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勇者、帰還
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「えーと、一、ニ……三十四。全員いるね」
日本てすごくない?少し探せば廃墟ビルがあるんだよ。建設途中に何かあって中断したとか、曰く付きで取り壊すことができずに放置されている建物とか。
オレはそれらの中の一つに来ている。家から近いとか学校に近いとかは関係なしにいかに一般人に知られずにできるかを考えて選んだ。
「これはこれは……」
コールドスリープする前はいい年したおじさんとおばさんになっていたんだけど、見事に若返っている。
ネズミで試したことはちゃんと人間にも通用するんだね。
「これぞ見た目は子ども、頭脳は大人ってやつだね」
若返っているとしても、記憶はあるだろうし。忘れてくれたら、都合がいいんだけど。
勇者たちは精神年齢三十ちょいの、見た目は中二だっけ?大変そうだなぁ……人間は数年で変わる生き物だから。
魔族みたいに長い時間をゆっくりとはいかないんだね。
「さて、」
面倒くさいない倫太郎たちから起こすことにしよう。勇者の名前……今川だっけか?そいつは一番最後。ややこしい。
「倫太郎、久しぶり……」
自分で作り出した魔法だからわざわざ解除する魔法を使わなくて済む。そこにある自分の魔力を拡散させればいいだけの話。
倫太郎を閉じ込めている氷のようなものにコツンとオレは額を当てて魔力を拡散させた。すると、倫太郎の周りにあった魔力が散っていくのがわかる。
「はーい、おーきーてー」
「ふぇ、ふぁ!ふぁふぃふふんふぁふぉ!」
何するんだよと言われてもなぁ……久しぶりの倫太郎が嬉しいのだ。ピッチピチの十代の倫太郎は久しぶりなのだから。
「うん、楽しい」
ちなみに、倫太郎がふぁふぃふぁふぃ言っていたのはオレが倫太郎の口をグニグニと弄っていたからね。
「誰?」
「オレ」
「オレオレ詐欺?」
「お母さん助けて詐欺」
「マオ?」
「そーですが」
「姿が違うんだけど……?」
「あ、そっか」
姿戻すの忘れてた……でも、戻すとチビになるから、結城マオの姿になりますかね。
もう、オレの中では結城マオもアストールもオレで、どっちもオレだから……なんて言えばいいかな。両方が混ざって両方から乖離しちゃった感じかな……、難しい。
と、言うことでオレはマオの姿をとる。
「ママ、助けてー」
「ママじゃないから無理」
「倫太郎ママひどーい」
「マオってそんな奴だったっけ……」
「今へんなテンションなのは自覚してる」
今日だけでかなりのことがあったじゃない。キャパオーバーはしていないけど、こうでもならないとやってらんないのだ。
「そうだ、倫太郎は今地球にいます」
これ言っておかないとね。
「へ……?それ、本当か?」
「うん、ここは市内の廃墟」
「帰ってきたのか……」
帰ってきたのか、としみじみするのはいいと思うんだけど、おじさん姿から若返っていることに驚かないのかなー。
帰ってきたという衝撃が大きすぎてそこまで意識がいかないってやつか。ま、そうだろうな。
「これから倫太郎以外も起こすから先に説明しておくから」
何度も同じ説明をするのは非常に面倒である。
「お、おう……」
「まず、勇者たちがあそこまで簡単に魔王城にて魔王とご対面できたのは、さっさか勇者たちに地球に帰ってほしくて、あそこまで使命感に燃えていたんだし魔王と戦ったという事実は作ってあげようかなという考えがあったのね」
「なるほどな」
「それで、勇者たちをコールドスリープさせたのはすぐに安全に帰ることのできる方法がなかったから。だからといって放置も可哀想かなって」
本当は騒がれると邪魔だったから。コールドスリープしないんだったら何もできないようにして拘束するという方法もなくはなかったが、人道的なことに反する為却下した。
「これくらいでいいかな」
魔族やら裏切ったやらそんなことはもう、何を言っても彼らの中では変わらないだろうから。ずっと彼らの中でオレは裏切り者の敵なのだろう。
「マオは優しいな」
「そう?」
倫太郎がオレの頭をポンポンとやさしく叩いてきた。
「だって、マオはこいつらを……こいつらの……」
倫太郎の言いたいことはわかる。
そう、確かに彼らを地球に帰さないで消すということもオレにはできた。
「いやー、だってさ、気にしてもしょうがないじゃん?わざわざ気にする必要ないだろう?」
あと、クラス転移する前はちゃんと人間やってたから人間的なところもあるし。だから、彼らを消すのは少しね。やると決めたらオレは躊躇わなかっただろうけどさ。
「マオは優しいんじゃなくて無関心なのか?」
「まさか。無関心だったらリルを溺愛したりしないし」
「関心を持ったらとことんなタイプか……」
「はい、説明係よろしくね。倫太郎」
「はいはい、わかったよ」
ちまちまやるのは嫌だから一気にやっちゃおう!
