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新年早々

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「あ、リア様おかえりなさいませ。リア様の注文通り多目に用意しておきましたよ?」
「ありがとうなのじゃ!」

 龍達あやつらは最近味をしめたのかオークとワイバーンの丸焼きを希望してくるのじゃよね……。まぁ、前に赤い龍さんに任せたら消し炭になったみたいじゃし? 調整が出来ないんじゃね、火力の……。
 火蜥蜴も魔力が続かないらしく美味しく仕上がらないのに気がついた龍さんは妾に鱗プラス一枚するから焼いたのをくださいと龍のプライド(既に物々交換の時点で無さそうだが)を投げ捨ててお願いしてきた。
 しかしたくさんある鱗はもういらないと言うとじゃあ、この爪とかどお? と……。爪もある程度長くなると自然とポロリするらしく快く交換となった。
 なんというかこの青い龍さんはズボラなのか几帳面なのか学習したのかよくわからないが綺麗に取っておいてくれるのだ。鱗を壁際に何枚も重ねて積み上げた鱗タワー、爪もなにもかも取引に使えるとわかったのかゴミだったのが今では棄てずに種類に分けて取っておいてある。
 まぁ、ズボラだろうが几帳面だろうが理解できるのは堕落してるな、コイツ……くらいである。
 だってゴミと交換して美味しいご飯をゲットしてから狩りをしてないもん、この龍さんは……。

 用意してくれたと言うよりも妾が2つ時間停止を施した大きな通い箱1つと一緒に用意しておいてくれたのか妾のポシェットにしまい、内側に毛皮を使った厚手のコートと手袋、タイツ、マフラー、ブーツ、耳当てに毛皮の帽子という重装備に着替えると父上と兄様は顔を引きつらせていた。まぁ、モッコモコの着達磨じゃもんな。

「心配だから俺も行こうかな」
「え、でもとっても寒いんじゃよ?」

 慌てて執事が用意したのは冬用の父上の武装だった。これ、最高級魔法付与が施されていて薄着でもかなり暖かいらしい。雪山なんかへっちゃら。良いなぁと思っていたら父上に妾は今の方が可愛いからこのままで大丈夫だよとなんか遠回しに同じような魔法付与がされた武装を作るのはダメだと言われた。
 さて、アラン兄様もついてくるらしく格好を見ると薄着のまんまで飄々としていた。着替えは? と聞けばあ、俺は寒いところの耐性があるから平気だよ。逆に灼熱だと魔法付与の服を着ないと即効死んじゃうけどと笑っていた。それはそれで羨ましい。妾、毒と麻痺の耐性は凄く強いけど熱いのも冷たいのも耐性が全くないからすぐに体を壊す。

 良いなぁ……。

 羨ましそうに見ていたのかアラン兄様は小さく笑って妾の頭を優しく撫でてくれた。

 そうして準備が整うと家にアールがやって来た。まぁ、アールと毎回お届け物しにいくのだけれど、きっと父上と兄様はアールが連れてきてくれるはず。少し話をするとアールが無言である父上と兄様を担いで消えたので妾も転移した。

《おお、久しいな小娘。…………縮んだか?》
「むきぃーっ! 半月前にあったばかりじゃわーっ! 青爺め!」

 ポコスカとカッチカチの硬い鱗に覆われたお腹を叩きまくっていると龍さんはガハハと笑っていた。うむ、元気そうで良かったのじゃ。

《所でこの二人は……。あぁ、なるほど。小娘の父親と兄がわりか……。ワシの住み処へよく来た。何もないがそこの小娘の身内なら歓迎をしよう》
「龍さんは今回の年始は珍しく家を小綺麗にしたんじゃなぁ……」
《…………………………》

 あれ? あからさまにフイッと顔を反らされた。辺りをキョロキョロし始めるといままでなかった怪しい隣の洞穴へ移動しようとするとヒョイッと爪を器用に使って捕まった。何やら隠しているらしい。

《彼処は……トイレじゃから行くでない》
「……トイレ……」
「「「トイレ……」」」

 どうやらトイレを作ったらしい。外に行くのが嫌になったのだろうか……。ズボラ過ぎる……。とりあえず食料を取り出すとアールとアラン兄様がトイレを見に行き、慌てて帰ってきた。そんなに汚かったのか?

「フローライト……。どうしよう……。いろんな種類のしかも純度の高い魔石の山がある……」
「え……。もしかして魔石って……」
「マジか……」

 魔石って魔物の体内にあるからどこで作られるのかわからなかったけどあの穴の奥はトイレと言っていたし、もしかして魔石=排泄物なのかの?

 ……おぉ、マジか……。
 純度の高い石は小さく砕いても純度はそのままで魔法付与などの核にも出来る。大きなままなら魔法剣というレア中のレアな武器へと加工できる凄いものなのだが……。

 龍の排泄物だったのか……。

 その新事実に3人の男はその場で話し合い、乱獲などを懸念し、そして魔石の秘密は秘密のままにしておこうと言うことになり、今度は鱗や爪を含めてトイレ掃除をかねて料理を週一回持ってくることになった。

 懐がどんどん潤っていく。ーーどうしよう。

 そうしたら龍さんの友達が続々と集まり部屋はぎゅうぎゅうになったので龍さんたちは龍人のような姿へ変化をした。
 人の姿をとってくれたお陰か丸焼きの肉を食べながら話をしていたらうちにもたくさんの同じ石があると言い出し、うちもこんな美味しい料理ならば引き換えにあげるよ~……。邪魔だし、掃除しに来てよ~……と言っていた。

 お前ら揃いも揃って掃除嫌いのグルメ龍かっ!

 茶さんと緑さんはアラン兄様の領土付近(茶さんは領土内だが緑さんは隣国)に住んでいることが判明し、アラン兄様が届けることになった。そして白さんと赤さんはアールの知っている山や森だったらしくアメジールが負担し、黒さんは父上の実家の領土にある森にいることが判明。なので父上が届けてくれるらしい。…………それにしても来客である龍さん達は随分と遠くから来たのが判明した。

《いや、飛んできてはいないぞ? 我らは龍王だからな。お互いの近くまでなら転移できるのよ》
《青は特に物臭でなぁ……。どうせ中間地点で会うのなら中間地点に住むと言ってこの山に住み着いたのよ……。アホだろう?》

 おぉ、青さん面倒臭がりすぎる!! 新年早々、突っ込みをいれてしまうのは仕方ないことなのじゃろうか……。

                       END





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