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リルの思い

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 私はリル=ティス=ラドクリフ。魔王をやっているクラディア=ティス=ヒューズがお父様で、その前まで魔王をやっていたミーティア=ティス=ラドクリフがお母様。ミーティアお母様のお母様のフィーリア=ティス=ラドクリフお祖母様。
 それと、お父様の親友でお母様のお父様で、お祖母様の愛する人だった私のお祖父様。アストール=ティス=ラドクリフ。
 私の主要な家族はこれくらい。

 お祖父様は私が生まれる前に死んでしまったからよくわからないけど、それ以外のお父様、お母様、お祖母様は私のことを大切にしてくれて、愛してくれていた。
 それは今も変わらないことなんだけど……。

 今私はレステリア王国という人族の国にいる。なんでって聞かれても、私が聞きたいくらいよ。
 お城で一人で遊んでいて、気づいたらこの国にいたんだもの。一度意識が落ちたっぽいから、何かがあったんだとは思うけどね。

 そこで、マオ兄の友達とマオ兄と出会ったの。
 人族の言語がわからなくて不安になっている私に、初めて魔族の言語で話しかけてきてくれたのがマオ兄。友達の人は、身振り手振りで頑張って意思疎通をしようとしていたから、人族だけどついていったんだ。
 あそこでマオ兄がいてよかった。

 マオ兄は、私の名前を聞いていて驚いていた。なんでかしらね。
 マオ兄は魔族の言語を話せると言っても、人族なのに。でも、その後私のステータスを偽装してくれたからな……。不思議な人ね。
 知らない人のはずなのに、どこか懐かしくて……。

 マオ兄は、私をマオ兄が暮らしている部屋まで連れてきて、現在進行形で部屋においてくれている。
 なんでかなって思っていたけど、それがさっき分かったの。
 マオ兄は私のお祖父様だったの。テオドールさんの翻訳によると、一度死んでから、地球ってところに生まれ変わったんだけど記憶を持っていたみたいね。
 
 マオ兄が不思議と安心できる理由はわかったけど……マオ兄が家族で嬉しくないわけなんじゃないんだけど……。
 なんとなくあそこにいづらくてね……。テオドールさんについてきてもらって部屋から出てきちゃった。

『リル姫様、大丈夫?』
『うん、だだ……驚いちゃったから……』

 テオドールさんは私のお祖父様と同じ時期を生きていた魔族。今はお祖……マオ兄に召喚されているって。
 お祖父様じゃなくてマオ兄でいいわ……。マオ兄も話していたもの。お祖父様とマオ兄は別になんだって。

 それにしても……お祖父様なのかぁ……。お祖父様のマオ兄ならどうにかできるのかな。
 怖い顔をしているクラディアお父様を。どうにかして救うことはできないのかな……。

『クラディアさんがどうかしたの?』
『ミーティアお母様が勇者に殺されてから……怖い顔ばかり……』
『ふーん……』

 テオドールさんは興味なさそうな顔をしているわ。私の話なんか聞かされても面白くないものね。
 私はただ、もやもやした気持ちを吐き出したかっただけ。それにちょうど良かったのがテオドールさんだっただけなんだもの。

 そろそろ落ち着いてきたし、部屋に戻ろう。テオドールさんがいるとはいえ、王宮で人族に会ってしまっては、切り抜けるのが大変になるかも……。
 マオ兄だって、私が長く部屋を開けてたら不安になるもの。私がそうだったように。

『テオドールさん、部屋に戻ろう』
『了解、リル姫様。あと、テオドールって呼び捨てでよろしく』
『分かったよ』

 えっと……部屋はこっち、あれ?おかしいな……道間違えちゃった?
 でも……来た道を戻ったはずだよ。同じ回数曲がって……同じ方向に曲がって……。
 どうしよう……!人族に会ってしまったら……!
 そう思っていたからなのかな。人族が目の前からやって来て、私とテオドールに気づいたんだ。

「ん?子ども?こんな夜中に……」
『……』

 来たのはマオ兄と年齢はそう変わらないと思われる男の子。人族にしては、顔が整っていて、完璧ですっていうオーラを出しているの。

 とにかく……私は一言も喋らないようにしないと。そうじゃないと……。

「君、名前は?部屋に送るよ」

 何を言っているの……?私に害意を向けていないことだけはわかるけど……。言っていることはわからないし、答えることもできない。
 頼みの綱はテオドールだけ。マオ兄のときみたいに変なこと言わなければいいな……。
 
『……っ』
「この子、人見知りでさ。大丈夫、ボクが送り届けるから。キミも早く休まないとだろ?」
「そうか?しっかりと送り届けてくれよ?あ、そうだ。オレは勇者の今川輝。何かあったら、オレのところに来るといい」

 この人は私を人族の子どもだと思っているから……こんなにも優しいのね。

「そうするよ、じゃあ。いこうか」
『……?』

 テオドールは男の子と少しだけ会話をしてから、私の手をちょっと引いた。もう行くってことかな。
 私は頷いてテオドールについていく。テオドールについていくと、無事にマオ兄の部屋につくことができた。
 テオドールは部屋のいち覚えていたんだ……。当然か。でも、私に任せて……。

「主様、帰ったよ」

 テオドールに手を引かれて部屋の中へと私は入った。すると、マオ兄の友達はもういなくて、マオ兄が一人だけだった。

『リル、テオドール、おかえり。落ち着いた?』

 ……マオ兄、私がいきなりのことで驚いていたことをわかってたんだ。すごいなぁ……。

『うん!ただいま……マオ兄』
『おかえり……』
『じゃあ、ボクはこれで……』

 急に焦って出ていこうとするなんてテオドールはどうしたのかしら?
 マオ兄もテオドールをニッコリと見ているし……。

『テオドール、そこに座って』
『いやぁ……でも……』
『座れ』

 優しく言っていたのが、命令口調になった。よくわからないけれど……テオドール、ご愁傷様?
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