「倫太郎、一気にいくからねー」
「一気に⁉」
「がんば!」
日本てすごくない?少し探せば廃墟ビルがあるんだよ。建設途中に何かあって中断したとか、曰く付きで取り壊すことができずに放置されている建物とか。
オレはそれらの中の一つに来ている。家から近いとか学校に近いとかは関係なしにいかに一般人に知られずにできるかを考えて選んだ。
「これはこれは……」
コールドスリープする前はいい年したおじさんとおばさんになっていたんだけど、見事に若返っている。
ネズミで試したことはちゃんと人間にも通用するんだね。
「これぞ見た目は子ども、頭脳は大人ってやつだね」
若返っているとしても、記憶はあるだろうし。忘れてくれたら、都合がいいんだけど。
勇者たちは精神年齢三十ちょいの、見た目は中二だっけ?大変そうだなぁ……人間は数年で変わる生き物だから。
魔族みたいに長い時間をゆっくりとはいかないんだね。
「さて、」
面倒くさいない倫太郎たちから起こすことにしよう。勇者の名前……今川だっけか?そいつは一番最後。ややこしい。
「倫太郎、久しぶり……」
自分で作り出した魔法だからわざわざ解除する魔法を使わなくて済む。そこにある自分の魔力を拡散させればいいだけの話。
倫太郎を閉じ込めている氷のようなものにコツンとオレは額を当てて魔力を拡散させた。すると、倫太郎の周りにあった魔力が散っていくのがわかる。
「はーい、おーきーてー」
「ふぇ、ふぁ!ふぁふぃふふんふぁふぉ!」
何するんだよと言われてもなぁ……久しぶりの倫太郎が嬉しいのだ。ピッチピチの十代の倫太郎は久しぶりなのだから。
「うん、楽しい」
ちなみに、倫太郎がふぁふぃふぁふぃ言っていたのはオレが倫太郎の口をグニグニと弄っていたからね。
「誰?」
「オレ」
「オレオレ詐欺?」
「お母さん助けて詐欺」
「マオ?」
「そーですが」
「姿が違うんだけど……?」
「あ、そっか」
姿戻すの忘れてた……でも、戻すとチビになるから、結城マオの姿になりますかね。
もう、オレの中では結城マオもアストールもオレで、どっちもオレだから……なんて言えばいいかな。両方が混ざって両方から乖離しちゃった感じかな……、難しい。
と、言うことでオレはマオの姿をとる。
「ママ、助けてー」
「ママじゃないから無理」
「倫太郎ママひどーい」
「マオってそんな奴だったっけ……」
「今へんなテンションなのは自覚してる」
今日だけでかなりのことがあったじゃない。キャパオーバーはしていないけど、こうでもならないとやってらんないのだ。
「そうだ、倫太郎は今地球にいます」
これ言っておかないとね。
「へ……?それ、本当か?」
「うん、ここは市内の廃墟」
「帰ってきたのか……」
帰ってきたのか、としみじみするのはいいと思うんだけど、おじさん姿から若返っていることに驚かないのかなー。
帰ってきたという衝撃が大きすぎてそこまで意識がいかないってやつか。ま、そうだろうな。
「これから倫太郎以外も起こすから先に説明しておくから」
何度も同じ説明をするのは非常に面倒である。
「お、おう……」
「まず、勇者たちがあそこまで簡単に魔王城にて魔王とご対面できたのは、さっさか勇者たちに地球に帰ってほしくて、あそこまで使命感に燃えていたんだし魔王と戦ったという事実は作ってあげようかなという考えがあったのね」
「なるほどな」
「それで、勇者たちをコールドスリープさせたのはすぐに安全に帰ることのできる方法がなかったから。だからといって放置も可哀想かなって」
本当は騒がれると邪魔だったから。コールドスリープしないんだったら何もできないようにして拘束するという方法もなくはなかったが、人道的なことに反する為却下した。
「これくらいでいいかな」
魔族やら裏切ったやらそんなことはもう、何を言っても彼らの中では変わらないだろうから。ずっと彼らの中でオレは裏切り者の敵なのだろう。
「マオは優しいな」
「そう?」
倫太郎がオレの頭をポンポンとやさしく叩いてきた。
「だって、マオはこいつらを……こいつらの……」
倫太郎の言いたいことはわかる。
そう、確かに彼らを地球に帰さないで消すということもオレにはできた。
「いやー、だってさ、気にしてもしょうがないじゃん?わざわざ気にする必要ないだろう?」
あと、クラス転移する前はちゃんと人間やってたから人間的なところもあるし。だから、彼らを消すのは少しね。やると決めたらオレは躊躇わなかっただろうけどさ。
「マオは優しいんじゃなくて無関心なのか?」
「まさか。無関心だったらリルを溺愛したりしないし」
「関心を持ったらとことんなタイプか……」
「はい、説明係よろしくね。倫太郎」
「はいはい、わかったよ」
ちまちまやるのは嫌だから一気にやっちゃおう!
「倫太郎、一気にいくからねー」
「一気に⁉」
「がんば!」
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