119 / 134
新年早々
3
しおりを挟む「あ、リア様おかえりなさいませ。リア様の注文通り多目に用意しておきましたよ?」
「ありがとうなのじゃ!」
龍達は最近味をしめたのかオークとワイバーンの丸焼きを希望してくるのじゃよね……。まぁ、前に赤い龍さんに任せたら消し炭になったみたいじゃし? 調整が出来ないんじゃね、火力の……。
火蜥蜴も魔力が続かないらしく美味しく仕上がらないのに気がついた龍さんは妾に鱗プラス一枚するから焼いたのをくださいと龍のプライド(既に物々交換の時点で無さそうだが)を投げ捨ててお願いしてきた。
しかしたくさんある鱗はもういらないと言うとじゃあ、この爪とかどお? と……。爪もある程度長くなると自然とポロリするらしく快く交換となった。
なんというかこの青い龍さんはズボラなのか几帳面なのか学習したのかよくわからないが綺麗に取っておいてくれるのだ。鱗を壁際に何枚も重ねて積み上げた鱗タワー、爪もなにもかも取引に使えるとわかったのかゴミだったのが今では棄てずに種類に分けて取っておいてある。
まぁ、ズボラだろうが几帳面だろうが理解できるのは堕落してるな、コイツ……くらいである。
だってゴミと交換して美味しいご飯をゲットしてから狩りをしてないもん、この龍さんは……。
用意してくれたと言うよりも妾が2つ時間停止を施した大きな通い箱1つと一緒に用意しておいてくれたのか妾のポシェットにしまい、内側に毛皮を使った厚手のコートと手袋、タイツ、マフラー、ブーツ、耳当てに毛皮の帽子という重装備に着替えると父上と兄様は顔を引きつらせていた。まぁ、モッコモコの着達磨じゃもんな。
「心配だから俺も行こうかな」
「え、でもとっても寒いんじゃよ?」
慌てて執事が用意したのは冬用の父上の武装だった。これ、最高級魔法付与が施されていて薄着でもかなり暖かいらしい。雪山なんかへっちゃら。良いなぁと思っていたら父上に妾は今の方が可愛いからこのままで大丈夫だよとなんか遠回しに同じような魔法付与がされた武装を作るのはダメだと言われた。
さて、アラン兄様もついてくるらしく格好を見ると薄着のまんまで飄々としていた。着替えは? と聞けばあ、俺は寒いところの耐性があるから平気だよ。逆に灼熱だと魔法付与の服を着ないと即効死んじゃうけどと笑っていた。それはそれで羨ましい。妾、毒と麻痺の耐性は凄く強いけど熱いのも冷たいのも耐性が全くないからすぐに体を壊す。
良いなぁ……。
羨ましそうに見ていたのかアラン兄様は小さく笑って妾の頭を優しく撫でてくれた。
そうして準備が整うと家にアールがやって来た。まぁ、アールと毎回お届け物しにいくのだけれど、きっと父上と兄様はアールが連れてきてくれるはず。少し話をするとアールが無言である父上と兄様を担いで消えたので妾も転移した。
《おお、久しいな小娘。…………縮んだか?》
「むきぃーっ! 半月前にあったばかりじゃわーっ! 青爺め!」
ポコスカとカッチカチの硬い鱗に覆われたお腹を叩きまくっていると龍さんはガハハと笑っていた。うむ、元気そうで良かったのじゃ。
《所でこの二人は……。あぁ、なるほど。小娘の父親と兄がわりか……。ワシの住み処へよく来た。何もないがそこの小娘の身内なら歓迎をしよう》
「龍さんは今回の年始は珍しく家を小綺麗にしたんじゃなぁ……」
《…………………………》
あれ? あからさまにフイッと顔を反らされた。辺りをキョロキョロし始めるといままでなかった怪しい隣の洞穴へ移動しようとするとヒョイッと爪を器用に使って捕まった。何やら隠しているらしい。
《彼処は……トイレじゃから行くでない》
「……トイレ……」
「「「トイレ……」」」
どうやらトイレを作ったらしい。外に行くのが嫌になったのだろうか……。ズボラ過ぎる……。とりあえず食料を取り出すとアールとアラン兄様がトイレを見に行き、慌てて帰ってきた。そんなに汚かったのか?
「フローライト……。どうしよう……。いろんな種類のしかも純度の高い魔石の山がある……」
「え……。もしかして魔石って……」
「マジか……」
魔石って魔物の体内にあるからどこで作られるのかわからなかったけどあの穴の奥はトイレと言っていたし、もしかして魔石=排泄物なのかの?
……おぉ、マジか……。
純度の高い石は小さく砕いても純度はそのままで魔法付与などの核にも出来る。大きなままなら魔法剣というレア中のレアな武器へと加工できる凄いものなのだが……。
龍の排泄物だったのか……。
その新事実に3人の男はその場で話し合い、乱獲などを懸念し、そして魔石の秘密は秘密のままにしておこうと言うことになり、今度は鱗や爪を含めてトイレ掃除をかねて料理を週一回持ってくることになった。
懐がどんどん潤っていく。ーーどうしよう。
そうしたら龍さんの友達が続々と集まり部屋はぎゅうぎゅうになったので龍さんたちは龍人のような姿へ変化をした。
人の姿をとってくれたお陰か丸焼きの肉を食べながら話をしていたらうちにもたくさんの同じ石があると言い出し、うちもこんな美味しい料理ならば引き換えにあげるよ~……。邪魔だし、掃除しに来てよ~……と言っていた。
お前ら揃いも揃って掃除嫌いのグルメ龍かっ!
茶さんと緑さんはアラン兄様の領土付近(茶さんは領土内だが緑さんは隣国)に住んでいることが判明し、アラン兄様が届けることになった。そして白さんと赤さんはアールの知っている山や森だったらしくアメジールが負担し、黒さんは父上の実家の領土にある森にいることが判明。なので父上が届けてくれるらしい。…………それにしても来客である龍さん達は随分と遠くから来たのが判明した。
《いや、飛んできてはいないぞ? 我らは龍王だからな。お互いの近くまでなら転移できるのよ》
《青は特に物臭でなぁ……。どうせ中間地点で会うのなら中間地点に住むと言ってこの山に住み着いたのよ……。アホだろう?》
おぉ、青さん面倒臭がりすぎる!! 新年早々、突っ込みをいれてしまうのは仕方ないことなのじゃろうか……。
END
0
お気に入りに追加
276
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる