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魔力は大事に
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「主様、終わったの?」
「なんとか」
ワープでテオドールのもとへと戻ると、テオドールがオレを迎えてくれた。
「魔王城へ戻ろうか」
「ボクも今度はいいよね?」
「……だめ」
しばらく考えてから、テオドールは魔王城へ連れて行かないことにした。
城下町の中を自由に動き回れるのは現状、テオドールだけというのもあるけど、テオドールは今でこそ使い魔という分類になるが、元々は魔族だ。オレ同様魔族に知り合いがいる。
その知り合いたちに説明するのがめんどくさい。オレが転生したということも説明するのに時間を要した。
「えー」
「文句言わない。情報収集よろしく」
「自分で説明するからぁー」
行く先が魔王城だから、いつもみたいには行かないか。
「ったく……。それは本当だろうな?」
「本当だから、ね?」
「なにが、ね?だよ……」
まぁ、テオドールの最後は魔王城だし、なにか思うところもあるんだろう。
「……いいよ。最後に帰れればいいや」
「やった!」
どんな面倒くさいことになろうと、最後には地球に帰る予定だからいいや。……帰れなかった場合は事後処理が膨大な量になるだろうけど。
嬉しそうな声を上げてテオドールは喜んでいる。
「じゃ、行こう」
情報収集はトリ型使い魔に行わせればいっかな。ずっと魔王城にいさせるわけでもないしね。
「ワープ」
……
「あぁ、マオ。帰ってきたか……」
「うん、帰ってきた」
「偽装を解いてみてくれないか?」
「偽装を?」
自分で使った覚えがないから上手く解けるかどうか……。なんとかなると信じてやってみますかね。
「……」
「おお……」
「主様だ」
うまくできちゃった。
緋色の瞳と髪は変わらず、容姿や身長が変わったみたい。ようは、アストールに戻ったってことだね。
だけど、身長が伸びたせいで余裕があった服がピッタリとしてしまった。服のサイズは変わってくれないんですね。
「やっぱり、こっちの主様のほうが好きだなー」
「イケメンだよな……」
テオドールとクラディアがオレをそう評した。
そりゃあ成長しきってない体と成長しきった体とじゃね。マオも成長したらイケメンになると信じています。信じることは大事だと思います。
「ふーん……」
何年ぶりかに見る骨ばった手のひら。握って開いてを繰り返していると、昔の感覚が戻ってくる。
手を動かすにしろ、歩くにしろ、マオの体でなれていたから忘れてしまったのだ。
なにせ、マオとアストールでは身長が数十センチ違うのだ。同じ感覚でやっているとコケてしまう。
「任意で使えるんだよね……?」
次にマオに戻れるかを試してみる。
「できるよね、うん」
もちろん成功した。マオからアストールに戻れるのであれば、アストールからマオになることができないはずがない。
このスキルの名前は偽装なのだから。
「……こいつは、私の覚え間違いでなければテオドールだよな?」
「んー?うん」
「クラディア、久しぶりだね」
「……マジか」
今まで気づかなかったのが不思議なんだけど、クラディアはテオドールに気づいてオレに確認をとった。
でも、オレからは説明しない。面倒くさいからね。
「ボクは数ヶ月前に主様に召喚されたわけ。理解した?」
「使い魔って……こんな生前の性格が適用されてるものだっけか……?」
「どういうこと?」
使い魔については専門外だからねぇ。使ったのはあの時が初めてだし、常識も知らないからね。
クラディアはオレもテオドールもよくわかってないのを見ると軽くため息をついてから説明をしてくれた。
「使い魔には二種類あってだな……」
長かったから要約すると……。
使い魔の種類はテオドールみたいに故人を召喚するのと、トリ型みたいに魔力から存在を作り出すものがあるらしい。
前者の方は故人の姿形、記憶こそ持っているものの、自我を保つのが難しく召喚主の命令にだけ従うのが普通だという。
絶対にテオドール普通じゃないよね。自由すぎるもん。命令にだけに従うのなら倫太郎にバレることはなかった。
「ただ、この常識は常人が召喚したらの話だからな」
「オレが常人じゃないと……?」
「元魔王、転生者、勇者、ステータスの数値がおかしい。これだけ揃ってて常人じゃないわけ無いだろ」
「正論。あ、元勇者ね」
勇者たちの中へ戻ることはないし、魔王城に来ている時点でやめたようなものでしょ。
「そうか?あと、使い魔は何体も召喚して維持できるもんじゃないぞ?」
「え?」
オレ、トリ型七匹、テオドール一人を現在進行形で維持してるんだけど……。
「私には出来ないことだ」
「え……」
オレにできるんなら、クラディアにもできるものだと思ってた。魔王をやっているくらいだからステータスも上がっただろうし。
「マオにも楽なことじゃないだろ。何回か倒れてるんだ」
「そうだけど……関係あるの?」
「維持には膨大な魔力がかかるんだ。そして、偽装にもたくさんの魔力を使う。ここまで言えばわからないか?」
クラディアのヒントでやっとわかった。
