよね。
「んー、見た目と匂いが違うっ!なんでだぁー!」
頭にタオルを巻いて腰にはエプロンを巻いている。格好的にはラーメン屋さん?
一人でカレーの出来がよろしくないと叫んでいる。
「カレーを再現したかったのに……カレー不足で死んでしまう!」
元気一杯だね。とっても騒がしい。
「なぜだ、普通さぁこんなグロテスクな色にならないでしょー」
たしかにそうだね。彼が持っているカレーらしき物体の色はドス黒い紫色。気のせいかな、モヤが出てきているような。
それはもう食物とは言えないんじゃないかな。出されたら食べるのをためらうような物体に出来上がっているよ。
匂いだけはカレーなんだけどね。
「なんでなのさ!ノーカレーノーライフ!」
「あははっ……さっきから、一人で……」
もう見てらんないよ。
オレは見てるだけに耐えられず吹き出してしまった。だって、ここまでカレーに入れ込んで再現しようとしてるなんて。一生懸命なんだけど、彼の場合お笑いをやっているように見えちゃうんだ。
そして、今までの言動から察するに彼は転移か転生してきた者だろう。ここまで熱を注ぐようなのは、そういう人物と接したからじゃなさそうな熱の入り具合だし。
彼の見た目からして転生した感じかな。
「な、なに!」
「面白くて、ごめんね」
表情がコロコロ変わるなぁ。
「オレはユウキ。カレー好きなの?」
「カレーを知ってるのか!オレはライって言うんだよ。ユウキって日本人か?」
それに純粋。警戒するのを知らないのかな?って心配になるほど。あと、直球で聞くね。
ちなみに今名乗った名前、嘘はついてない。結城マオだもの。ユウキだから、なんにも嘘はついてないだろ。名字を名乗っただけにすぎない。
日本人かと聞くってことは、確定だね。
「ライは?」
「オレは転生者だ。カレーの食い過ぎでちょっとやってしまって」
「食い過ぎで……ははっ、死んだ原因がカレーって」
カレーの食べ過ぎって。暴食したせいで胃とかやられてかな。それとも、スパイスって辛いのあるから……あ、結局胃か。
好きなものも程々にしないとだな。
「笑うなよ」
「食い過ぎでって。オレは……」
一応どっちでもあるんだよな。転生者でも転移者でも。だから、これもどっちを答えても嘘ではない。
「転生者、だよ。……同じだな」
「おお!仲間だ!」
男に抱きつかれる趣味はないんですよ。オレはフィーリア一筋だ。
というのは冗談だけど、抱きつくほどかな。たしかに同じ日本人に出会えてオレも嬉しくないわけではないけどさ。
「元人間だから魔族の暮らしって慣れないものだろ?なにより、カレーがないのが辛い……」
「魔族は人間、人族と違うからね。いきなりはなれないものだと思うよ」
「だよな」
世界と文化の違いは大きいのだ。
「人族といえば、人族と交通を断つんだってな」
「うん。そうだね」
「なんか複雑なんだよ。元人間としてはさ」
「そう……」
もとが人間だと人族寄りな考えになってしまうんだろう。いくら魔族の中で魔族として生きていても、価値観を作る時期は人間だったのだから。
「ライってちびっこいよな。何歳?」
外見的には十歳かそれよりちょっと上かといったところ。けれど、見た目通りの年齢じゃない確率のほうが高い。
「十八歳。精神年齢は三十四歳」
つまり、十六歳のときにカレーの食い過ぎでこっちに来たわけか。親不孝ものだね。死因がカレーだもん。
「年下か」
こちとら三千五百年と三十年ほど生きておりまして、精神年齢は三千五百三十ほどなんですよ。
「それでオレ、賢族なの。ユウキは?」
「オレはね、血族。ライは賢族なんだね」
賢族、賢王族。賢いんじゃないのかな。ガイオスといい、ライといい賢いとは言えない者がそういうのに生まれているって……。すべてが賢いわけではないけど。
「その髪と瞳の色なのに?」
「……知ってたか」
変なところで賢いね。
現在のオレの髪色と瞳の色は血族にはありえない色だ。血族は赤系統の髪色と瞳の色をもつのも特徴だ。血が赤いからかな。
金髪と碧眼だったら、そうだね。血族っていうより、髪色とかの特徴がない吸血鬼って言っておいたほうが良かったかな。
ライが疑わしげにオレを見つめる。本当に賢王族と賢族には感覚的な賢い子しかいないのか!
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