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シェーン
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森の奥って、本当に奥なんですね。そこまで奥深くに住んでいらっしゃるとは思いませんでしたよ。
森に入ってから魔法でアシストしながらまるまる三日。奥に入るにつれて、出てくる魔物は強くなってくし、特徴的な見た目になってくる。
森じゃなくてジャングルなんじゃないかと突っ込みたくなるような場所である。
シェーンが住んでいるという小屋の窓から光が漏れていた。ここって昼でも暗いんだよね。
「食料とかどうしてんだか……」
死んでないといいね。
「さてと」
シェーンと話をしに行こう。
オレは小屋の木のドアを数回ノックした。すると、小屋の中から何かが崩れるような物音がして、ドタドタと慌ただしい足音が響いた。
「はーい……って、どちら様?」
「えっと……そうだな……」
どちら様って答えよう。姿的にはマオの姿をとっているんだけど……マオ?アストール?たまたま通りかかった旅人?
「んー?キミ、ストレートだね?」
「は?」
「へぇ……それにキレイな緋色。こんなにキレイな緋色はアストール以外見たことないよ……」
シェーンがオレの髪を食い入るように見つめている。そんなじまじまと見つめないでください……。
自分の髪色を褒められるってあまりなれてないから、少しこそばゆい。
「ふふふ……。何か用があるんでしょ?入りなよ」
「あ、うん」
さすが歳を重ねただけあって、オレがここに来た理由をなんとなく察したようだ。
「なにか言った?」
「いや、何も言ってないけど」
「そう?年を食ってるとか……聞こえたような気がしたんだけどなぁ……」
なに、テレパスですか。あと、そんな表現はしてないんだけど……。歳を重ねたっていうのは、すごいなー的な意味で使ったんだよ。
「はい、どうぞ。ブラッドティーで良かった?」
「久しぶりに飲むな……」
ブラッドティーは日本語に直訳すると血のお茶で、非人道的かと思う人がいるかもしれないけど、そうではない。
ブラッドという種類の茶葉があって、その茶葉を使ったお茶だ。ブラッドティーは血族が好んで飲んでいるお茶で、魔王城にはブラッドの茶葉がいつでもあった。
血族がブラッドティーが好きだなんてダジャレみたいだ。
「この甘さが好き」
口に含むとほんのりとした甘みが口いっぱいに広がる。この甘さがたまらないのだ。
ついつい顔が緩んでしまう。
「キミ、血族?それとも血王族?」
「なんでそう思うの」
「ブラッドティーを甘いって好んで飲むのはその二つだけだからだよ」
そうだっけか。クラディアもガイオスも特に何も言わずに一緒に飲んでいたからね。
「そうなんだ。知らなかったよ」
「みんな知ってることだと思ってたよ。で、どっち?」
「そんなに知りたいの?」
「うーん……それほどって訳でもないよ?」
シェーンはオレがどっちなのか答えないでいると、待つのをやめた。
「言わないのならそれでいいんじゃないかな。それで、用って何?」
「魔人について、なんだけど」
今まで穏やかだった雰囲気が張り詰めたものとなった。それくらいオレとシェーンにとって大事な要件だった証拠だ。
「なんで魔人を上の許可なく作った?お前はなんのためにそんな行動をとった?」
「キミは考えたことはない?」
シェーンはオレの問に問で返してきた。
「考えるって、何を」
「なんで魔族と人族は争うことになる?その発端は?」
「ミーティアとかよりもっと前の始まりか?」
「そうだよ。歴史を見るとわかるんだけどさ、魔族の底しれぬ強さを人族が恐れたからさ」
「それで?」
とにかくシェーンの話を一度聞いてからにしようと思い、先を促した。
「ミーティア様が一度は人族と和平を築いた。けれど、それは再び人族により壊された」
ミーティアが殺されてしまったから。
「なら、人族が魔人になれば魔族に歯向かおうとすることはなくなる。そうしたら、本当の和平を築くことができる」
「結果は成功じゃなかった。それでもまだそう思ってる?」
「まだまだ実験は始まったばかりなんだ。一度の失敗くらいでは諦めないさ」
「はぁ……」
困ったな。シェーンは魔人を作り出すことにより人族と和平が築けると信じ込んでいる。そこだけに焦点が行ってしまって他のことはまるで考えていない。
有能で面白いシェーンはどこに行ってしまったのやら……。
「お前なぁ……和平を築きたいと思っている人族数十人の人生を奪っといてそんなことを言えるなんてな……」
呆れた。
「クラディアの邪魔だけはするなよ、シェーン。ブラッドティー美味しかった」
オレはそれだけを言い残して小屋を出ていく。シェーンとこれ以上話していてもどうにもならない。それだったら、邪魔をしないんだったら、こいつは放っておこう。
「確かに他意はなかったな」
一人残った魔人はセレンティア教国でどんな扱いを受けているのだろうか。あの国なら影で拷問とか、人体実験とかも有り得そうだからな……。
「帰ろう」
森に入ってから魔法でアシストしながらまるまる三日。奥に入るにつれて、出てくる魔物は強くなってくし、特徴的な見た目になってくる。
森じゃなくてジャングルなんじゃないかと突っ込みたくなるような場所である。
シェーンが住んでいるという小屋の窓から光が漏れていた。ここって昼でも暗いんだよね。
「食料とかどうしてんだか……」
死んでないといいね。
「さてと」
シェーンと話をしに行こう。
オレは小屋の木のドアを数回ノックした。すると、小屋の中から何かが崩れるような物音がして、ドタドタと慌ただしい足音が響いた。
「はーい……って、どちら様?」
「えっと……そうだな……」
どちら様って答えよう。姿的にはマオの姿をとっているんだけど……マオ?アストール?たまたま通りかかった旅人?
