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役に立ちたいのじゃ!
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しおりを挟む朝。朝といってもいつも寝る時間よりも前の早朝にふと目を覚ますと何故か両隣に父上と母上が寝ていて、かなりと言うか凄くビックリした。けれども体がいつもとは違い、何でか怠くてしかも肌寒いのでまたもや風邪をひいて熱を出したのか……あ、血を飲まれたから貧血か……と思い出したところで隣で眠っている父親に助けを求めるためにペチペチと抱き締めている逞しい父上の腕を軽く叩いていた。
「ん……。ん? ーーえ、リアちゃん?」
「父上~……。わりゃわ、貧けちゅっぽいのじゃ」
父上はポカーンとした顔をして、父上と反対側にいる母上をなぜか起こそうと無言のまま揺すっていた。
「ん……? 旦那様、おはようござ……。え! リアちゃんが起きている?」
夫婦は驚愕と言った顔をしてクリスタリアを見下ろしていた。
「……うみゅ? 父上と母上。おはようごじゃりましゅ」
「リアちゃん……。リア……。大丈夫なのかい? 滑舌がいつもより悪いみたいだけれど……」
「……うぅ? うみゅ、なんか貧けちゅ……。貧け、つっぽいけりぇど大丈夫なのじゃ……」
次の瞬間、ぎゅーっと父上に抱き締められたが如何せん力がでない。
「父上はお祈りの時間かの? たしか国民の健康を統一にするお願いじゃよね? 妾、何だか凄く怠いから朝御飯は食べやすいのが良いのじゃ……」
「う、うん……。そう伝えておくね? マリー、少しの間、リアちゃんを宜しくね?」
「は、はい! 任せて下さいな!」
寝室から父上は慌てて出ていったが母上はなぜこんなにも驚いているのかわからないくらい慌てつつ、なぜか起きたばかりの妾を寝かしつけようとした。
「母上~……。妾、寝たくないのじゃ~……。朝じゃからちゃんと起きりゅのじゃ~っ!」
真っ白な素肌の愛娘が青みを増した顔色で寝転がっていれば本能で楽であろう睡眠をと選んでしまうのは母親の愛なのか……。無意識に寝かしつけよういた。
「えへへ、父上と母上と一緒に寝たのは久しぶりなのじゃ」
青白い顔をしているが元が可愛いクリスタリア。ただ現在の彼女は病弱な美少女でしかなく、ローズマリーはぎゅーっと抱き締めて可愛がり始めたのだった。
いつ目覚めるかわからない仮死状態は翌朝解除されたのであった。
「はい、リアちゃん。あーん」
「あむ……モグモグ……」
何故だか妾、小さい子みたいな特等席に座らされて父上と母上から交互にあーん……と食べさせてもらっている。まぁ、貧血で動くの辛いし、面倒じゃし、なんか嫌じゃから気にせず本能でご飯をいただいている。
「林檎のお水を飲む?」
母上に水に刻んだ林檎を入れたリンゴ風味の水が入ったコップに飲みやすいようにと細長い筒を挿したものを入れられそれで吸い込むと楽に飲めた。
ふむ、コレ、飲みやすくていいな……。アメジールにもって帰ろう。そして作って流行らそう……。
「リアちゃん、次はなに食べようか~……。レバーのパテのやつにする?」
目の前にある食べ物は如何せん貧血の妾のための血になるものばかり集められた朝御飯。そして食べやすいようにすごく小さく切られている。
……妾、食べやすいのって言ったけど粥とかそういうの期待してた……。まさかの血になりそうなものオンリーでサイコロサイズに整えられたのオードブルが出てくるとは思わなかった。スライスしてカリカリに焼かれたパンに塗られたレバーのパテ。一口サイズに切られた蒸し野菜に根菜と芋と鮭のシチュー、サイコロステーキ、茹でた卵。それに合わせて父上達も朝御飯はシチューのようだ。何だか妾に合わせてしまったようで申し訳ない気分……。
「おはようございます! リアちゃんが貧血って聞いたんだけど!」
ババーン! と登場したのはアラン様。登城の時間よりかなり早い時間である。
「あ、アラン兄様。おはようなのじゃ!」
「リアちゃん、大丈夫? お見舞いのオーガのお菓子詰め合わせを持ってきたよ?」
「わぁーい! 兄様、ありがとうございますなのじゃ」
「……顔色が悪いね……。結構酷い感じの貧血なのかな?」
そっと頬を優しく撫でてから彼は立ち上がると何故か父上と笑顔で見つめあっていた。
「あなたはバカなんですか?」
「う……」
そんなやり取りを見ながらクリスタリアは口を開けば何かを中に入れられて無言でモグモグしていた。ご飯を待つ雛鳥状態に男2人は唖然としながらも慌てて口が開いたらご飯を口へ運んでいた。
「うわぁ、癒しだった……」
その後はアランとクリスタリアは仲良くお茶(クリスタリアは白湯)を飲み、フローライトとローズマリーは少し遅くなった朝食を始めていた。
「兄様。こんな早い時間に来て奥方は大丈夫なのかの?」
「ん? うん……。まぁ、今日のリアちゃんと同じで貧血ぎみだけど、リアちゃんと違ってご飯を好き嫌いしてちゃんと食べないのが悪いと思うんだ……」
「ふむ……。でも運動しない限りお腹は空かないと思うんじゃよね」
「あー……。確かにそうだねぇ……。よし、朝は庭を散歩するように義務付けしてみるかな。しないなら実家に帰って? って伝えて、頑張るのなら俺がやるべきは木陰にベンチやテーブルセットを用意かな? とりあえずいくつか点在しておけば休憩しながら歩くかな?」
と、仲良く話していると父上は何やら赤い飲み物を飲んでいた。
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