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決定

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「こちらと関わることになったのは、こちらのせいでもある。だから、できる限りの要望は聞こうと思うのだが、どうだ」

 クラディアの言うことはその通りだね。クラディアの暴走とでも称そうか。それによって、レステリアの王子のセルリアンは誘拐みたいな形で最終的には記憶を失った。
 本人はそこまで重く受け止めてないような雰囲気を醸し出しているけど、それだけのことだ。

「レステリアとセレンティアから離れた比較的自由な国に行きたいです」
「それでいいのか?」
「はい」
「そうか。ならば、オートン王国なんてどうだ?あそこなら、ある程度の自由がきくし、何かあれば守ってもくれるだろう」

 クラディアさん、人族の国のことよく知っていますね。昔は交流してたんだもんな。

「オートン王国……確かに」

 日記なんかで知識を補充したのか、アオイはオートン王国と聞いて納得した。

 もし、クラス転移なんかじゃなくてオレ一人で転移する。そんなんだったらお世話になっただろうな。
 イフの話をしたところで何が変わるってわけだけど。

「はい、そこでお願いします」
「了解した。他にはあるか?」
「そうだな……特には、ないです」
「マオ、近くまで送るのを頼んでいいか?」

 オートン王国か。どこらへんなんだろ。

「オートン王国ってどこ?」
「あ、知らなかったのか」

 頭を抱えないでよ。クラディアみたいに人族と交流してたわけじゃないし、再びこの世界に来た今はそこまで調べ終わる前に人族から逃げてきちゃったし。
 まったく、オレが悪いみたいな感じに。

「そうだよ。知らなかったよ」
「地図はやるから、頼めるよな」
「うん」

 オレはクラディアからオートン王国までの道のりとその付近の地形がのった地図をもらった。紙の地図ってかなり久しぶりなんだよねぇ……ほら、最近はデジタルな世の中で地図にしても、スマホでちゃちゃっと目的地までのアシストまでしてくれるじゃん。
 読めるけどね?

「出発は……」
「クラディア、リルが彼と話してみたいって言っていたんだけど……」

 クラディアの言葉を遮ってフィーリアが口を開いた。
 このまますぐに出発しちゃうと、リルがむくれちゃうかも。むくれたリルも悪くは……と、今はそんなことを考えたら駄目だよ。

「む……リルがか。よし、リルとの話が終わってからでいいよな」

 ここで親バカ発揮しちゃう?魔王としての威厳とかはどこに行ったんだね。

「……待ってたわ!」

 扉がバンっと音をたてて開いた。扉の方に全員の注目が集まった。
 扉を開けたのはリルであった。

「リル⁉」
「お父様、いいよね?」
「あ、あぁ」

 勢いあるリルに押され気味のクラディアは、押しに負けてしまったようだ。こういうリルってなかなか見れない。

「えーと、リルさん?よろしくお願いします?」
「マオ兄に話してるみたいに呼び捨て、タメ口でいいわ」
「そう?リル、よろしく」
「うん。よろしくね、アオイ」

 アオイは珍しく強引なリルに引っ張られて行ってしまった。でも、いやいやじゃないからいいのかな。
 あ……アオイは男……うん、そう、男だ。リルにひっつく虫になることは……ないよね。よし、決めた。

「弐番、よろしくね?」
「程々にしないとだよー?まぁ、姫はアオイなんかには……」
「弐番くんかな?頼んだよ?」
「黒い顔してるわよー」

 フィーリアさんや、そんなねぇ……黒い顔だなんて。これは我らがリルを……

「った!フィーリア、何するの」

 フィーリアに頭を叩かれた。痛い……。

「やりすぎは駄目よ?ねぇ、弐番」
『そうですね、力があるだけにやりすぎは駄目ですね』
「そうよ。わかったわね?」

 いつの間にフィーリアと仲良くなりやがった、弐番!……弐番が魔族だったら少しばかり電流をビリビリと流すことを検討するところだった。

『では、行ってきますね』

 弐番はパタパタとリルの部屋に飛んでいった。

「……やっぱり、帰ってしまうの?」

 フィーリアがテオドールと倫太郎と同じことを聞いてきた。

「それは……」

 オレが答えをいいあぐねていると、フィーリアが続きを紡いだ。

「あなたが彼らを大切に思う気持ちはわかるけど、私もリルも……」
「大切、か……」

 大切。フィーリアが大切、リルが大切。倫太郎も大切、地球の両親も大切。
 ……考えれば考えるほど難しい問題だな。簡単に答えが出ない。
 できるできないはおいておいて、オレはどっちを選ぶ?

「これも同時に考えないとな……」
「私はあなたにいてほしいわ」

 フィーリアがはっきりと言った。

「ありがとう」
「ん……」 

 フィーリアの頭に手を置くためにアストールの姿になる。なんでって?マオだと、フィーリアより低いんだもん。カッコつかないじゃん。

「ふふふ……」
「……」

 フィーリアは頭をナデナデすると、表情を崩してへにゃっと笑った。それにつられてオレもへにゃっと笑ったのだった。
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