「んー?キミ、ストレートだね?」
「は?」
「へぇ……それにキレイな緋色。こんなにキレイな緋色はアストール以外見たことないよ……」
シェーンがオレの髪を食い入るように見つめている。そんなじまじまと見つめないでください……。
自分の髪色を褒められるってあまりなれてないから、少しこそばゆい。
「ふふふ……。何か用があるんでしょ?入りなよ」
「あ、うん」
さすが歳を重ねただけあって、オレがここに来た理由をなんとなく察したようだ。
「なにか言った?」
「いや、何も言ってないけど」
「そう?年を食ってるとか……聞こえたような気がしたんだけどなぁ……」
なに、テレパスですか。あと、そんな表現はしてないんだけど……。歳を重ねたっていうのは、すごいなー的な意味で使ったんだよ。
「はい、どうぞ。ブラッドティーで良かった?」
「久しぶりに飲むな……」
ブラッドティーは日本語に直訳すると血のお茶で、非人道的かと思う人がいるかもしれないけど、そうではない。
ブラッドという種類の茶葉があって、その茶葉を使ったお茶だ。ブラッドティーは血族が好んで飲んでいるお茶で、魔王城にはブラッドの茶葉がいつでもあった。
血族がブラッドティーが好きだなんてダジャレみたいだ。
「この甘さが好き」
口に含むとほんのりとした甘みが口いっぱいに広がる。この甘さがたまらないのだ。
ついつい顔が緩んでしまう。
「キミ、血族?それとも血王族?」
「なんでそう思うの」
「ブラッドティーを甘いって好んで飲むのはその二つだけだからだよ」
そうだっけか。クラディアもガイオスも特に何も言わずに一緒に飲んでいたからね。
「そうなんだ。知らなかったよ」
「みんな知ってることだと思ってたよ。で、どっち?」
「そんなに知りたいの?」
「うーん……それほどって訳でもないよ?」
シェーンはオレがどっちなのか答えないでいると、待つのをやめた。
「言わないのならそれでいいんじゃないかな。それで、用って何?」
「魔人について、なんだけど」
今まで穏やかだった雰囲気が張り詰めたものとなった。それくらいオレとシェーンにとって大事な要件だった証拠だ。
「なんで魔人を上の許可なく作った?お前はなんのためにそんな行動をとった?」
「キミは考えたことはない?」
シェーンはオレの問に問で返してきた。
「考えるって、何を」
「なんで魔族と人族は争うことになる?その発端は?」
「ミーティアとかよりもっと前の始まりか?」
「そうだよ。歴史を見るとわかるんだけどさ、魔族の底しれぬ強さを人族が恐れたからさ」
「それで?」
とにかくシェーンの話を一度聞いてからにしようと思い、先を促した。
「ミーティア様が一度は人族と和平を築いた。けれど、それは再び人族により壊された」
ミーティアが殺されてしまったから。
「なら、人族が魔人になれば魔族に歯向かおうとすることはなくなる。そうしたら、本当の和平を築くことができる」
「結果は成功じゃなかった。それでもまだそう思ってる?」
「まだまだ実験は始まったばかりなんだ。一度の失敗くらいでは諦めないさ」
「はぁ……」
困ったな。シェーンは魔人を作り出すことにより人族と和平が築けると信じ込んでいる。そこだけに焦点が行ってしまって他のことはまるで考えていない。
有能で面白いシェーンはどこに行ってしまったのやら……。
「お前なぁ……和平を築きたいと思っている人族数十人の人生を奪っといてそんなことを言えるなんてな……」
呆れた。
「クラディアの邪魔だけはするなよ、シェーン。ブラッドティー美味しかった」
オレはそれだけを言い残して小屋を出ていく。シェーンとこれ以上話していてもどうにもならない。それだったら、邪魔をしないんだったら、こいつは放っておこう。
「確かに他意はなかったな」
一人残った魔人はセレンティア教国でどんな扱いを受けているのだろうか。あの国なら影で拷問とか、人体実験とかも有り得そうだからな……。
「帰ろう」
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