これはアレだ。魔力が尽きたんだ。
「そういうことか」
「そういうことだ」
「なんとか」
ワープでテオドールのもとへと戻ると、テオドールがオレを迎えてくれた。
「魔王城へ戻ろうか」
「ボクも今度はいいよね?」
「……だめ」
しばらく考えてから、テオドールは魔王城へ連れて行かないことにした。
城下町の中を自由に動き回れるのは現状、テオドールだけというのもあるけど、テオドールは今でこそ使い魔という分類になるが、元々は魔族だ。オレ同様魔族に知り合いがいる。
その知り合いたちに説明するのがめんどくさい。オレが転生したということも説明するのに時間を要した。
「えー」
「文句言わない。情報収集よろしく」
「自分で説明するからぁー」
行く先が魔王城だから、いつもみたいには行かないか。
「ったく……。それは本当だろうな?」
「本当だから、ね?」
「なにが、ね?だよ……」
まぁ、テオドールの最後は魔王城だし、なにか思うところもあるんだろう。
「……いいよ。最後に帰れればいいや」
「やった!」
どんな面倒くさいことになろうと、最後には地球に帰る予定だからいいや。……帰れなかった場合は事後処理が膨大な量になるだろうけど。
嬉しそうな声を上げてテオドールは喜んでいる。
「じゃ、行こう」
情報収集はトリ型使い魔に行わせればいっかな。ずっと魔王城にいさせるわけでもないしね。
「ワープ」
……
「あぁ、マオ。帰ってきたか……」
「うん、帰ってきた」
「偽装を解いてみてくれないか?」
「偽装を?」
自分で使った覚えがないから上手く解けるかどうか……。なんとかなると信じてやってみますかね。
「……」
「おお……」
「主様だ」
うまくできちゃった。
緋色の瞳と髪は変わらず、容姿や身長が変わったみたい。ようは、アストールに戻ったってことだね。
だけど、身長が伸びたせいで余裕があった服がピッタリとしてしまった。服のサイズは変わってくれないんですね。
「やっぱり、こっちの主様のほうが好きだなー」
「イケメンだよな……」
テオドールとクラディアがオレをそう評した。
そりゃあ成長しきってない体と成長しきった体とじゃね。マオも成長したらイケメンになると信じています。信じることは大事だと思います。
「ふーん……」
何年ぶりかに見る骨ばった手のひら。握って開いてを繰り返していると、昔の感覚が戻ってくる。
手を動かすにしろ、歩くにしろ、マオの体でなれていたから忘れてしまったのだ。
なにせ、マオとアストールでは身長が数十センチ違うのだ。同じ感覚でやっているとコケてしまう。
「任意で使えるんだよね……?」
次にマオに戻れるかを試してみる。
「できるよね、うん」
もちろん成功した。マオからアストールに戻れるのであれば、アストールからマオになることができないはずがない。
このスキルの名前は偽装なのだから。
「……こいつは、私の覚え間違いでなければテオドールだよな?」
「んー?うん」
「クラディア、久しぶりだね」
「……マジか」
今まで気づかなかったのが不思議なんだけど、クラディアはテオドールに気づいてオレに確認をとった。
でも、オレからは説明しない。面倒くさいからね。
「ボクは数ヶ月前に主様に召喚されたわけ。理解した?」
「使い魔って……こんな生前の性格が適用されてるものだっけか……?」
「どういうこと?」
使い魔については専門外だからねぇ。使ったのはあの時が初めてだし、常識も知らないからね。
クラディアはオレもテオドールもよくわかってないのを見ると軽くため息をついてから説明をしてくれた。
「使い魔には二種類あってだな……」
長かったから要約すると……。
使い魔の種類はテオドールみたいに故人を召喚するのと、トリ型みたいに魔力から存在を作り出すものがあるらしい。
前者の方は故人の姿形、記憶こそ持っているものの、自我を保つのが難しく召喚主の命令にだけ従うのが普通だという。
絶対にテオドール普通じゃないよね。自由すぎるもん。命令にだけに従うのなら倫太郎にバレることはなかった。
「ただ、この常識は常人が召喚したらの話だからな」
「オレが常人じゃないと……?」
「元魔王、転生者、勇者、ステータスの数値がおかしい。これだけ揃ってて常人じゃないわけ無いだろ」
「正論。あ、元勇者ね」
勇者たちの中へ戻ることはないし、魔王城に来ている時点でやめたようなものでしょ。
「そうか?あと、使い魔は何体も召喚して維持できるもんじゃないぞ?」
「え?」
オレ、トリ型七匹、テオドール一人を現在進行形で維持してるんだけど……。
「私には出来ないことだ」
「え……」
オレにできるんなら、クラディアにもできるものだと思ってた。魔王をやっているくらいだからステータスも上がっただろうし。
「マオにも楽なことじゃないだろ。何回か倒れてるんだ」
「そうだけど……関係あるの?」
「維持には膨大な魔力がかかるんだ。そして、偽装にもたくさんの魔力を使う。ここまで言えばわからないか?」
クラディアのヒントでやっとわかった。
これはアレだ。魔力が尽きたんだ。
「そういうことか」
「そういうことだ」
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